発達障害を抱える親戚のおじさんに密着! 生々しくも飄々としたドキュメンタリー『だってしょうがないじゃない』

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ライター:BANGER!!! 編集部
発達障害を抱える親戚のおじさんに密着! 生々しくも飄々としたドキュメンタリー『だってしょうがないじゃない』
『だってしょうがないじゃない』

発達障害を抱えた叔父さんを追い続けた赤裸々な3年間!

『美代子阿佐ヶ谷気分』(2009年)や『シェル・コレクター』(2016年)などで強烈な個性を放ってきた坪田義史監督の最新作『だってしょうがないじゃない』が2019年11月2日(土)より公開。坪田監督の叔父であり、広汎性発達障害を抱えたまことさんの姿を3年間にわたって追ったドキュメンタリーだ。

『だってしょうがないじゃない』

その概要だけで相当な問題作だと見受けるが、意外やまことさんや坪田監督自身が醸し出す飄々とした雰囲気が漂っていて、鑑賞前の力みから少しだけ解放された。とはいえ61歳にして広汎性発達障害と軽度の知的障害を伴う自閉症を抱え、母親が亡くなってからは障害基礎年金を受給しながら独居生活を送っているまことさんが抱えた問題は控えめに言っても深刻なものだ。パッと見では分かりにくい障害ということもあって、我々観客も終始じんわりとした不安に覆われていく。

本来ならば密着撮影など難しい被写体だろうと思うが、そこは親戚という立場がギリギリ許容させているのかもしれない。そんな坪田監督も注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断されて精神的にかなり参っていた時期だったそうで、叔父を撮影しながらも、どこか自身を重ね合わせているかのような視線がにじみ出ている。まるで少年のような純粋さをキープしているまことさんも、足しげく訪ねてくれる再従兄弟の存在は新鮮だったのかもしれない。

『だってしょうがないじゃない』

自身も精神疾患に苦しむ監督が、叔父を通して様々な問題に直面する

まことさんの従姉妹であり監督の叔母さんが成年後見人として身の回りの世話をしているが、彼女のような親族がいなかったことで家を追い出され、ホームレスになってしまった人もいるのではないだろうか。そういう意味ではまことさんは運が良かったとも言えるが、とにかく本作はまことさんの淡々と生々しい生活を追い続ける。

『だってしょうがないじゃない』

ときには監督とぶつかり合いながら野球観戦や夏祭りなども楽しみ、徐々にカメラに向かって本音を吐露していくまことさん。坪田監督はシンプルな問いかけで親交を重ねていくが、まことさんは思いのほか客観的な視点も持ち合わせていて、分かっちゃいるけど……という悔しさをにじませることもしばしば。まさに「だってしょうがないじゃない」とつぶやきたくなる、そんな物悲しさが入り混じった感覚を覚える。

『だってしょうがないじゃない』

本来は撮影する側の坪田監督も、通院や服薬する様子など自身が抱える問題を吐露していく。それでもどこかふわっと軽いトーンが貫かれているのは、監督とまことさんの間に芽生えた信頼関係が伝わってくるからだろう。どっこい本作は、ほっこりドキュメンタリーとして消費されるようなシロモノではない。年金受給年齢は引き上げられ、税金は上がれど社会福祉は風前の灯……日本で暮らす多くの高齢障害者が抱えた諸問題を象徴する存在がまことさんなのだ。

『だってしょうがないじゃない』は2019年11月2日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

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『だってしょうがないじゃない』

精神に不調をきたした映画監督/坪田義史が 発達障害を持ちながら一人暮らしをする親類の叔父さん(まことさん)がいることを知る。 坪田は衝動的にカメラを持ってまことさんに会いにいく。 坪田はまことさんとの交流を深めていく中で「親亡き後の障害者の自立の困難さ」や 「障害者の自己決定や意思決定の尊重」「8050問題にともなう住居課題」などの問題に直面していく。

制作年: 2019
監督:
  • BANGER!!!
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  • 発達障害を抱える親戚のおじさんに密着! 生々しくも飄々としたドキュメンタリー『だってしょうがないじゃない』