「イタリアのトランプ」ことベルルスコーニ元首相がモデル! 女、金……スキャンダルまみれ!『LORO 欲望のイタリア』

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ライター:BANGER!!! 編集部
「イタリアのトランプ」ことベルルスコーニ元首相がモデル! 女、金……スキャンダルまみれ!『LORO 欲望のイタリア』
『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

本国では2部作として公開された大作を1本にまとめたインターナショナル版

1994年から9年間にわたってイタリアの首相(閣僚評議会議長)を務め、保守政党フォルツァ・イタリア~自由の人民党を率いた男、シルヴィオ・ベルルスコーニ。2017年までプロサッカークラブ・ACミランのオーナーだったことでも有名だが、日本での知名度はそこまで高くないかもしれない。何かとスキャンダルの絶えないおっさんだなあ、というイメージをぼんやり抱いている人も少なくないだろう。

そんなベルルスコーニ元首相をモデルにした映画が『LORO 欲望のイタリア』である。とはいえ、冒頭で「本作は自由な創造の所産である。(中略)現実が生んだ架空の人物と実人物が虚構の中で交錯する」と表明されるとおり、いわゆる伝記映画ではまったくない。そもそもベルルスコーニのガチの伝記なんて、絶対にヤバすぎて死後100年くらい経たなければ公にできないはずだ。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

というわけで、観客は伝記風映画なのかサスペンス映画なのかコメディ映画なのか、イマイチ把握できていないまま鑑賞することに。マンドリンが印象的なセルジオ・ブルーニの曲が流れ、いかにもイタリアンなオープニングから、開始10分も経たないうちからコカインが登場するという、なんとも先が思いやられる展開に期待が高まる。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

その後、しばらくは会話の端々にその存在がほのめかされる程度でベルルスコーニのべの字もでてこないが、それもそのはず、本国では2部作として公開された作品をドッキングさせたバージョンとのことで、前半はピンプ的なことをやりつつ成り上がりを夢見る青年実業家のセルジョがメインのお話。そして中盤に差し掛かる前に、ベルルスコーニの私生活おっぴろげが始まる、という展開だ。そのため上映時間は約2時間半あるので、一応ご覚悟を。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

何をやっても滑稽なベル爺さんの切なさと虚しさと浅ましさ

ベルルスコーニの全盛期に至るまでの物語……とかでは決してないので、彼のことをざっくりと予習しておいたほうがすんなりと物語に入っていけることは間違いない。しかし、政敵に凄みをきかせたかと思えばツンツン妻のご機嫌を取ろうとしたり、爆音四つ打ちにヒーハーしている若者たちを羨ましそうに眺めたりと、本作のベルルスコーニはなんだか掴みどころがないおっさんである。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

もちろん、億万長者で権力者のベルルスコーニには取り巻きもうじゃうじゃいて、皆なんとか召し抱えられようと媚を売りまくる。まるで恋愛リアリティー番組さながらの卑しさだが、世界有数の資産家とはいえ植毛モロバレのコッテリしたおっさんがモテるのはさすがに厳しいわけで、同時にすさまじい虚しさも漂わせている。おそらく、それこそがパオロ・ソレンティーノ監督の狙いなのだが、欲しいものは何でも手に入る金持ちオヤジの空虚を、あえてパーッと景気よく描いているのだ。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

中盤過ぎ、ついにセルジョとベルルスコーニが交わってから、おもしろ演出にエンジンがかかる。ヘタをしたら孫ほどの年の差がある女性に古臭い価値観を、というか存在そのものを否定されたベル爺さんの哀しさ、公務で目にした貧しい人々の姿……。どうしたって一国の首相には見えない、まるでマフィアか麻薬カルテルのボスかという雰囲気のベルルスコーニは、何をやってもどこか滑稽だ。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

ただただ肉欲的で享楽的な『ピエル・パオロ・パゾリーニ/ソドムの市』(1975年)といった有様のドラッグパーティーシーンなど、トリップムービー的な趣も強い。また、音楽に造詣が深いソレンティーノ監督だけに、今回もザ・ストゥージズからYACHT、LCDサウンドシステム、Clap Your Hands Say Yeah、Villagers & Nico Muhlyなどなど、ナイスチョイスな楽曲にも要注目だ。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

職権乱用、国民無視、無数のスキャンダル……当時の良識あるイタリア国民は自国の首相が他国でネタ化していることを嘆いていたそうだが、さもありなん。まるで税金を使って桜を見る会に大勢の支持者を招待していたどこかの国の首相と同じなのだから、我々もベル爺さんを観て笑っている場合ではないのである……。

『LORO 欲望のイタリア』©2018 INDIGO FILM PATHÉ FILMS FRANCE 2 CINÉMA

『LORO 欲望のイタリア』は2019年11月15日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

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『LORO 欲望のイタリア』

イタリア、サルデーニャ。広大な敷地を持つゴージャスな高級ヴィラ。ここには、悪名高き「彼」が住んでいる。「彼」とは、政治とカネ、マフィアとの癒着、職権乱用、女性問題に失言など、数々のスキャンダルで世間を騒がせたイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニ(トニ・セルヴィッロ)。
政敵に敗れ失脚するも、一度はトップに登りつめた怪物的な手腕で、政権への返り咲きを虎視眈々と狙っていた。
一方、政界進出を目論む青年実業家のセルジョ(リッカルド・スカマルチョ)は、その足掛かりにベルルスコーニに近づこうと画策する。
そんな中、セクシー美女を招き贅の限りを尽くしたパーティーで生気を養い、持ち前のセールストークで足場を固めていくベルルスコーニだったが、政治家生命を揺るがす大スキャンダルが勃発する。

制作年: 2018
監督:
出演:
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