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内部告発サイト ウィキリークス創始者は、犯罪者か?ヒーローか? Netflixドキュメンタリー『リスク: ウィキリークスの真実』

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ライター:#久保憲司
内部告発サイト ウィキリークス創始者は、犯罪者か?ヒーローか? Netflixドキュメンタリー『リスク: ウィキリークスの真実』
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内部告発サイト<ウィキリークス>の創設者ジュリアン・アサンジの現在を追う

「今は激動の時代だ!」なんてね、でも変化の時のような気はします。変化はネットの世界で起こっているから、何が起こっているのかよく分からないですけど。世界は平等になると思っていたら、<GAFA>なんて企業が世界を支配しようとしているみたいでずっこけます。僕らの未来はどうもこういう大企業の奴隷になるということらしいです。

GAFA(ガーファ)とは、Google、Apple、Facebook、Amazonの総称。ここに、あのテスラなんかを作っているイーロン・マスクの会社も入ってくるんですかね。しかし、ビットコインのパスワードを忘れて、ビットコインが使えなくっているイーロン・マスクに支配されることはないでしょう。

そんなアメリカの大企業と張り合おうとしているのが中国の企業で、この戦いは中国という国がどうなっていくかによって決まると思うのですが、香港の民衆に負けているようでは、やっぱりアメリカの企業がどうなるか分からないですね。香港がベルリンの壁になる可能性も出てきたと思います。

香港と同じように、これからの民主主義の防波堤になると思われていたのが<ウィキリークス>です。ウィキリークスは、匿名による政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイト。その創始者であり編集長として知られるのが、銀髪の美青年ジュリアン・アサンジです。

彼は2019年4月にイギリスで逮捕されたので、一体いまウィキリークスはどうなっているんだろう? そもそもウィキリークスとは、ジュリアン・アサンジとは何だったんだろう? と、いまさらなんですが、アサンジのドキュメタリー『リスク:ウィキリークスの真実』(2016年)を観ました。

元CIAの内部告発者・スノーデンには“正義”があったが、アサンジは……?

いま見ると、逆にゾクゾクします。ジュリアン・アサンジって、良い人なのか悪い人なのか分からないように描かれていて、どんなミステリーを観るよりも面白いです。だからタイトルが“リスク”なのです。米政府の巨大な監視システムを告発した男を追う『シチズンフォー スノーデンの暴露』(2014年)の監督でもあるドキュメンタリー作家、ローラ・ポイトラスはリスクを抱えながら本作を撮っているのです。

ジュリアン・アサンジと関わることによって、ポイトラスは本当にFBIから反社会的なテロリストの一員とみなされました。ジャーナリストとして関わっていると思っていたのに、FBIからそんな認定を受けたら恐怖ですよね。エドワード・スノーデンを撮影している時はそんな感じにはならなかったのですが、ジュリアン・アサンジはどうも人を巻き込んでいく性質を持っているみたいです。そこも、このドキュメタリーの醍醐味なんですが。

『シチズンフォー』の時はアメリカ政府による、全ての民衆のプライバシーを侵害しているスパイ行為を告発したスノーデンという“正義”があったのですが、ジュリアン・アサンジって、正義なのか悪なのか、全く分からないのです。

ジュリアン・アサンジの一番の目的は、支配者(政府)が隠している情報を民衆に解放するということなんですけど、それによって命を危険にさらされてしまう人がいるわけです。それは諜報部員、スパイなので、仕方がないといえば仕方がないんですけど、人の命に関わることを、ジュリアン・アサンジという一人の人間が、どの情報をいつ流すか勝手に決めていいのか? という大問題があるわけです。ジュリアン・アサンジって、このドキュメンタリーを観ていると、完全に自分は神様とか悪魔になったような気がしてないか、と思えてくるのです。

人を支配する欲望に依存するって、典型的なシリアル・キラーのパターンなので、ジュリアン・アサンジがシリアル・キラーに見えてきます。ネタバレになりますが、ウィキリークスを運営しているスタッフの中にはセクシャル・ハラスメントで訴えられ、メンバーから外された奴がいるんですが、そいつも完全に人を支配する欲望に依存している感じなんですよね。

その男がコンピュータの使い方を指導しているシーンが出てくるんですが、女性に対する接し方が完全にヤバいんです。監督はそういうことを伝えたいのかな、というのが見ていて分かります。もちろん、訴えられている奴は「自分はそんなことしていない」と言っているんですが、映像を見ていると、やっぱりねと思わせる仕掛けになっています。

まるでカルト集団? ネット上に生まれた“自由”という宗教のために殉教する

ウィキリークスって、ジュリアン・アサンジを教祖としたカルト集団のようにも見えてくるんですよね。逃亡しているアサンジを、エクアドル政府は7年間も領事館に匿っていましたが、ついに2019年にイギリス政府に逮捕させたわけです。おそらく来年アメリカ政府に身柄が移されるのでしょう。そして、150年くらい刑務所にいないといけないことになるのでしょう。そういう感じも新しいカルト宗教の教祖のようです。自由という、ネット上に生まれた新しい宗教のために殉教するのでしょう。本人はそんなこと全く望んでいないのですが。

これからのネット社会はどうなるんだろう? と気楽な感じで観はじめたんですが、不思議なドキュメタリーでした。よくある自由についてのハッカーの物語だろと思うかもしれませんけど、長いこと人間の歴史で戦われてきた民主主義と自由についての物語の一部を見せられているような気がしました。

これを観た後も、やっぱりこれからのネット社会はどうなるんだろ? と思わずにはいられませんでした。僕ら凡人は、サイコパスみたいな人たちに支配されていくんですかね。

文:久保憲司

『リスク: ウィキリークスの真実』はNetflixで配信中

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『リスク: ウィキリークスの真実』

今世紀に入り何かと物議を醸している人物といえば、ウィキリークスの創始者、ジュリアン・アサンジ。ドキュメンタリー作家のローラ・ポイトラスが肉迫する。

制作年: 2016
監督:
出演: