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成田凌の巧みな話術は必聴!高良健吾、永瀬正敏がサイレント映画の活動弁士を熱演『カツベン!』

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ライター:#齋藤敦子
成田凌の巧みな話術は必聴!高良健吾、永瀬正敏がサイレント映画の活動弁士を熱演『カツベン!』
『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

日本映画黎明期を盛り上げた活動弁士が主人公

映画が誕生したとき、音はまだなかった。映像に音が加わるのは1920年代の終わり、世界で初めて映画の中の人がしゃべるのは1927年の『ジャズ・シンガー』からで、それ以前の映画をサイレント(無声)映画、以後をトーキー(発声)と呼ぶ。

とはいえ、サイレントといっても、映画館が静まりかえっていたわけではない。西洋ではオルガンや楽団による演奏が付いたし、日本では弁士が音楽付きで映画を“上演”した。活動写真(映画)の弁士すなわち“カツベン”は、映画スター並の人気者だった。周防正行の新作『カツベン!』は、そんな日本映画黎明期のカツベンを主人公にして、「映画初めて物語」的なエピソードを満載した楽しいコメディである。

『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

主人公の染谷俊太郎(成田凌)は、子供の頃に活動写真をのぞき見て以来、“カツドー”の魅力に取り憑かれ、いつか“カツベン”になるのを夢見る青年。ところが現実は厳しく、今は泥棒一味に加わり、空き巣狙いをするための人集めのニセ弁士をするのがせいぜい。そんな境遇に嫌気がさした俊太郎は、一味の金を盗んで逃亡、小さな町の活動写真館<靑木館>に流れ着く。

『カツベン!』© 2019 「カツベン!」製作委員会

気の弱い館主(竹中直人)と気の強い妻(渡辺えり)が経営する靑木館で、あこがれだった元人気弁士の山岡秋聲(永瀬正敏)に再会した俊太郎。だが、映画芸術には弁士は不要とばかり酒に溺れる山岡と、暑がりの内藤(森田甘路)しか弁士がいない靑木館は、女性に大人気の茂木貴之(高良健吾)を専属弁士にした隣町の新興タチバナ館に客をとられて潰れてしまう。そこに新人女優となった幼なじみの松子(黒島結菜)も登場、果たして俊太郎は弁士の夢を叶え、靑木館を立て直すことができるのか。そして松子との恋は実るのか?

『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

というのが、だいたいのストーリーなのだけれど、この映画の面白さはストーリーよりも細部にある。子供時代の俊太郎が神社の境内で、うっかり出演してしまうのは、“日本映画の父”牧野省三(山本耕史)が監督する“目玉の松っちゃん”こと尾上松之助の活動写真だ。録音する必要がないので、監督が大声で指示を出し、役者が適当に台詞を言う、今では考えられない撮影風景が展開して笑わせる。

『カツベン!』© 2019 「カツベン!」製作委員会

成田凌、高良健吾、竹野内豊、池松壮亮ら豪華キャストが集結

キャストは、主人公の俊太郎に『愛がなんだ』(2018年)の成田凌を大抜擢。ライバルの弁士に高良健吾、活動好きの刑事に竹野内豊、タチバナ館の館主に小日向文世、その娘に井上真央、実在の映画監督・二川文太郎に池松壮亮という豪華配役陣に、竹中直人、渡辺えり、徳井優、田口浩正など、おなじみの周防組が脇を固める。ちなみに、竹中直人の役名“青木富夫”は、突貫小僧という芸名で小津安二郎の『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』(1932年)などに出演した名脇役の名前である。

『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

映画中映画として上映される活動写真は、すべて当時のスタイルに似せて撮り直したもの。上白石萌音や城田優、NHKのテレビ小説『マッサン』(2014~2015年)のシャーロット・ケイト・フォックス、『Shall we ダンス?』(1996年)のヒロインで周防夫人の草刈民代が出演しているので、お見逃しなく。

『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

映画の見どころ(今回は聞きどころ)は、猛特訓を受けた成田凌の名調子にある。弁士は日本で生まれ育った独特の文化だが、今では世界中に存在を知られるようになり、澤登翠さんや片岡一郎さんら現役弁士が、国内はもとより海外に呼ばれて公演することも多い。無声映画はそのままでも十分面白いが、弁士と音楽がつくと格段にエンタメ度があがる。その一端を、成田凌弁士によるパフォーマンスで垣間見ることができるだろう。映画『カツベン!』そのものも無声映画のテイストで作られていて、ラストにはちゃんと主人公と悪漢のチェースがあり、ハッピーエンドで幕となる。

『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

文:齋藤敦子

『カツベン!』は2019年12月13日(金)よりロードショー

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『カツベン!』

子どもの頃、活動写真小屋で見た活動弁士に憧れていた染谷俊太郎。“心を揺さぶる活弁で観客を魅了したい”という夢を抱いていたが、今ではニセ弁士として泥棒一味の片棒を担いでいた。そんなインチキに嫌気がさした俊太郎は一味から逃亡し、とある小さな映画館<靑木館>に流れつく。靑木館で働くことになった俊太郎は、“ついにホンモノの活動弁士になることができる!”と期待で胸が膨らむ。しかし、そこには想像を絶する個性的な曲者たちとトラブルが待ち受けていた! 俊太郎の夢、恋の運命はいかに……?

制作年: 2019
監督:
出演: