「怖すぎるシーンはすべて残してあるよ」『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』監督&プロデューサー姉弟に突撃!

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ライター:小西未来
「怖すぎるシーンはすべて残してあるよ」『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』監督&プロデューサー姉弟に突撃!
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

いまハリウッドで最もホットな映画監督といえば、アンディ・ムスキエティ監督だろう。DCコミックス原作のスーパーヒーロー映画『ザ・フラッシュ』や、ハリウッド実写版『進撃の巨人』など(共に公開日未定)の注目作に、次々と起用されている。

ギレルモ・デル・トロ監督が製作総指揮を務めた『MAMA』(2013年)で長編映画デビューを果たしたアルゼンチン人監督がブレイクしたのは、もちろん『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』(2017年)がきっかけだ。本作が世界的に大ヒットしたことで、またたく間に時の人となった。

今回は待望の続編『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』を携えて、2019年7月に開催されたサンディエゴ・コミコン・インターナショナルに参加したムスキエティ監督を直撃。気になるその内容と、謎に満ちた生い立ちを探るべく、実姉でありプロデューサーのバルバラ・ムスキエティと共同でインタビューに応えていただいた。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』バルバラ・ムスキエティ(左)、アンディ・ムスキエティ監督(右)© HFPA

「4時間の作品を2時間45分まで削ったけど、怖すぎるシーンは全て残してあるよ(笑)」

―『IT/イット』シリーズは、今回で完結ということでいいのでしょうか?

アンディ:悲しいけど、これですべてが終わる。物語の結末だ。もともと子供時代と大人時代を描く2部作として公開しようという計画だった。本作ではルーザーズ・クラブが大人として登場するけれど、1989年がフラッシュバックとして描かれている。彼らは当時起きた最悪のことを覚えていない。それが物語の核になっている。

バルバラ:前作は映画館を出たときに、観客が希望を抱くことができた。今作も同じようなエンディングになっていると思うわ。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―登場人物が大人になったことで、雰囲気も変わっているのでしょうか?

アンディ:恐怖には2つのレイヤーがある。“彼らが子供のときに怖がっていたもの”と、“現在の彼らが怖がっているもの”の2種類が存在する。そして、後者のほうがもっと複雑で深いものだ。原作を子供のときに読んで、大人になって読み返してみると、ぼく自身の捉え方が変わっていることに気がついた。だから、映画の視点も変わっている。子供のときには無垢な視点があったけど、今度は違った視点で描かれているんだ。

バルバラ:ただ、恐怖そのものは同じなの。恐怖の具現化が違っているというだけで。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―ホラーイベント<スケアディエゴ>でお披露目されたフッテージに鏡の部屋が登場しましたが、これはスティーヴン・キングの原作にないシーンでした。どの程度、原作に忠実なんでしょうか?

アンディ:映画版を作るにあたり、原作に縛られないように意識した。ただ、物語の本質は変わっていないよ。映画版のストーリーはほとんどリアルタイムで進行するので、緊張感を持続させるために新たなイベントを差し込んでいるだけでね。

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―映画の尺はどのくらいになったのですか?

アンディ:脚本を書いているときと、映画を仕上げているときでは、作品に対する見方が変わってくるものだ。脚本を執筆しているときは、物語に欠かせないと思う要素をすべて盛り込む。でも、ラフ編集を繋げて4時間になった映画を通しで見ると、いくつかのイベントを取り除いても物語の本質が変わらないことに気づく。そもそも、4時間もある映画をスタジオに提出するわけにはいかないからね。それで2時間45分まで削った。テンポはいいと思うし、完成版を見た人は誰も文句を言っていないから、悪くないんじゃないかな。

―怖すぎる、という理由でカットしたシーンはありますか?

アンディ:それはまったくないね。怖すぎる箇所は全部残してあるよ(笑)。

バルバラ:素晴らしいシーンだけれど、劇場公開版に盛り込むことができなかったものはたくさんあるの。いつかディレクターズ・カット版として発表するつもり。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「役割分担を簡単に説明すると、ぼくが撮影をして、彼女が撮影をやめさせる係(笑)」

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』アンディ・ムスキエティ監督(左)、バルバラ・ムスキエティ(右)© HFPA

―あなたたちお2人はいつも一緒に仕事をされていますが、役割分担はあるのですか?

バルバラ:私は監督をしない。彼はプロデュースをしない。だから、これ以上ないほど役割ははっきり分かれている(笑)。

―でも、いつもご一緒ですよね。

バルバラ:ええ、私たちは可能な限り良い映画を作るという共通した目標を持っているの。姉弟で同じものを求めているから、お互いを支え合い、誰も邪魔をさせないようにしているのよ。

アンディ:セットでの役割分担を簡単に説明すると、ぼくが撮影をして、彼女が撮影をやめさせる係(笑)。

バルバラ:誰のおかげで次の撮影がスタートできると思ってんの(笑)。

アンディ:それは、ごもっとも(笑)。

―バルバラさんは、アンディさんがいつか映画監督になると思っていましたか?

バルバラ:私には明白だった。何か芸術的な仕事に就き、大きな成功を収めると思っていたわ。幼いころから映画漬けだったから。当時のアルゼンチンは軍事政権が統治していたから、特定の作品以外の映画作りが許されることになるとは、とても思えなかった。でも、私たちはそれを続けたし、幸いなことに素敵な両親に恵まれた。自分たちがやりたいことをやりなさい、否定的なことを言う他人の意見に耳を傾けないように、と言ってもらえて。

―バルバラさんは何に夢中だったんですか?

