時代を先取りしすぎたオルタナバンド、L7のドキュメンタリー『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』

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ライター:BANGER!!! 編集部
時代を先取りしすぎたオルタナバンド、L7のドキュメンタリー『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』
『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』© 2017 BLUE HATS CREATIVE, Inc. All Rights Reserved.
90年代のハチャメチャな米音楽シーンを駆け抜けた4人組ロックバンド、L7のドキュメンタリー映画『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』が、新宿シネマカリテにて3週間限定公開中! 破天荒な言動の裏に秘めた苦悩や葛藤、そしてバンド崩壊から奇跡のリユニオンまでを、当時の貴重な映像とともに振り返るロックファン必見の痛快ドキュメンタリーだ。

退屈なインタビューほぼナシ! 90年代の貴重な映像が満載

© 2017 BLUE HATS CREATIVE, Inc. All Rights Reserved.

米ロサンゼルスで結成されたL7は、ギター/ボーカルのドニータ・スパークスとスージー・ガードナーを中心に、ベースのジェニファー・フィンチとドラムのディー・プラカスを基本メンバーとして1985年~2001年まで活動した、女性4人組ヘヴィロックバンドだ。不思議なバンド名の由来は、指でLと7を作ると四角になる=“スクウェア(堅苦しい)”だったと記憶している。

おそらくドンピシャ世代は現在30代後半~40代半ばくらいだろうか。90年代のいわゆるグランジムーブメントの中核を担うバンドの一つとして世界的な成功を獲得し、過去に2度ほど来日公演も行っている。ちなみにその時の対バンはHi-STANDARDとSUPER JUNKY MONKEYだったので、いま思うとめちゃくちゃ豪華だ。

そんなL7のドキュメンタリー映画が『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』である。監督は、<WTO(世界貿易機関)>を徹底的におちょくる社会派コメディドキュメンタリー『ザ・イエスメン』を手がけたセーラ・プライス。『イエスメン ~大資本と戦うお笑いテロリスト~』は日本では「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」で放送されたっきりだと思うが、この監督の視点を意識して鑑賞するのもアリだろう。

さて、肝心のドキュメンタリーの内容だが、まず99%当時の映像(+メンバーのナレーション)で構成されているのが嬉しい。インタビューや証言コメントだらけのドキュメンタリーは退屈だ。それにしても、こんなしょうもない映像よく撮って(残して)たなあ、といったものも含め、90年代アメリカのロックシーンの狂騒っぷりが伝わってくる貴重な映像が満載なので、L7ファンでなくとも思わず身を乗り出してしまうのでは。

カート・コバーンやイアン・マッケイらも登場! 女性の権利を求めて戦ったL7

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本作の貴重な映像の中には、当時の<SPIN>誌にニルヴァーナ、ホワイト・ゾンビ、ティーンエイジ・ファンクラブ、スーパーチャンクらが取り上げられた号を見せながら「ムカつく! 友達ばっかり。私たちは!?」とメンバーが笑う、当時のリアルな交友関係が垣間見える微笑ましいシーンもある。出自はメタル畑ながら90年代に入るとグランジ一派に括られるようになり、他にもフェイス・ノー・モアやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなどとも仲が良かったようだ。

さらにL7は、主に女性が中絶する権利を奨励するライブイベント「ロック・フォー・チョイス」を91年から主催していた。このチャリティーには、ニルヴァーナやホール、レッチリ、マッドハニー、パール・ジャム、ビースティ・ボーイズ、フリー・キトゥン、そしてジョーン・ジェットやイギー・ポップなど、すさまじいメンツが趣旨に賛同し出演。中でもフガジとビキニ・キルが出演したライブは、ハードコアパンク好きにはお馴染みのポジティブ・フォースDCとの共催だったようで、イアン・マッケイと冗談を言い合うレアな映像も拝める。このあたりは『Salad Days: A Decade of Punk in Washington, DC (1980-90)』と併せて観ると面白いかもしれない。

