セガール、バトー、スネーク……声優・大塚明夫が語る吹替えの極意とは?(動画あり)

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ライター:BANGER!!! 編集部
セガール、バトー、スネーク……声優・大塚明夫が語る吹替えの極意とは?(動画あり)
大塚明夫

※このインタビューは2015年に行われたものです

スティーヴン・セガールを演じて30余年

―大塚さんが最初に『刑事ニコ/法の死角』(1988年)でスティーヴン・セガールを演じられてから26年です。

そんなに経ちますか!? びっくりだな(笑)

―作品によって吹き替えにも変化をつけているのでしょうか。

作品によってセガールさんが演技を変えていれば、きっと僕も変えていると思います。でも、彼は演技より存在で勝負する方で、セガール・アクションを見せることに重きを置いているので、いかにも彼がしゃべっている雰囲気をどう作るかの方が大切だと思いますね。

―大塚さんの場合、役柄によって声のトーンが全く違うように聞こえるんですが、意識されていらっしゃるのでしょうか。

そうですね。ただ、元の俳優の声をなぞるのはあまり意味のないことだと思っています。ビジュアルからパっと想像する音が出てきた方が、観ている人は違和感なく観られるんじゃないかなと思います。その俳優が持っている雰囲気や空気感を、僕たちが日本語を乗せることでさらに増幅できるかどうかが、難しいことなんでしょうね。

―具体的に、セガールだったらどういう空気感を増幅させるんですか?

“不敗”な感じですね(笑)。不敗の人はどうしゃべるのかな、と考えます。負けないんだから、恫喝したり威嚇する必要がないわけです。普通に、でれーっと、横隔膜が緩んでいる感じでしゃべっているほうが、むしろ最強みたいな感じになって、敵からすれば嫌じゃないか、とか考えますね。

―ほかの俳優よりも、セガールは難しいと思いますか?

こういう方法論を見つけることは難しいと思います。色々と手探りで何本かやって、“この方法で間違いないな”となってからは、それを踏襲していけばいいだけなんです(笑)。

―先ほど“セガールさん”とおっしゃっていたので、距離を感じました(笑)

セガールさん、あなたのおかげで年に何回か吹替えがあります。「さん」をつけずにはいられないです(笑)。あの人、すごいですよね! 最初はハリウッド資本で何本かやってたけど、今は自分でプロデュースして作ってるでしょ。

吹替はオリジナルを超えることもある

―俳優の演技に声をあてるという仕事の面白みや、やりがいは、どんなところですか?

ハリウッドの一流の俳優さんにセリフを乗せるときは、その人の芝居を呼吸からトレースしていかなきゃいけません。いままで自分にはなかったような表現が使えるようになったり、学んだり、そういう楽しさがありますね。

逆に、一流ではない俳優さんの作品の場合は“こうやったらどうかな?”と、一流作品の中で吸収したものを、どう盛り込んでいくかを考えます。盛り込むことで、字幕で観たときはイマイチだった作品が、吹替版で観た時に“これ面白いじゃん”となったりするんですよ(笑)

―オリジナルの俳優の演技を超えてしまう、ということですね。

そうですね。昔の作品を観ていると、やっぱりありますよね。『Mr.BOO!』シリーズ(1976年~)とか、どう思います? 個人的には、あれは吹替版の方が絶対に面白いと思っています(笑)。

大塚明夫

―収録前に、吹き替える作品を何度もご覧になるんでしょうか?

観る回数は作品によります。たくさんしゃべっていたり、難しいセリフが多かったり、早口でまくし立てていると、合わせることの難易度がはね上がりますので、当然たくさん観ないと現場でオタオタしてしまいます。

脚本は大体合うようにできていますが、セリフが短めの時が一番困ります。ゆっくりしゃべることは難しいですし、意味がつきます。「こ・ん・に・ち・は」とゆっくりしゃべったら、“何かな?”って思うじゃないですか(笑)。

―役作りなど、事前の準備で何か工夫されていることはありますか?

演劇の場合は、大変な根気と時間をかけて役と向き合って練っていくんですが、声優の仕事にはその時間はありません。その代わり、1日にいくつもの作品を演じたり、関わるシナリオが段違いに多くなるので、台本と映像を観た時に、いち早く中身を掴み、いかに瞬時にパパっと作れるかも能力の一つじゃないですかね。

吹替映画とアニメの違いとは?

―アニメ『ブラック・ジャック』(1993年~)は手塚治虫原作の大変有名な作品ですが、作品が大きければ、声優の仕事の“楽しさ”も大きくなりますか?

作品が大きいということと、優れた声優ということは、ちょっと違うと思います。『ブラック・ジャック』の場合は、元々俳優が演じたものがないのでトレースするわけにもいかない。自分が原作で読んだイメージはあっても、そのイメージは千差万別で、監督と音響ディレクターから“ここはこうしてください”という指示があれば、やっていかなきゃいけないわけです。

―吹替えとアニメではまったく違うものなんですか?

