全身麻痺の男にAIを搭載したら最強の戦闘マシーンに変身!『アップグレード』

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ライター:市川力夫
全身麻痺の男にAIを搭載したら最強の戦闘マシーンに変身!『アップグレード』
『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

どストレートなプロットながら80年代SFアクションの要素を見事にアップグレード!

妻を目の前で殺され、自身も全身麻痺となってしまったグレイ。しかし、彼はひょんなことから超高性能AIチップ“ステム”を体内にブチ込むことに。すると、不自由な身体が一変。元通りどころかキレッキレの戦闘マシーンへと“アップグレード”され、妻を殺した奴らへ復讐を開始する―。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

どうですか。この、どストレートなプロット。いかにも80年代後半のレンタルビデオ屋の隅に置いてありそうな親しみやすさ。「復讐サイボーグ 狼の鉄槌」みたいなタイトルで、毎夜アクション映画ファンの憂さ晴らしを担ってそうだ。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

でも、映画『アップグレード』(2018年)がすごいのは、単に80年代懐かしがり映画じゃないってところ。『ターミネーター』(1984年)をはじめ数々の80年代SF映画に影響を受けていながら、映画そのものも見事に“アップグレード”されている点。そのアップグレード具合は、キャラ造形と近未来描写のディテールの精巧さに見ることができる。

これはうらやましい! AIを体内に埋め込まれた主人公が最強の戦闘マシーンに変身!!

本作の近未来設定は絶妙で、社会情勢も科学技術も、すべてが今現在からほんの少しだけ進んでいる。ま、進んでいるといっても決して良い方向とは言えないのだけど。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

格差社会はぐんぐん進み、高層ビルのそばにはスラム。家事はAppleのSiriやAmazonのAlexaのように、話しかけるだけで済んでしまう。車はほとんどが自動運転で、デザインは今現在主流のカーデザインを極限まで煮詰めたようなダサさ。街中には警備用クローン偵察機が飛び交っている。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

それに反して主人公グレイは、“人の手”を信じるアナログ人間。味気のないAI時代を憂い、おしゃべりAIは大嫌いで、仕事は60年代のマッスルカーのレストア。そんな男が全身麻痺となり、最先端の技術によって復活するのだから皮肉にもほどがある。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

そしてさらに皮肉なことに、グレイの体内に埋め込まれたAI“ステム”は、グレイに話しかけてくる。よくある、頭の中に直接喋りかけてくる系。もちろん喋り方はAIらしくバカ丁寧で癪に障る。グレイも、本来なら「一生喋りかけるな!」と言うところだが、妻殺しの犯人探しにはステムの様々な機能は不可欠で……。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

この奇妙なバディ感は、グレイ役のローガン・マーシャル=グリーンの見た目がトム・ハーディそっくりなので、きっと観客全員が思うだろう。「あ『ヴェノム』だ……」と。これはまったくの偶然らしいので、不憫でしょうがなかった。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

で、そんなステムに身体の制御を任せると、グレイの身体は途端に人間離れした動きをみせる戦闘マシーンへと変貌。しかも、身体を動かしているのはあくまでAIなので、若干カクカクとした動きが実に戦闘マシーン感。さらに最初から手加減知らずのフルパワーで、相手の動きが止まるまでノンストップ残虐。実に羨ましい限りで、「頼む! 俺にもステム入れてくれ~!!」と思ってしまった。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

こんな映画が観たかった! ありそうでなかった燃える設定の数々に快哉!!

しかし、本作で筆者がもっともアガったのはグレイの“敵”たち。実は彼らもグレイ同様改造された人間なのだが、新型高性能のグレイに対して、敵たちは一世代前のバージョンだけど戦闘に特化した軍事用改造が施されている。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

それがまた、腕に開けられた穴に銃弾を装填し、手のひらから発射するという夢のような仕様で、思わず「これが観たかったんだよ!」と叫び出しそうになった。そう、本作はどこかで観たことがあるようでなかった、本当に観たかったものが観られる作品なのだ。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

そんなありがたい作品を作ってくれた監督は、『ソウ』シリーズ(2004年~)や『インシディアス』シリーズ(2010年~)の脚本家兼俳優で、いまや『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)『アクアマン』(2018年)などでハリウッド大作の中心人物となっているジェームズ・ワンの相棒としても知られる、リー・ワネルだ。

『アップグレード』© 2018 UNIVERSAL STUDIOS

今後はユニバーサル・ホラーのリブート版『透明人間』(公開日未定)と、ジョン・カーペンター監督『ニューヨーク1997』(1981年)のリメイクという大仕事が待っているが、本作『アップグレード』を観れば、その大役を任された理由がよくわかるはずだ。

文:市川力夫

『アップグレード』は2019年10月11日(金)より渋谷シネクイント、新宿シネマカリテほか全国公開

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『アップグレード』

近未来。グレイ・トレイスは妻のアシャと仲睦まじい日々を送っていた。しかしある日、謎の組織に襲われ、最愛の妻を失い、自身も全身麻痺の重症を負ってしまう。失意の中、巨大企業の科学者からある提案をされる。彼の目的は、実験段階にある「STEM」と呼ばれる最新のAIチップを人体に埋めることだった。手術の結果、グレイは再び体を動かすことができるようになる。そればかりか、「STEM」に身をゆだねると人間離れした動きができるようになり、人間を超越した身体能力を手に入れてしまう。さらに、「STEM」は頭の中の相棒としてグレイと対話するようになる。身体能力を<アップグレード>されたグレイは手に入れたこの力を駆使して「STEM」と共に妻を殺害した組織に復讐を誓うのだがー。

制作年: 2018
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