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ANI的 沁みるツボは?「昔 親父に見せられた寅さん、今は夫婦で観る」 50周年『男はつらいよ お帰り寅さん』

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ANI的 沁みるツボは?「昔 親父に見せられた寅さん、今は夫婦で観る」  50周年『男はつらいよ お帰り寅さん』
『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

盆と暮れの我が家総出イベントだった『男はつらいよ』

2019年は映画『男はつらいよ』が公開50周年だそうで、まさかのシリーズ50作目の新作『男はつらいよ お帰り寅さん』が公開されるらしいじゃないですか。実は映画好きの父親が寅さん、というか山田洋次監督の大ファンだったので、小学校の低学年の頃から『男はつらいよ』を映画館に観に連れていかれていたんですよ、最初の頃は同時上映のドリフの映画をエサに。

親としたら「良いものを見せたい」という気持ちがあったんだろうけど、当時は子供すぎて良さが全くわからなかったですね、面白さも。ただただ退屈な時間という感じでした。隣で観てる親父に、上映中に「あと何分で終わるの?」と何度も聞いてたし。それでも親父はあきらめずに『男はつらいよ』を観に連れて行ってくれました。そして盆と暮れに『男をつらいよ』を観に行くのは、我が家の行事になりました。しかも暮れの時は大晦日に観に行くのが我が家の決まり。

最初は何が面白いのかわからなかった『男はつらいよ』だったけど、小学校の高学年になった頃から徐々に話の内容もわかるようになって、最初に見たときよりも楽しめるようになってきた。それでも、場内で大人たちが大爆笑してたりするんだけど、何が面白いのかがわからなくて、なんか一人キョトンとしてることもあって、もうちょい大きくなったらわかるのかな? みたいなこともちょくちょくあったりして。

でも、観客みんなで映画を見ながら笑ったりしてるのは、子供ながらに「良いな」と感じてました。早く自分もそういうのがわかるようになりたいなぁ、と小学生の頃の自分は思ってました。中学生になった頃には普通に好きになって、観に行くのが楽しみになっていました。でも我が家の恒例行事となっていた家族総出で観に行っていた『男はつらいよ』も、高校生になると親と映画観に行くのがなんかとてもダサく思えてきて、理由をつけて観に行かなくなってしまった。

『男はつらいよ』の方も、寅さんの恋というよりも若者の恋を応援する感じになってきてたし、若さ故のもっと刺激があるものを欲していたし、『男はつらいよ』の世界に飽きてたのかも。それでも『男はつらいよ』はまだ続いていたけども。

義父とのコミュニケーションツールとしての『男はつらいよ』

『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

そして時は流れて結婚したんだけど、嫁のお父さんがなんと『男はつらいよ』が大好きだったんですよ。義父とのコミュニケーションというのはなかなか難しいものですが、そこを寅さんが解決してくれたんです、本当に助かりました。そして『男はつらいよ』の偉大さに感謝しました。

『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

そのお義父さん、一度だけ東京に来てくれたんですが、「どこか行きたい所ありますか?」のリクエストに「柴又に行ってみたい」とのことで、連れて行きましたよ。で、柴又に行ったらまた見直したくなって夫婦でイチから見出したら、これがまぁ面白い。それでまたハマってしまって。当時観てたときよりも自分が歳をとったせいか、見え方が変わっていて、それが新鮮だった。

『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

当時は、ちょっと変わった面白いおじさんがイロイロ騒動を起こすコメディという感じで見てたような気がするんだけど、それだけでは無かったです。沁みる沁みる。あとシリーズ通して見ると、ちょっとずつ変わっているところとかもわかって面白い。おいちゃん役も3人それぞれにキャラがあったりとか、寅さんも初期、中期、後期でちょっとづつキャラが変わっていったりするのが見えてきたりして。当時は夏(お盆公開作)より冬(お正月公開作)の方が好きだったんだけど、改めて見てみると夏の方はちょっと切ない恋とかなんだなぁ、と思ったり。子供だったんで、大人の恋みたいのを全然わかってなかったんだなぁ、と気づいたりとか。

今はすっかり見なくなってしまった昭和のアレコレが映っていて沁みる

『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

『男はつらいよ』は冒頭に寅さんの夢のシーンがあるんだけど、意外と1作目にはその夢のシーンがないとか、オープニングの江戸川の河川敷からの「とらや」(シリーズ後半に「くるまや」になる)シーンも途中で変わってたり、いろんな発見があって楽しい。2代目おいちゃん役の松村達雄は、おいちゃん役が変わった後も他の役で結構出てくるのとか、良いですよね。後半の笹野高史とかも。

若い頃の光石研が何回か若者役で出てきたりして、定時制高校の生徒役とかで。米倉斉加年もマジメな役でよく出てるし。個人的に好きなのは帝釈天参道からとらやの店までの、ロケからセットに切り替わるところがなんか好きなんですね。最初の方はとらやの向かいの店が思いっきり書き割り(建物などが描かれた張り物)だったりするところとか。

『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

昭和から平成初期の空気感が映り込んでるというか、別に意識してなく映ってる昭和感が、歳とってくると沁みるんですねぇ。自動販売機とか公衆電話、駅の券売機など、今はすっかり見なくなってしまったモノが映ってるのが。

あと、何回見ても飽きないのがすごいなと思う。最近もBSテレ東で毎週土曜にずっと寅さんやってたけど、なんか家にいる時は観てたな。それで改めて新たな気づきとかもあったりして。今はNetflixでシリーズ全部配信してるので、ヒマな時に好きな回を見たりできるのはとても便利でありがたい。

『男はつらいよ お帰り 寅さん』©2019松竹株式会社

そんな『男はつらいよ』の新作を作るらしいとの話を聞いて、10年前の40周年プロジェクトの時に出た「人生に、寅さんを。 ~『男はつらいよ』名言集~」という本の映像版的なものかなと思ったけど、ちゃんと『男はつらいよ』の新作になっていて、とてもよかった。さすが山田洋次監督と思いました。

文:ANI

『男はつらいよ お帰り 寅さん』は2019年12月27日(金)より全国ロードショー

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『男はつらいよ お帰り 寅さん』

小説家の満男(吉岡秀隆)は、中学三年生の娘と二人暮らし。最新著書の評判は良いが、次回作の執筆にはいまいち乗り気になれないモヤモヤした日々。なぜか夢の中には、初恋の人・イズミ(後藤久美子)が現れ悩みだす始末。

そんな時、妻の七回忌の法要で実家を訪れた満男は、母・さくら(倍賞千恵子)、父・博(前田吟)たちと昔話に花を咲かす。いつも自分の味方でいてくれた伯父・寅次郎(渥美清)との、騒々しくて楽しかった日々。あの寅さんへの想いが、蘇る―

制作年: 2019
監督:
出演: