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キューブリックが「最恐の映画」と絶賛!衝撃ラストに思わず白目『ザ・バニシング -消失-』Blu-ray&DVDリリース

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ライター:#BANGER!!! 編集部
キューブリックが「最恐の映画」と絶賛!衝撃ラストに思わず白目『ザ・バニシング -消失-』Blu-ray&DVDリリース
『ザ・バニシング -消失-』©1988, Argos Film, Golden Egg, Ingrid Productions, MGS Film, Movie Visions. All rights reserved.

オランダの映画監督ジョルジュ・シュルイツァー(2014年没)が1988年に世に送り出したサイコ・サスペンス『ザ・バニシング -消失-』が、30年の時を経て日本で公開されたのが2019年4月のこと。あのスタンリー・キューブリックに「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画」と言わしめた隠れた傑作のBlu-ray&DVDが、同年12月11日(水)にリリースとなる。

『ザ・バニシング -消失-』Blu-ray&DVD 12月11日(水)発売 <発売・販売元>キングレコード Blu-ray:¥4,800+税 DVD:¥3,800+税 ©1988, Argos Film, Golden Egg, Ingrid Productions, MGS Film, Movie Visions. All rights reserved.

古典的なイメージを覆す“アットホームパパ”なサイコパスが登場!

映画は、オランダからフランスへの旅行中だったレックスとサスキアのカップルが奇妙な事件に巻き込まれるところから始まる。2人はどうにも仲が良いんだか悪いんだかよく分からないカップルなのだが、ケンカしたり仲直りしたりしつつ立ち寄ったドライブインで、突如サスキアが行方不明に。当然、レックスは血眼になってサスキアを探すのだが、結局その後も行方がわからないまま数年が経過してしまうのだった。

『ザ・バニシング -消失-』©1988, Argos Film, Golden Egg, Ingrid Productions, MGS Film, Movie Visions. All rights reserved.

“旅先での失踪”はサスペンスものの定番と言える導入だが、本作はミステリー的な展開で話を転がしていくわけではなく、いわゆる“謎に包まれた犯人像”みたいな展開も一切なし。なにしろ中盤に差し掛かる前から早々と犯人であるレイモンが登場し、彼の視点によるパートとレックス視点のパートが交互に描かれるものだから、観客としては「いったい何を見せられてるんだ……!?」と不気味な感覚にとらわれることになる。

とはいえレイモンは身代金を狙う誘拐犯とか凶悪な殺人鬼とかいうわけではなく、2人の娘を持つ愛妻家の大学教授のおっさん。しかし、一見フツーに幸せな生活を送っているように見えて、その裏では心の底から沸き起こる“ある欲求”に抗えず、人里離れた別荘で非人道的な“実験”の準備を着々と進めているという、控えめに言ってもガチの変態。しかも、その静かな狂気と相反するように間の抜けた予行演習(というか下手なナンパ)が衒いなく淡々と描かれるので、分かりやすいサイコパス像を期待していると思わず膝から崩れ落ちるかもしれない。

サスペンス映画のセオリーから逸脱した“全部見せ”展開が醸し出す恐怖!

『ザ・バニシング -消失-』レイモン ©1988, Argos Film, Golden Egg, Ingrid Productions, MGS Film, Movie Visions. All rights reserved.

例えばジャッロ映画(イタリア産スリラー)では犯人のシルエットを最初にチラ見せし、その存在に翻弄される主人公の視点の合間に犯人のものと思しき主観視点を挿入して恐怖を煽ったりするが、かたや本作は最初から被害者も容疑者も全部モロ出しのおっぴろげ状態。サスペンスやスリラーのセオリーから豪快に逸脱した展開だが、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)などのような「親切な隣人や家族が実は◯◯でした」的な分かりやすいビックリ展開があるわけでもなく、秘めた狂気以外は本当に普通の人という凡庸さが逆にジリジリとした恐怖を演出している。

『ザ・バニシング -消失-』レックス ©1988, Argos Film, Golden Egg, Ingrid Productions, MGS Film, Movie Visions. All rights reserved.

一方、サスキア失踪の真相に執着するレックスも“悲劇の主人公”から大きく逸脱した行動で、観る者の不安を掻き立てる。新しい彼女がいるにも関わらず3年間もサスキアの行方を追い続けていて、その偏執的なまでの行動が「とにかく真実が知りたい」という一心によって支えられているという、なんともアクティブな狂気を放っているのだ。また、いつの間にか我々観客も「彼女の身の安否はさておき真実を知りたい」という気持ちは理解できなくもないな……という心境に陥っていることに気づかされ、改めてゾッとさせられるのである。

キューブリックも卒倒!? 映画史上屈指の衝撃ラストに思わず白目!

『ザ・バニシング -消失-』©1988, Argos Film, Golden Egg, Ingrid Productions, MGS Film, Movie Visions. All rights reserved.

レックスもレイモンも、好奇心に抗えなかった人間という意味では似た者同士と言えるだろう。そして、犯人と被害者側とは思えない彼らの奇妙な交流を観ているうちに、やがて我々も2人の好奇心に飲み込まれていく。本作のキャッチコピーでも大きく謳われているとおり、ラストの衝撃はお世辞でも何でもなく“最凶”だ。もちろん後年の映画にはもっとショッキングな展開もあるにはあるが、本作の結末の胸糞の悪さは群を抜いている。

1時間半かけてねっとりと狂気を描写し、最後の最後に音もなく、文字通り奈落に突き落とす……。しかも、その過程における“選択”の背景や、好奇心がもたらした“後悔”などによって様々な想いを去来させる演出は、なるほどキューブリックが3度も鑑賞し「最恐」と讃えたのも納得の衝撃度である。『シャイニング』(1980年)の40年ぶりとなる続編『ドクター・スリープ』の公開でキューブリックに改めて注目が集まる今こそ、Blu-ray/DVDでじっくり堪能しておきたい傑作だ。

『ザ・バニシング -消失-』Blu-ray/DVDは2019年12月11日(水)リリース

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『ザ・バニシング -消失-』

オランダからフランスへと車で小旅行に出掛けていたレックスとサスキア。立ち寄ったドライブインで、サスキアは忽然と姿を消してしまう。必死に彼女を捜すも手掛かりは得られず、3年の歳月が経過。依然として捜索を続けるレックスの元へ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始め…。

制作年: 1988
監督:
出演: