「ゾンビなら、ローキックで足を止めて倒します」ケイン・コスギが“遠隔熱演”した妖怪ホラー『ブロート』を語る!
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
ケイン・コスギが『ブロート ~河童は、もう中にいる~』を語る
これは“カッパのホラー映画”である。カッパ(河童)が登場するホラーと聞いただけで、気の抜けた印象を持たれるかもしれない。
しかし『ブロート ~河童は、もう中にいる~』は、真面目に作り込まれたスクリーンライフ・ホラーだ。
それは、楽しい家族旅行のはずだった――ジャックは日本行きを計画したものの、軍務で自分だけ行けず、妻と二人の息子が旅立つのを見送る。旅先の様子は、スマホやPCの画面越しに届くのみ。遠く離れた地で次男のカイルが川で溺れかけたのも、その小さな画面の向こうでの出来事だ。
だが、溺れたことで息子は、何かが変わってしまった。
そして、答えを求めて検索窓に言葉を打ち込み続けるジャックが行き着いたのは、河童の伝説だった――。
ジャックに頼られ、日本で河童の謎を追う旧友ライアンを演じたのがケイン・コスギだ。ところが本人は「ホラー映画は怖くて映画館では観られない」という。でも、ホラーゲームは大好きで……?
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
「昔『カクレンジャー』に出てきた、緑の河童のイメージしかなかった」
――日本を舞台にした海外制作のホラーは珍しいですね。今回のオファーを受けた経緯について教えていただけますか?
日本で普通にオーディションを受けました。最初に「ホラー映画の役があるけど受けますか」と聞かれたとき、何でも挑戦してみたかったし、ホラーには出たことがなかったので、ぜひやりたいと思いました。アクションもほぼなくて、自分にとっては今までにないキャラクターでしたから。
――数あるジャンルの中で、ホラーに挑戦しようと思った理由は?
僕はホラーゲームが好きなんです。「バイオハザード」とか……日本のホラーゲームがすごく好きで。だから、日本の河童というキャラクターを海外の人がホラー映画にする、というところにすごく興味がありました。今までなかなかなかったですよね。
海外では日本のホラーがすごく人気があるので、逆に海外の目から日本のモンスターを見たらどうなるのか、面白いなと思ったんです。
――実際、河童がちゃんと怖く描かれていますね。
最初に台本を読んだときは、あの緑の河童がそのまま出てきて、コメディ映画になっちゃうのかなと思うくらいでした。(笑)。昔、『カクレンジャー』に河童が出てきた、あの緑のイメージしかなかったので。
撮影中も怖いシーンが全然なくて、普通のシーンしか撮っていなかったんです。完成して初めて、ちゃんと怖くしているんだなと分かりましたね。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
――撮影中はイメージだけで演じていたということですか?
そうですね。多く出演してきたアクション映画ならば、その場で戦って、結果がだいたい分かる。でも今回は「ここが怖いところ」「ここで何かが出てくる」と、全部イメージしながら演技するしかない。撮影も本当に今までと全く違いました。
――ライアンという役はどう作っていきましたか? 兵士である主人公ジャックの元同僚という設定ですが。
とにかく今までと違う、明るいキャラクターなんです。監督からは、主演のベン(・マッケンジー)とは違う感じで、「本当に友達を助けたい、でも目標ができてちょっとウキウキしている感じを出してほしい」と言われました。最近は暗い役や悪役が多くて、怖いキャラクターばかりだったので、こんなにいっぱい喋る明るい役は初めてでした。
――作品全体は暗いトーンなのに、ライアンだけが元気ですよね。
だから逆に合わないかな、と思ったくらいです(笑)。ライアンは昔、ジャックとずっと一緒にやってきた軍人仲間で、普通の生活に戻って少し飽きていたんだと思うんです。そこに昔の仲間を助けるという差し迫った任務ができたから、ちょっとウキウキしている。そう解釈しました。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
「日本での撮影は、ほぼ僕一人。アフレコも“iPhoneで自分の声を録って”と言われて…」
――作中では、河口湖の七夕に河童の伝説があるという設定です。海外のスタッフやキャストの皆さんは、河童をどういう存在として理解していたのでしょう。
監督が日本の伝説やキャラクターにすごく詳しくて、全部説明してくれました。河童ってこういう存在なんだ、と僕も初めて知りました。毎回シーンの前に丁寧に説明してくれたので、すごくやりやすかったですね。
――脚本を読んだとき、どこに面白みを感じましたか。
僕の友達もみんな日本のホラー映画が好きで、『呪怨』や“貞子”は海外ですごく人気があります。日本のホラーは、アメリカのテイストとは全然違うんですよね。たぶん、ドキッとさせる時間やタイミングが違う。だから日本のキャラクターを海外風に撮ったらどうなるか、すごく興味がありました。インターネットを使った作りもうまいなと思いました。それでね……実は主役のベンさんとは一度も会っていないんですよ(笑)。
――全部、スクリーン越しですか?
そうです。日本での撮影は、ほぼ僕一人でした。海外のパートを先に撮ってあったので、それを見ながら演技したんです。アフレコも初めての感じで、「iPhoneで自分の声を録ってください、それで十分です」と。ザラザラした感じでいいから、ちゃんとした音はいらないって。
それで、マンションの中だとちょっとまずいかなと思って、車まで行ってずっと一人で叫んでいました。「うわぁ!」って(笑)。本当にこれだけでいいんですか? と聞いたら、「それでいいですよ」って。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
「ホラーゲームは好きだけど、ホラー映画は怖くて観られない(笑)」
――冒頭、東京にやってくる渋谷のシーンはゲリラ撮影ですか?
ゲリラ的に撮ったところもあるし、別の場所で撮ったところもあります。出演シーンはほぼ一人ですね。お寺のシーンはお坊さんがいましたが、あとは監督とスタッフと僕だけでした。
――なるほど。では、ホラーゲームが好きになったきっかけは?
もともとゲームが昔から好きなんです。でもホラー映画は結構苦手で。ゲームだと怖いけれど、それよりもクリアしたい気持ちが強いから、恐怖を乗り越えられるんですね。映画館ではなかなか観られないです、怖くて(笑)。
――ご自身が出演したことで、ホラーが少し身近になりましたか?
今までにない映画に出られて、本当によかったし、ラッキーだったと思います。それがホラーというジャンルだったのもすごく嬉しかったですね。演じているときは全然怖くなかったのに、完成したものを観たら「こういう感じになるんだ!」とびっくりしました。
――怖いものを楽しむ感覚に気づいたのはいつ頃ですか?
普段は、いつもどこか構えている気がするんです。日本語もネイティブではないので、一回全部考えてから話している。だからホラーを観て「わっ!」となると、スッキリするんです。終わった後に、逆にリラックスする。ストレス発散ですね。冷たい水にずっと入っていると体に力が入るけれど、出た後は体温が上がって、筋肉も緩んで気持ちいいじゃないですか。そんな感じです。
――身体の感覚が基準になっているんですね。
ずっと体を動かしているので、ちょっとした緩みが自分にとって回復の時間なんです。映画を観て感動して泣くときもリフレッシュして、また頑張る気持ちが出てくる。ホラーもずっと緊張して観て、終わった後にリラックスの瞬間がある。それがいいんですよね。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
「ゾンビなら全然なんとかなります。ローキックで足を止めて、倒します(笑)。」
――ジャンルを問わず、観た後に一番気持ちが動いた作品は?
『バックドラフト』(1991年)です。一番好きな映画ではないけれど、一番印象に残っています。高校生のとき、次の日に大事なテストがあったのに、どうしても初日に観たくて、遅い時間の回に行ったんです。本当に感動しました。それまでアクション俳優になることしか考えていなかったけれど、観た後は「消防士でもいいかな」と思ったくらい。俳優以外で唯一なりたいと思った職業です。憧れも、かっこよさも、全部入っている作品でした。
――ちなみに、私も同い年で、同じタイミングで観ています。
本当ですか! あの映画は自分の中ですごく衝撃的で、カート・ラッセルがカッコいいですよね。
――トラウマになった作品はありますが?
小さい頃にスティーヴン・キングの『ペット・セメタリー』(1989年)を観て、それがトラウマになって、ホラーが苦手になりました。チャッキー(※『チャイルド・プレイ』)とかは全然大丈夫なんです。怖いというより、面白い。
――おかしみがあると大丈夫だけど、何のおかしみもなく来られるとつらいですよね。ほかに「これは怖い」というものは?
虫が苦手です。動きがダメなんですね。テントウムシは大丈夫。蝶々も怖くはないけど、触れない。セミは全然、捕まえられないです。
ホラー映画も、子どもや女の子が出てくるとさらに怖い。ゲームでも、ゾンビとか男性っぽいモンスターはそこまで怖くないんですけど、女性や子ども、人形は怖いんです。チャッキーは大丈夫ですけど(笑)。病院や学校が出てくるのも怖いですね。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
――殺人鬼が襲ってくるタイプはどうですか?
大丈夫です。『13日の金曜日』とか『ハロウィン』とか、そこまで怖くない。海外のホラーはそういうのが多いので、だから海外の人が日本のホラーを観ると怖いんだと思います。貞子みたいにテレビから出てくるとか、いろんなところから出てくるのはヤバいですね。『ポルターガイスト』も子どもの頃は怖かった。テレビとか子どもとか、身近なところから来るものが怖い。
――番組などで無茶な挑戦もされていますが、高いところは?
高いところは大丈夫です。体でこうすれば怪我しない、ここを気をつければ大丈夫、と自分でなんとかできるので。でも虫やモンスターは、自分ではコントロールできないですから。
――では、ゾンビが走って襲ってきたら?
ゾンビなら全然なんとかなります。ローキックで足を止めて、倒します(笑)。
――『バイオハザード』のリッカーが来たら?
リッカーは音を立てちゃいけないから、静かにやり過ごします。あれは強すぎて、蹴りを入れても倒せないです(笑)。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
「観終わった後に“え、あれケインだったの?”と言われるような役がやりたい」
――今回の作品は、河童とはいえ呪いの要素が強いですよね。人の恨みや土着的なものはどうですか?
ああいうのがさらに怖いんです。ブラッド・ピットの『ワールド・ウォーZ』みたいなゾンビは、ただ追いかけてくるだけで、倒せば終わる。でも呪いは、倒しても復活しそうだし、次がまた来そうな感じがする。そこが怖いんですよね。
――聞きづらいのですが、河童に挑む直前、ケインさんが長らくCMを務めていた商品を手にしますよね。あれは狙いですか。
あれは監督が、わざわざコンビニに買いに行って持ってきてくれたんです。僕からではなくて、「いいんですか?」という感じでした。なぜか戦う前に飲むんですよね(笑)。本当にびっくりしました。
――これから、という場面なのに思わず笑ってしまいました。
日本人が観たらおかしいですよね。さっきおっしゃった、ちょっとホッとする場面を入れたかったんじゃないでしょうか。海外の人が観てもたぶん分からないので、日本のお客さんへのサービスだと思います。
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
――今後またホラーに出るとしたら、どんな役をやってみたいですか。
一度モンスターやゾンビ役をやってみたいですね。特殊メイクをして、誰だか分からないくらいの怖いもの。観終わった後に「え、あれケインだったの?」と言われるような役がやりたいです。
――『バイオハザード』のレオンのようなヒーロー役は?
最近は悪役が多いですけど、ヒーローじゃないものがやってみたいですね。モンスターや悪役が好きなんです。フレディみたいな感じもいいし、ちょっと狂ったクレイジーな人でも全然いいです。
――『ウォーキング・デッド』のニーガンのような?
いいですね(笑)。
――最後に、本作の「ここを観てほしい」という場面を教えてください。
主役のベンの家族愛ですね。息子への、家族への愛がすごく伝わってくるんです。画面越しの演技が多かったけれど、緊張感があってよかったと思います。もちろん河童や日本のテイストを、日本の人がどう思うかもすごく興味があります。
海外の人が撮った作品なので100%日本の映画ではないけれど、日本のテイストも入っている。日本人が作るホラーとは少し違う海外タッチの、不思議な感じのホラーになっているので、ぜひ観てください。きっと観終わった後、リラックスできると思います。
――ホラーなのに、観終わるとサウナのように整う、と。ありがとうございました!
ケイン・コスギ
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』©2024 Bazelevs Entertainment Limited All Rights.
蹴りでゾンビは倒せても、呪いは倒せない。そう笑うケイン・コスギが、画面の向こうで河童に挑む。恐怖で強張った体がふっと緩む、その瞬間を味わってほしい。
取材・文:氏家譲寿
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』は10月2日(金)よりDVD発売&デジタル配信中
『ブロート ~河童は、もう中にいる~』
イスタンブールに駐留し、家族と離れて暮らす軍人ジャック。休暇で日本を訪れた妻ハンナと二人の息子を、思わぬ事故が襲う。湖で次男カイルが何者かに水中へ引きずり込まれ、溺れかけたのだ。一命は取り留めたものの、帰国後のカイルは水を異様に求め、奇妙な言動を繰り返す。やがて一家の周囲では、説明のつかない現象まで起こり始める。オンライン通話や監視カメラ越しに異変を目撃したジャックは、調査の末、人を水底へ引き込み魂を奪う妖怪「河童」の伝説にたどり着く。息子の内に潜む邪悪な存在が家族をのみ込む前に、遠く離れたジャックは世界を隔てる距離を超え、未知なる恐怖へ立ち向かう決意を固める。
監督・脚本:パブロ・アブセント
製作:ティムール・ベクマンベトフ
出演:ベン・マッケンジー(「The OC」シリーズ)、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ(『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』)、ケイン・コスギ(『ローグ アサシン』) ほか
| 制作年: | 2025 |
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2026年10月2日(金)よりDVD発売&デジタル配信中