今となっては信じられないが、当時の日本ではL7がフェミニスト的な視点で紹介されることはほとんどなかったように記憶している。お下劣ネタもいとわない赤裸々なキャラクターだったからなのか、単に当時の日本ではそういった意識が浸透していなかっただけかもしれないが。ともあれ本作では、リディア・ランチ(Teenage Jesus and The Jerks)にはじまり、Xのエクセンヌ、ガービッジのシャーリー、ヴェルーカ・ソルトのルイーズ、7・イヤー・ビッチのヴァレリー、CSSなどなど、錚々たる面々がL7のフェミニストとしての存在感を証言している。

メジャーレーベルの圧力、過酷なツアー、そしてカートの死

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L7の1stアルバムは<エピタフ>から、2ndは<サブ・ポップ>から、そして3rd~5thはワーナー傘下の<スラッシュ>からリリースされ、メジャー流通に乗って世界中に支持層を拡大。とはいえ、ビルボードチャートTOP10に食い込むようなシングル曲があったわけでもなく、バンドは収支のバランスを失い徐々に疲弊していく。

歓待を受けたブラジル公演の様子はメタリカの1991年モスクワ公演かと見紛う規模なのに、当時のメンバーは月に各数百ドルのギャラを確保するのが精一杯だったというのだから、メジャー契約の暗部ここに極まれりといった感じだ。

しかし、想像を絶するヒットをきっかけに制御を失い崩壊していったニルヴァーナとは違い、(望むと望まざるとにかかわらず)少し外側からムーブメントを俯瞰していた彼女たちは、従来のポジティブさもあって最悪の展開は免れたのかもしれない。実際、印税のモメごとをあっけらかんと語り、楽屋やホテルの部屋で無邪気にはしゃぐ姿を見るに、ツアーもプロモーションもMV撮影も総て楽しんでいたようにも思える。

多くのアーティストと同じくドラッグに依存した時期もあったが、友人カートの死は当然ながら大きな衝撃だったようで、それが一線を越えるのを踏みとどまらせたのだろう。それでもメジャーレーベルからの売上に対する圧力やバンドの資金難はかなりのストレスで、順調に思えたL7の歯車はゆっくりと軋んでいく。KISSら超大物と共演しているのにレーベルから契約を切られるなんて!? 当時のL7に必要だったのは、身の丈に合ったヘルシーなバンド運営だったのかもしれない。

過激パフォーマンス再び!? 20年ぶりの新作を準備中

ともあれ本作を観れば、L7を聴いたことがなかった人も彼女たちのことが大好きになるはず。イギリスのTV番組でドニータが下半身をモロ出しした事件や、92年に出演した<レディング・フェスティバル>での“使用済みタンポン放り投げ”など、カッコよすぎる逸話が満載である。

「Fast And Frightening」(2ndアルバム『Smell the Magic』収録)の“Got so much clit she don’t need no balls(立派な女性器があるからタマなんか要らねえ”」という有名な歌詞はもちろん、ジョン・ウォーターズ監督の『シリアル・ママ』(1994)に架空のバンドCAMEL LIPSとして出演した話も出てくる。念願の<ロラパルーザ>に出演するもショボいステージをあてがわれ、隣の楽屋だったニック・ケイヴとヤケになって乱痴気騒ぎをしたというエピソードは悲しくも最高だ。

そしてL7は2015年にオリジナルメンバーで再結成を果たし、ニューシングル2曲をリリース。さらに20年ぶりとなるニューアルバムもリリース目前(予定)である。今で言えばプッシー・ライオットばりの過激なパフォーマンスで時代を先取りしていたL7が再結成してくれた、その決断を嬉しく思うと共に、やっぱりバンドは活動してるときに精一杯サポートしなきゃダメだなと思わされた……ので、みんな行ける時にライブに行っておこう! 特にバンドやってる人は無理してでも海外アーティストのライブ行けよな! アイデア色々もらえるぞ!! と個人的には思う。

『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』は12月15日(土)より新宿シネマカリテにて3週間限定公開、ほか全国順次公開中。

『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』公式サイト

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