バート・レイノルズの一周忌に最後の主演作が公開 自分まんまの“元映画スター”を演じたホロ苦ドラマ『ラスト・ムービースター』

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ライター:市川力夫
バート・レイノルズの一周忌に最後の主演作が公開 自分まんまの“元映画スター”を演じたホロ苦ドラマ『ラスト・ムービースター』
『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

 

2018年の9月6日、82歳でバート・レイノルズがこの世を去った。バート・レイノルズといえば、70年代に活躍したアメリカ映画のスーパースター。実にタフガイなボディ、キュートな垂れ目、朗らかな笑顔、遊び人風な軽妙さ……アメリカンなかっこよさを煮詰めたような俳優だった。

そんなバート・レイノルズの俳優人生を、そっくりそのまま映画にし、主人公をバート・レイノルズ自身が演じた作品が『ラスト・ムービースター』だ。

『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

元映画スターの老俳優をバート・レイノルズがヨボヨボ演じる!

本作でバート・レイノルズが演じるのは、かつての映画スターであるヴィック・エドワーズ。ハリウッドで酸いも甘いも知り尽くした彼は、いまはだだっ広い豪邸にひとりで暮らしている。もう過去の人なので、ひとりでスーパーに行っても誰も見向きもしない。棚に手を伸ばすだけでも「んあ」とか言っちゃう、ただのヨボヨボ爺さんだ。

『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

あるとき彼のもとに、一通の招待状が届く。地方映画祭でヴィック出演作の回顧上映が組まれ、特別功労賞が授与されるらしい。かつてはクリント・イーストウッドや、ジャック・ニコルソンにも贈られた賞だとか。友人に相談すると「国際ナッシュビル映画祭? そりゃお前、歴史と権威ある映画祭だ。ちやほやされてこい」とのこと。

『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

そんなわけで出向いたテネシー州ナッシュビルだが、空港に迎えにきたのはリムジンではなく塗装の剥げたオンボロの乗用車! その車から降りてきたお付きの運転手は、ホットパンツと鋲ジャンにわがままボディを押し込んだ鼻ピアスなパンクギャル! そして車に乗せられ、まずは一流ホテルにチェックインかと思いきや、着いたのは激安モーテル! 荷物を置いて会場に着くと、そこは町外れの小汚いバー! 集まっていたのはスマホ片手にデリカシーのかけらもないまま一方的に興奮を伝える映画オタク! バーの床に敷かれたレッドカーペットはおよそ2メートル! 劇場はバーに併設されたライブ会場で、大型テレビほどのこじんまりなスクリーン!

『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

というわけで、ただの映画オタクの集いに参加してしまったかつての大スターなのだったが、この映画は不憫な大俳優の災難を笑う作品ではない。回顧上映を抜け出したヴィックは、お付きの運転手のパンクギャルとともに、ナッシュビルからほど近い生まれ育ったノックスビルに出向き、間違いだらけだった人生を回顧する苦い旅に出る。

『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

タランティーノもリスペクトする名優レイノルズの半生とシンクロしたほろ苦ドラマ

ヴィックの人生は、バート・レイノルズ自身の人生と被っている。元アメフト選手だったこと、数回の結婚、離婚を繰り返したこと。元スタントマンという設定は、1978年のバート・レイノルズ主演作『グレートスタントマン』からかもしれない。そんなヴィックが自問自答するシーンでは、なんと『脱出』(1972年)、『トランザム7000』(1977年)の映像に合成し、若かりし頃のバート・レイノルズとおじいちゃんレイノルズが共演している。

『ラスト・ムービースター』©2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

そういえば『グレートスタントマン』でも、過去の栄光として『脱出』を観ているシーンがあったんだった。そんな『グレートスタントマン』の監督は、バート・レイノルズのお抱えスタントマンだったハル・ニーダム。彼は現在公開中の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でブラッド・ピットが演じるスタントマン、クリフ・ブースのモデルだ。

そしてバート・レイノルズは『ワンス~』に出演予定だったが、撮影前に亡くなってしまった。映画愛という部分では『ワンス~』にも通じるものがある本作。『ワンス~』にグッと来た方は、バート・レイノルズ出演作を予習してから観ると、よりいっそう楽しめるはずだ。

文:市川力夫

『ラスト・ムービースター』は2019年9月6日(金)より一周忌に捧ぐ全国ロードショー

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『ラスト・ムービースター』

かつて一世を風靡した映画界のスーパースター、ヴィック・エドワーズのもとに、ある映画祭から功労賞受賞の招待状が届く。歴愛受賞者がデ・ニーロやイーストウッドだと聞いてしぶしぶ参加したものの、騙しに近い名もない映画祭だと知り、憤慨。だが、会場はエドワーズの生まれ故郷に近く、過去の思い出が甦り、人生を振り返ってある行動を起こす。

制作年: 2017
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