ユアン・マクレガーが「自身の禁酒経験を追求した」と語る “回復”の物語『ドクター・スリープ』

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ライター:小西未来
ユアン・マクレガーが「自身の禁酒経験を追求した」と語る “回復”の物語『ドクター・スリープ』
ユアン・マクレガー

「『シャイニング』は単なるホラー映画じゃない。そこには深遠さと複雑さがあった」

―出演を決めたのは、『シャイニング』に思い入れがあったからでしょうか?

うん。でも映画を観たのは、(映画公開から)ずっと後になってからなんだ。『シャイニング』が公開されたのは1980年で、当時のぼくは9才かそこらだった。実は、その時分にはホラー映画にうんざりしていたんだ。ビデオデッキを持っている友達がいて、お父さんがホラー映画が好きで大量のビデオを揃えていてさ。それで、お父さんが留守のときに、ぼくらは映画鑑賞会をやっていたんだ。8才から10才くらいの頃だったと思う。どれもスプラッターの下品なホラーばかりで、10才の頃には興味を失っていたんだ。

それからしばらくして、映画館で『ハロウィン』(1978年)を観る羽目になってね。13歳のとき、ぼくはパイプバンドの一員としてオランダに遠征に出かけたんだ。その遠征を仕切っていた人が映画館を持っていて、ぼくらに面白半分で『ハロウィン』を観せたんだよ。それが死ぬほど怖くて、もう二度とホラーなんて観ないと心に決めたんだ。

―(笑)。

『シャイニング』っていう傑作があることは知っていたけど、「歴史上もっとも怖い映画だ」って聞いていたから、近づく気にすらならなかった。

―そりゃそうですよね(笑)。

それから時が流れて、演技学校に通い出したころのことだ。当時のぼくは、尊敬する俳優の出演作を片っ端から観て勉強していた。それでジャック・ニコルソンの番になったとき、『シャイニング』を観ていないことに気づいて、ようやく観ることになった。とにかく感銘を受けたのを覚えているよ。よくある、斧をもった男がドアを壊して入ってくるだけのホラー映画とは違う。深遠さと複雑さがそこにあった。

お気に入りの瞬間は、主人公が誰もいないダンスホールに行って、バーに着席するシーンだ。バーテンダーのロイドがどこからともなく現れる、という。あのツイストには腰を抜かすほど驚かされたね。だからこそ去年、この映画の撮影で同じダンスホールで同じバーに腰掛けたときは、感慨深かったな。

ユアン・マクレガー

「100テイク目の演技にあって、3テイク目の演技にないものは何なのか、正直ぼくには理解できない」

―『シャイニング』の続編に出演するということは、前作のファンや原作のファンから厳しい目で見られることを意味しますが、抵抗はありませんでしたか?

そういうことはまったく考えなかったね。作品選びに関しては、ひとりのクリエイティブな人間としての必要性や欲求で決めているんだ。ファンがどう思うかとかは考えない。スティーヴン・キングのことも考えなかった。ただ、こうして映画が完成したいま、彼にはぜひ気に入って欲しいと思うけれどね。

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

ぼくに言わせれば『ドクター・スリープ』は、回復と禁酒についての物語だ。オーバールック・ホテルや幽霊などの要素を取り除くと、日常生活において恐怖や誘惑をいかに退けて、勇気を奮い起こすべきか、というストーリーが浮かび上がるはずだ。ぼく自身、若い頃にアルコールの問題を抱えていた。それから禁酒をして長いこと経つけれど、この経験を仕事で追求したことはなかった。だからこそ、底辺にいる主人公の回復のプロセスを、ぜひとも演じてみたいと思ったんだ。

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

―スタンリー・キューブリック監督にお会いになったことはありますか?

残念だけど、ないんだ。彼の映画のファンだから、ぜひとも会いたかったね。ただ、どんな人となりなのかはまったく知らない。とても極端な映画監督で、役者に何百回ものテイクをやらせたことで知られているよね。彼がそれによって何を得ようとしていたのか、正直ぼくには理解できない。100テイク目の演技にあって、3テイク目の演技にないものとは何なのか、と。

おそらく役者に演技をさせないための手法だったんじゃないかと想像するね。きっと役者がいかにも演じている感じの演技が嫌いで、とにかく役者を疲弊させて、演技をする意欲を奪い、ナチュラルさを出させるのが目的だったのかもしれない。役者のぼくに言わせれば、侮辱的な演出方法といえる。ぼく自身に関しては、最初のテイクのほうが絶対にいい演技ができるものだからね。真意に関しては直接、彼に訊かなきゃわからないけれど。

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

それでも、彼の映画に対する敬意は変わらない。とくに『2001年宇宙の旅』(1968年)には中毒のような状態になっていて、毎年、どこにいても必ず鑑賞していて、その意味を理解しようと務めているよ。この映画の準備のために『シャイニング』もたくさん観たから、『シャイニング』に関しても同じようになるかもね。

取材・文:小西未来

『ドクター・スリープ』は2019年11月29日(金)より全国ロードショー

『シャイニング』CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年12月放送

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『ドクター・スリープ』

40年前の惨劇を生き延びたダニーは、心に傷を抱えた孤独な大人になっていた。父親に殺されかけたトラウマ、終わらない幼い日の悪夢。そんな彼のまわりで起こる児童連続失踪事件。
ある日、ダニーのもとに謎の少女アブラからメッセージが送られてくる。彼女は「特別な力(シャイニング)」を持っており、事件の現場を“目撃”していたのだ。
事件の謎を追うダニーとアブラ。やがて2人は、ダニーにとって運命の場所、あの“呪われたホテル”にたどりつく。

制作年: 2019
監督:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
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