「戦う男だけに宿るもの。」― 師から弟子へ、父から子へ受け継がれる因縁の戦い『クリード 炎の宿敵』

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ライター:髙橋直樹
「戦う男だけに宿るもの。」― 師から弟子へ、父から子へ受け継がれる因縁の戦い『クリード 炎の宿敵』
『クリード 炎の宿敵』© 2018METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
『クリード 炎の宿敵』がいよいよ2019年1月11日(金)から公開する。過去シリーズから今作に繋がる因縁の戦い、父から息子へ、そして師から弟子へ時代を超えて受け継がれる男たちの戦いを、株式会社ティー・ベーシック代表・高橋直樹氏が語る。

刑務所で虎が目覚める―『曉に祈れ』

『暁に祈れ』(C)2017 – Meridian Entertainment – Senorita Films SAS

現在公開中の『暁に祈れ』には、ある動物が象徴的に現れる。リバプール生まれの荒くれた青年がタイに流れ着いてボクサーとして日銭を稼ぐ。ムエタイ王国の場末のリングでは、年齢も出身地も問われない。ここで必要なのは、勝つために戦う意志だけ。腕っ節の強さとは裏腹に、自己流のファイトスタイルでガードも甘い。がむしゃらに大振りした隙だらけの顔面に、容赦なく相手のパンチが叩き込まれる。「まだやれる」と叫ぶ青年の、コカインで感覚が麻痺した身体に痛みはない。

ドラッグ常習犯として逮捕された白人青年ビリーの凄まじい体験を基にした『暁に祈れ』は、タイの刑務所を舞台にした映画だ。刑務所には全身タトゥーの囚人たちが溢れ、青年の白い身体がひときわ目を引く。賄賂が通じるこの世界では、金さえ出せばクスリも手に入る。ハイになってはもめ事を繰り返す青年にとって、そこは絶望的な泥沼なのか。だが、ムエタイ王国の刑務所にはボクシングクラブがあり、メンバーは優遇されるだけでなく、対抗戦で健闘した者は減刑される。ひと筋の希望を見出した彼はクスリを絶ち、がむしゃらにトレーニングに励む。その過程で、閉ざされた彼の心が少しずつ開かれていく。その証となるのが、仲間たちによって施される虎のタトゥー、戦う男のシンボルだ。戦い勝利することを誓ったビリーの目に宿るのは、紛れもなく虎だ。虎といえば……

ウクライナで虎の父子が動き出す。

『クリード 炎の宿敵』©2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

『ロッキー』シリーズファン待望の『クリード  炎の宿敵』は、MGMのシンボルである虎の咆哮が“キラリと光る”演出で幕を開ける。ボクシング大国ウクライナをグレーに近いブルーのトーンでとらえたカメラの先には、朝のトレーニングを始めるドラゴ親子が、ジャングルで目覚めた虎のように動き始める。演じるのは、33年振りにイワン役を引き受けたドルフ・ラングレンと息子ヴィクターに抜擢された現役ボクサー、フロリアン・ムンテアヌだ。冒頭では殆どセリフがない2人は、溢れ出さんばかりの情念が肉体を通して伝わる、説得力に満ちた献身的な演技を披露する。その後、ヴィクターが上がる場末のリングは、かつて「イタリアの種馬」と呼ばれた男がいた場所であり、ジョンソンという無名のボクサーが自分を試した場所と重なっていく。
ロッキーに破れたことで国を追われ、リスペクトを失い、妻にも去られた父親は、自分が持てるすべてを注いで息子を最強のボクサーに育て上げる。アポロの息子アドニス・クリードを完膚なきまでに叩きのめすことこそ、ロッキーへの復讐であり、失われた名誉を取り戻す唯一の道なのだ。
一方、破竹の6連勝で世界王座を射程圏に捉えたアドニスは世界チャンプに上り詰める。ドラゴ親子が動く時が訪れたのだ。ドラゴ親子から挑戦状を叩きつけられたアドニスは、ロッキーの助言にも耳を貸さず試合に臨むが、虎の目を持つヴィクターによって叩きのめされてしまう。だが、ダウンしたチャンプにパンチを放った挑戦者は失格処分となり、アドニスは勝負に負けて試合に勝つことになる。

虎の目を取り戻せ!

『クリード 炎の宿敵』©2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

盟友アポロ・クリードが「戦う決意」を失くしたロッキーの元を訪れ、再び魂に火をつけた『ロッキー3』が公開されたのは1982年の5月。秋に『ランボー』の撮影を控えていたスタローンは、シリーズを完結させるつもりで脚本を書いた。世界チャンプとして君臨するロッキーは10度もの防衛を果たし、豪邸で暮らすセレブリティとなった。フィラデルフィア美術館には銅像が建てられ、異種格闘技戦まで飛びだす。栄光の絶頂で引退宣言したロッキーは、ヘビー級1位のクラバーの挑発を受け、「お前は負ける」というミッキーの助言にも耳を貸さず試合に臨む。僅か2ラウンドで無残な敗北を喫し、王座も、名トレーナーも失い茫然自失。そんなロッキーの前にアポロが現れ「虎の目を取り戻せ」と檄を飛ばす。『ロッキー3』は、ジャーニーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」に乗せて、二人のトレーニングシーンが目に焼きつく大ヒットとなった。また、ラストの二人だけのファイトは、今もロッキーの店エイドリアンズに飾られているはずだ。

話を戻そう。前述の通りヴィクターの強烈なパンチを浴びたアドニスは病院へとかつぎ込まれる。妻となったビアンカとの間に新たな家族が誕生する喜びもつかの間、防衛戦を行わなければ王座を剥奪されてしまうアドニスに、チャンプとなってすべてを取り戻そうとするドラゴ親子の挑発が加速していく。だが、彼の心は揺れ続ける。33年前の因縁をめぐる息子同士の戦いがメインテーマのこの映画には、『ロッキー』シリーズに脈々と流れ続ける「なぜ戦うのか」という葛藤のドラマが埋め込まれている。ライアン・クーグラーからメガホンを託されたスティーヴン・ケイプル・Jr.監督は、冒頭で使ったグレーな色彩をさりげなく盛り込む手際を見せる。

アポロが放った「虎の目を取り戻せ!」というメッセージを、ロッキーはどんな言葉で伝えるのか。虎の目を取り戻そうとするクリードには、どんな過酷な試練が待ち受けているのか。今、戦う男のDNAの継承が果たされる時が来た。その劇的な瞬間は、自分の“目”で確かめてもらうしかない。

文:髙橋直樹

『クリード 炎の宿敵』 2019年1月11日(金)より、全国ロードショー

【特集:俺たちのクリード】BANGER!!!執筆陣が全力で読み解く!アポロVS.ドラゴから、アドニスVS.ヴィクターへ。

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クリード 炎の宿敵

『ロッキー4/炎の友情』でロシアの王者ドラゴとの壮絶なファイトの末、帰らぬ人となったアポロ。前作『クリード チャンプを継ぐ男』でロッキーのサポートを受け、成長した亡きアポロの息子・アドニスは、父を殺した男・ドラゴの息子であるヴィクターと対峙することになる。アポロVSドラゴから、アドニスVSヴィクターへ。時代を超えて魂のバトンが手渡される因縁の対決。世紀のタイトルマッチのゴングが、いま鳴り響く!

制作年: 2018
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脚本:
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