異種格闘技戦映画として見る『イップ・マン』シリーズの魅力

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ライター:橋本宗洋
異種格闘技戦映画として見る『イップ・マン』シリーズの魅力
『イップ・マン 継承』©2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.
宇宙最強の男ことドニー・イェンの代表作『イップ・マン』シリーズ最新作クランクアップのニュースが報じられた。ということで、いち早い日本公開が待たれる『イップ・マン4(仮)』に備え、格闘技ライター・橋本宗洋氏が同シリーズを解説してくれたぞ!

『イップ・マン』シリーズを見たら「木人ほしい」となるのが当然

『イップ・マン 継承』©2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

ドニー・イェンの人気シリーズであり、格闘アクション映画全体で見ても最高峰の一つと言えるのが『イップ・マン 序章』、『イップ・マン 葉問』、『イップ・マン 継承』の3作だ。今年、最新作も撮影されたということで、世界中の映画ファンがドニー演じる詠春拳の指導者イップ・マンをいかに愛しているかが分かる。

当然、見どころは“宇宙最強”とも呼ばれるドニーのアクションなのだが、このシリーズは闘いに至るまでの“静”の佇まいも大きな特徴だ。格闘シーンも、詠春拳らしく接近戦での手技がメイン。必要最小限の動きで敵を倒すカッコよさである。それでいて顔面バチバチに殴るし関節バキバキに折りまくるわけだが。

『イップ・マン 葉問』でのサモ・ハン戦、『イップ・マン 継承』でのマックス・チャン戦という超絶クンフーバトルは迫力、美しさ、精神性、ファンタジー性あらゆる面で涙が出るほど素晴らしい。また木人を使った稽古の場面も印象的で、これは真似したくなる魅力抜群だ。

アクションものに限らず、エンターテインメント映画というのはファッション、ポージング、セリフ、何かしらで「真似したい!」「俺も(私も)やってみたい!」と思わせることが重要なポイント。要は『ロッキー』シリーズ見たら、みんな走ったり腹筋したりするってことだ。『イップ・マン』シリーズを見たら「木人ほしいな。ウチに置けるかな。てか売ってるのか?」となるのが当然。私はなった。

イップ・マンの闘いには勝利の“ロジック”がある

『イップ・マン 継承』©2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

もう一つ、本シリーズの大きな見せ場となっているのが“異種格闘技戦”だ。『序章』ではvs空手、『葉問』ではvsボクシング、『継承』ではドニー・イェンvsマイク・タイソンという超ド級のマッチアップが実現してしまう。

「空手と柔道が闘ったらどっちが強いんだ」「プロレスこそ最強の格闘技」「やっぱ相撲の横綱って強いんじゃないの?」という思い。また自分とは違う技術体系、つまり違う武器を持った敵とどう闘うかという思考も含め、“異種格闘技”は永遠のロマンと言っていい。そのロマンにストレートに応えてくれるのが、ドニー・イェン=イップ・マンというわけだ。しかも闘い方が実にロジカル。梶原一騎の漫画のように“勝つ理屈”がそこにある。ただなんとなく勝ったとか、気合いで勝ったとか、そういうことではないのが流石。

とりわけvsボクシングは真骨頂だ。グローブ着用の相手に対し、素手のイップ・マンはガードの隙間を縫ってアッパーを決める。普通のボクシングマッチならグローブの厚みで通らない隙間も、異種格闘技戦なら通る。そのロジックが“強い”。さらにヒジ、指先での打撃とボクシングにはない攻撃が『葉問』では見られる。

『継承』でのタイソン戦は素手vs素手。タイソンが現役時代同様の構え(ピーカーブースタイル)を見せるだけで嬉しくなってくるが、イップ・マンはモハメド・アリ戦のアントニオ猪木ばりに下半身から攻撃。タイソンの強烈なパンチはヒジで迎撃していく。ヒジの先端は非常に固く、まともに激突すれば拳を負傷する可能性も。つまりイップ・マンのヒジはディフェンスでもありオフェンスにもなっているのだ。ちなみにこの一戦は決着の落とし所も最高。

このように、『イップ・マン』シリーズは主人公はじめ登場人物がなぜ強いか、どう強いか、なぜ勝ち、負けたのかにしっかりとした理由づけがなされている。もちろんその背景には怒りや愛や友情があるのだが、技術的説得力も抜群だからこそ名シリーズとなっているのだ。

文・橋本宗洋

『イップ・マン 序章』CS映画専門チャンネル ムービープラスにて12月18日ほか放送
『イップ・マン 葉問』CS映画専門チャンネル ムービープラスにて12月18日ほか放送

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