バルバラ:読書ね。本の虫だった。もちろん映画も好きだったわ。両親がよくドライブイン・シアターに連れて行ってくれたの。ベビーシッターをいちいち雇いたくないと言ってね。それで、私たちは後部座席でいつも大人向けの映画を覗いていたのよ。

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「2人で一緒に手がけたコマーシャル製作が、映画監督になるための最高の学校になった」

―最初に衝撃を受けた映画はなんですか?

アンディ:ぼくにとっては『未知との遭遇』(1977年)だね。ドライブイン・シアターで見たんだ。1977年のことだから、僕は4歳か5歳。

バルバラ:わたしは6歳くらいね。

アンディ:あれは魔法のような体験だった。ストーリーを完全に理解できたわけではないと思うんだけど、たくさんのシーンに圧倒されたね。ほら、光が料金所を通過するところとか。あと、リチャード・ドレイファスが運転するトラックが止まってしまって、後方のトラックも止まってしまって、さらにもう一台やってきたと思ったら、それが宙に浮かんで……っていう。もちろんエンディングにもぶっ飛んだ。ぼくにとっては、あれはホラー体験だった。エイリアンがついに登場する美しい瞬間なんだけど、子供のぼくにはエイリアンの姿が恐ろしくて仕方がなかった。だから、いまだにぼくが恐ろしいと思うモンスターは痩せ細っているんだ。『未知との遭遇』の影響だね。

―映画を作りはじめたのはいつ頃ですか?

アンディ:15歳のときに、学校で最初の短編を作った。ゾンビ映画なんだけど。

バルバラ:私たちのお父さんはコダックで働いていて、祖母はカメラマンだったから、家じゅうにカメラが転がっていたわ。いつも誰かに写真を撮られるという環境で育ったの。

―映画作りを一緒にしようと提案したのは、どちらですか?

バルバラ:私のほうが年上で出しゃばりがちだから、きっと私だと思う(笑)。

アンディ:(笑)。

バルバラ:ただ、彼にとっても驚きじゃなかったと思う。相性がいいことは分かっていたし、同じものを愛していたから。その後、2人は地理的に離れてしまうのだけれど、その気持ちは変わらなかった。アンディはブエノスアイレスの映画学校に行って、私はロサンゼルスでコミュニケーション学科で学んだあと、ヨーロッパに行くことになる。私がプロデューサーとしての活動を始めて、彼がコマーシャルの監督を始めたとき、同じ街に住んで、一緒にやるべきだと提案したの。

それでコマーシャル作りを一緒に手がけることになった。これは彼にとって、映画監督になるための最高の学校になったわ。デビュー作『MAMA』を作る前に、コマーシャルの撮影で600日以上を現場で過ごしていたから。映画を監督するとなると、100人以上のクルーを率いることになる。アンディは新人監督であるにも関わらず、コマーシャルの経験が豊富だったから、セットを完全に掌握することができたの。

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「長編デビュー作を手伝ってくれたギレルモ・デル・トロは私たちのゴッドファーザー」

―中南米出身の映画監督がハリウッドで活躍することが珍しくなくなりましたが、なぜだと思いますか?

アンディ:メキシコ出身の監督のおかげだね。3人の映画監督がハリウッドのシステムの中に食い込むことができた。メインストリームの映画を作るだけでなく、パーソナルな映画を作ってね。ギレルモ(・デル・トロ)、アルフォンソ(・キュアロン)、アレハンドロ(・ゴンサレス・イニャリトゥ)の3人は、ハリウッドの人々の価値観を変えてくれた。彼らはメキシコ人で、ぼくらはアルゼンチン人で、実は国籍は違うんだけど、ラテン系作家として一緒にされがちだ。似ているところもあるし、ぜんぜん違っているところもある。でも、アメリカやヨーロッパの映画作家と違うという点では共通しているし、なにより素晴らしい映画作家の中に入れてもらえるのは誇らしいね。

バルバラ:なにより、ギレルモはわたしたちのゴッドファーザーでもある。短編映画版の『MAMA』を見た彼が電話をくれて、長編映画化するのを手伝うと約束してくれたの。スペイン語版なら2ペニーで、英語版なら2000万ドルで作れる。どちらを選択するにせよ、手伝うと約束してくれた。彼ほど多忙な人はいないのに、本当に支えてくれたし、いつでも相談に乗ってくれる。実は、本作でもカメオ出演してもらうために努力したんだけど、どうしても都合が合わなくて。

アンディ:『未知との遭遇』みたいにするのはどうかな。スピルバーグ監督は劇場公開のあとに、新たなシーンを加えた特別編を公開したよね。だから、ギレルモのカメオ出演シーンをあとで撮影して、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。特別編』を公開すればいいよ(笑)。

取材・文:小西未来

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は2019年11月1日(金)より全国ロードショー

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『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』

小さな田舎町で再び起きた連続児童失踪事件。幼少時代、“それ”の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちは、27年前に固く誓った<約束>を果たすために町に戻ることを決意する。だが“それ”は、より変幻自在に姿を変え、彼らを追い詰めて行くのだった……。なぜ、その町では子供が消えるのか? なぜ、事件は27年周期で起きるのか? “それ”の正体と目的とは? 果たして、すべてを終わらせることができるのか!?

制作年: 2019
監督:
出演:
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