違いますね。アニメの場合、まだ“魂”が入っていない状態ですから、自分が命を吹き込むことになります。デフォルメされたキャラクターの演技を自分で作っていくので、自由度が高いんです。逆に難しい面もあるんですけどね。立体感を持たせていくのはセリフだと思うので。

―アニメの場合は、原作者や監督などが身近なものとして存在しています。それでも自由度が高いというのは、どういうことなんでしょうか。

吹替えだと、映画は完全に出来上がっていて効果音や音楽も入っているので、大幅に道から外れることはできない。でもアニメは、“こうだろう”と予想して芝居をすると、“それいいね!”って、絵を差し替えたりする場合もある。シリーズものだと、“そのキャラ面白いね”っていう芝居をすると、シナリオライターがキャラを動かしやすくなったりするんですよ。もちろん、原作通りやってくださいというものもありますけど、そういう意味でアニメは自由度が高いんです。

大塚明夫

声優だけはやめておけ!

―声優の仕事を始められたきっかけや動機は?

きっかけはね、親父が「お前、声の仕事やる?」って言うから、「やる」って言っただけです(笑)。当時、僕はお芝居しかやっていなくて、朝の8時から夕方の5時まで寒風吹きすさむ中や炎天下のもとでバイトして生きていました。バイトで必死に稼いでいたお金を、エアコンの効いた室内でセリフを言うだけで貰えるなんて、こんなにいい仕事はないじゃないか! と思ったんです。そういう感動と同時に、だったら声の仕事を大切にしなきゃいけないと思いましたね。

―ご自身の著書「声優魂」には“声優だけはやめておけ”と書かれていますよね?

職業として成立させるのが生半可じゃないんです。若いうちはいいんですけど、40歳、50歳になったときに、“失敗したかな?”と思ってもやり直しがきかないので、生き残ることが難しいと思うんですよ。成功できる確率はとても低いし、職業として簡単に考えない方がいいですよね。

―逆に言えば、やりがいのある職業でもある?

演じること自体がやりがいのあることなんであって、声優という仕事がやりがいがあるかというと、いやいや、そうじゃないよ、という感じかな。声優っていう仕事は、本来はスターになれない人のバイトみたいなものだったんです。どんなに芝居が上手でも、やっぱり昔は綺麗な人じゃないとスターになって稼ぐことはできなかった。でも、声の仕事をやれば口に糊することはできる。“食えなきゃしょうがないじゃん”というのが先に立つんですよね。声優さえやれば、それがやりがいのある仕事なんだっていうようには、とても思えなくて。

―それでも声優を目指す若い人たちが増えています。

そうなんですよ。なんでだろう? と不思議です(笑)。

―若い世代には「メタルギアソリッド」のスネーク、30~40代には『攻殻機動隊』(1995年)のバトー、それ以上の世代にはセガールというように、世代によって大塚さんのイメージが異なっていることに関して、どう思われますか?

いろんな世代に喜んでもらえてありがたいですし、“この世代は空白なんだよね”っていうふうにならないように頑張ろうと思っています(笑)。

―プライベートでアニメや映画をご覧になる際に、他の声優さんのことが気になったりしませんか?

若い頃はひたすら吹替版を観たんですけどね、最近は「俺だったらこうやるんだけどな~」っていうのが多くて、苦しくなっちゃってあんまり観ないですね。映画を観に行ったって、「この役はあの人が吹替えたらいいな」とか、余計なことを考えたりしてるんです。100%楽しんでいないというか、純粋に楽しめる方がちょっぴり羨ましいですね(笑)。

吹替版を観る人たちが、見巧者になっていけばいいな

―世界的には、字幕よりも吹替え文化の方が根付いています。イタリアなどでは劇場でかかる映画も吹替のほうが多く、この俳優にはこの声優、と決まっていて、有名なハリウッド俳優の声をあてたことでスターになった声優さんもいるそうです。

日本もそういう風になるといいですね。アニメだとあまり気にならないんですが、吹替えだと慣れていない人がやると、どうしても馴染まないことがあるのでね。

―吹替版の楽しみ方とは?

そりゃあ字幕を見なくていいんだから、声優がうまければ作品に集中できるところですね。吹替版って、テレビ版やソフト版などいろんなバージョンがあるので、観る人たちが比較して観て“こっちのほうが面白く感じるのはどうしてだろう?”なんて考えて、見巧者(みごうしゃ)になっていけばいいなと、すごく思いますね。

大塚明夫(おおつかあきお)
’59年11月24日東京都生まれ。声優、俳優、ナレーターとして活躍。アニメ「攻殻機動隊」のバトー役のほか、洋画吹き替えではスティーヴン・セガール、デンゼル・ワシントンらの声を担当。2019年11月8日に発売され話題沸騰中の小島秀夫監督最新作のゲーム「DEATH STRANDING」では、ダイハードマン役を演じている。

CS映画専門チャンネル ムービープラスの特集「吹替王国 大塚明夫誕生日SP」にて2019年11月放送
・『レオン 完全版【日本語吹替版】』ジャン・レノ
・『K-19【日本語吹替版】』リーアム・ニーソン
・『沈黙の達人【日本語吹替版】』スティーヴン・セガール

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