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盲目のフリするピアニスト⁉ どんでん返しに仰天必至『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』

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ライター:#大倉眞一郎
盲目のフリするピアニスト⁉ どんでん返しに仰天必至『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』
『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

『暗くなるまで待って』の再来か

『暗くなるまで待って』(1967年)は、オードリー・ヘプバーンの美しさに目眩がすると同時に恐怖で顔が引きつった。と言っても私が10歳の時のことだから、その後、中学生くらいの時にリバイバルで観たか、日曜洋画劇場で淀川さんに勧められて観たかのどっちか。

視力を失った主人公と自宅に押し込んできた犯罪者集団との頭脳戦で、あんまり怖くて映画を観る方が目をつむってしまいそう、という不可思議な現象を生んだ。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』はそんな映画かもと思ったら、もっとややこしかった。恐怖というより、あまりにも展開が捻れていて、こんなに細やかかつ破綻のないサスペンスが作れたのかと驚いた。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

レストランの経営を助けているこじんまりした美人が、盲目の男性ピアニストが弾くピアノに魅了され、あれやこれやと世話をやく。ありがたいがピアニストの視力には全く問題なく、盲目を装うことで新たな芸術的インスピレーションが得られるのではないか、というボケをかましているだけだった。

それに気づいた彼女を巻き込んだ大騒動、ということで終われば普段のインド映画らしい、まあ、新しくもなく、そこそこの出来だったはずなのだが、ここから二転三転四転五転と観る者の予想を裏切って、「えーっ!」という声を何度も上げさせる。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

盲目であるはずのピアニストが偶然、殺人現場に立ち会うことになってしまい、見てしまっていることがわかれば殺される。見えないふりを続けなければならないが、そんなことが長続きするはずがない。見えてないふりをしている場合じゃない。警察に行かねば。しかし、ここはインド。悪役は警察署長と相場が決まっている。そこから話は捻れる捻れる。

『暗くなるまで待って』は本当に怖かったが、『盲目のメロディ』は予想のつかない展開に、どこかで破綻するんじゃなかろうかと怖くなる。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

踊らないインド映画にも秀作多し

「私はね、インド映画はあんまり好きじゃないんだけど、これは面白かったねえ」と試写室を出たところで、私よりひと回りお年を召していらっしゃると思しき方が話をされていた。どうしてインド映画が好きじゃないのかお聞きしたかったんだけど、私のような若造が絡めるような雰囲気ではない。しょうがないので、宣伝を担当している友人に「文句なく最高の出来だったよ」とわざとでかい声をかけて帰ったが、多分大方の人は私と同じくらい高揚していたに違いない。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

「踊らないのに大ヒット!」というのが、この作品の売りのひとつらしいが、最近は踊らないインド映画が増えてきていて、珍しい話じゃない。昔ながらの突然踊り出す不条理盆踊り的なのが大好きな私にとっては腹立たしいが、確かにこの作品は誰も踊らない。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

それでも花丸をつけざるを得ない。インド映画好きも、そうでなくても、驚愕するに違いない。通常、日本ではインド映画は小規模で上映されることが多いのだが、今回は普段に比べると公開館数が多い。嬉しい。

「インドのコーエン兄弟だ!」という評を載せたメディアもあるようだが、そこはどうかな。『盲目のメロディ』はシュリラーム・ラガヴァン監督(私は本作で初めて知った)、コーエン兄弟はコーエン兄弟。そういうことでいいんじゃないか。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

変な見出しとビジュアル

「見えすぎちゃって困るの~」というおじさんたちが大喜びするCMが1969年くらいに流れました。テレビのアンテナの広告だったんだけど、ピンクのドレスで歌っているお嬢さんになぜか雨が降り注ぎ、、下着がだんだん見えてくるという、今では多分流せないような代物。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

考えすぎだけど、この映画のチラシに「見えすぎちゃってスイマセン」というコピーが付いているのがちょっとアレだな。そんな映画かもと期待してしまう方もいるかもしれないので気をつけてください。お色気はございません。

さらにネタバレの可能性があるが、この作品のポスターにはサングラスの男と目隠しをされた女がロープで椅子に括られ、背中合わせになって、仲良さそうに拘束されているように見えるヴィジュアルが使用されているが、実はこれも目くらましでございます。

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』©Eros international all rights reserved

最近、踊りも戦闘もないインド映画の秀作も増えております。これを機会に是非、劇場に足をお運びください。

文:大倉眞一郎

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』は2019年11月15日(金)から公開

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『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』

盲目のピアニスト、アーカーシュの誰にも言えない秘密。それは、本当はバッチリ目が見えること。芸術を追及するあまり、才能の向上を目指して盲目を装う彼は、ひょんなことから恋に落ちたソフィの父親の店でピアノ演奏を披露する日々を送っていた。
そんなある日、彼の演奏を絶賛した往年の大スター、プラモードからの演奏依頼を受けて訪ねた豪邸で、プラモードの妻シミーと、その浮気相手がプラモードを殺害したのを目撃してしまう!
死体も犯人も見えないフリで、その場を切り抜けたアーカーシュだったが、通報に駆け込んだ警察の署長こそプラモードを殺した男だった!
さらに災難は続き、盲目を疑ったシミーに毒薬を飲まされ、本当に目が見えなくなり、署長からは命を狙われて、遂には病院送りになってしまう。 追い込まれたアーカーシュは、目の手術費用を稼ぐため、病院で知り合った怪しい医者スワミ(ザキ―ル・フセイン)たちと組んでシミーを誘拐するが、そこには裏切りと騙しあいの大騒動が待っていた!

制作年: 2018
監督:
出演: