草彅剛「主人公の小鉄は、僕が演じたクズ男史上で一番どうしようもない男」『台風家族』を監督と語る!

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ライター:石津文子
草彅剛「主人公の小鉄は、僕が演じたクズ男史上で一番どうしようもない男」『台風家族』を監督と語る!

 

草彅剛主演映画『台風家族』が紆余曲折を経て、ついに2019年9月6日(金)より3週間限定で公開されている。ということで前編に続き、草彅と市井昌秀監督のインタビュー後編をお届け! 二人の作品に懸ける熱い想い、そして意外な裏話を存分に語ってもらった。もちろん後半も、草彅剛は熱いぞ!

監督が自慢するんですよ、“俺の本は緻密に書かれてる”って(笑)

草彅剛、市井昌秀監督

―作品冒頭の回想シーンで、草彅さんが「ユズキ」って娘の名前を言うだけで、この映画の世界が見えてきました。最初のシーンですっかり『台風家族』に入り込んでしまったのですが、監督と草彅さんの間ではどんな話をされていたんですか?

草彅:あれは初日に撮ったんですが、監督からモワモワした熱気がもう出ていて。監督は寝てないのか、酒を飲みすぎたのか(笑)、目がものすごく充血してました。気合いが入っていたのかもしれないですね。

一鉄(一家の父・藤竜也)がおこした銀行強盗によって家族が崩壊する、という負のオーラで映画が始まる中、マスコミに責め立てられる小鉄(息子・草彅剛)を見て、まだ反抗的になる前のユズキ(小鉄の娘)が「パパをいじめるな!」と言う。短いけれど、家族のトラウマや確執などが集約されているシーンですよね。僕が演じる小鉄は記者たちに囲まれるんですが、記者役の人たちがグイグイ来て、本物みたいで。僕が入る前から何度も緻密にリハーサルをやっていて、圧がものすごいの(笑)。

市井:初日って、そんなに打ち合わせしなかったですよね。どちらかと言うと、圧をかけることで“草彅さんの小鉄”が生まれるという感じで。

草彅:そういう熱さが、「ユズキ」ってセリフに表れているのかもしれない。

草彅剛、市井昌秀監督

―あのシーンは素晴らしかったです。

草彅:監督は「緻密に計算しているから」みたいなことを言ってましたよ。

市井:そんなこと言いました?

草彅:言ってましたよ。

市井:そんなこと言ったんだ……(笑)。

草彅:ちょっとふざけてるような軽いセリフも、実は監督の中で緻密に練られているというか。でも押し付けがましくなくて、なんかこうスッと入ってくるんです。実際、「台風家族」という小説(※)も監督は書かれていて。まだ読んでないんですが、初日までには読みますから!

(※市井点線 名義。監督の妻・市井早苗氏との共著)

―原作がある『まく子』(2018年)の時も、今のようなことをおっしゃってましたよね(笑)。

草彅:そうなんだよね! でも初日までには読んでおこうと思ってて。『台風家族』は脚本も厚かったけど、それがあの小説に凝縮されているはず。監督が自慢するんですよ、「俺の本は緻密に書かれてる」って(笑)。

市井:そんなこと言ってないですよ~(笑)。

今までもクズ男を演じてきたけど、『台風家族』の小鉄は僕史上一番どうしようもない男

草彅剛、市井昌秀監督

―私は前回、草彅さんに取材したのが、6年前の韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭で、それ以来なんです。

草彅:『中学生円山』(2012年)の時ですね。もう6年も前なのかあ。

―市井監督にも、韓国の釜山国際映画祭でお目にかかっていて。それは11年前でした。

市井:『無防備』(2008年)で行った時でしたか。

草彅:ご縁がありますねえ。じゃあ『台風家族』でも韓国行きましょうか?

市井:行きたいですね。釜山、行きたいなあ。

草彅:韓国料理、食べたいね。最近、韓国に行っていないので。

―海外でも受ける作品なのでは、と思います。

草彅:そうだといいですね。でも、まずこの映画は公開できたことが何よりなので。だから、まずは日本の皆さんに届けられることが幸せですね。

―鈴木家の家業が葬儀屋さんという設定は、どこから生まれたんですか? 監督のご実家がそうだったんですか?

市井:実家は違うんですが、家族の話に、冠婚葬祭のお仕事の緊張感を絡めたらいいのでは、と思って葬儀屋さんにしたんです。12年前にアイデアを思いついたとき、葬儀屋さんにバイトにも行きました。

草彅:それはすごい。

市井:霊柩車の動かし方とか、いろいろ覚えました。自分の家族のことも投影していますが、遺産相続の話はフィクションですよ(笑)。

市井昌秀監督

―とても独特なお話ですが、草彅さんが脚本を最初に読んだ印象はいかがでしたか?

草彅:めちゃくちゃ面白いし、今までもクズな男の役はやってきましたが、小鉄という役は、僕史上一番どうしようもない男だな、と。しつこい奴だなあ、って(笑)。なんというか、そこに“気持ち悪さ”みたいなものがあって、これはすごくやり甲斐があるぞ、と最初は思いましたね。

市井:そうでしたか!(爆笑)

草彅:家族にあそこまで説得されたら、普通だともう少し早く折れそうな感じがするんですよ。でも、かたくなに「親父のことは許さない」ってネチネチと言っている感じが、「もういいじゃないか!」と言いたくなる(笑)。でも、そこが気持ち悪くて逆にいいんですよね。あのしつこさが最後に効いてくるわけなんですけど、気持ち悪くもあり、すごく魅力的な役だと思いましたね。

出演者は皆すごく演技が上手で、演技や感情の“ぶつけ合い”を思い切りやれた

草彅剛

―ほぼワンシチュエーションの1日のお話ですが、草彅さんは演じてみて、その点はいかがでしたか?

草彅:僕、結構好きなんです、そういう設定。ワンシチュエーションで、セリフのやり取りで進んでいくというのは、感情も入りやすいですし。移動する良さもあるけれど、舞台と近いというか。舞台とは少し違うけれども、その場から動けないが故に生まれてくる感情とか、それが表に出てしまうことの面白さってあると思うんです。一回ことが進んだら、なかなか目が離せなくなるのが、ワンシチュエーションものの良さなので。現場である一軒家の造りも、YouTuberがどこにいたのか? とか、一見してわかりやすいし、観客の心を掴めると思うんです。

一方で、それぞれが役にちゃんと入っていないと薄っぺらくて、退屈なお話になってしまう怖さもある。でも、今回はうまくいったと思います。みんなすごく演技が上手な方ばかりだし、演技バトルというか、感情バトルというか、ぶつけ合いを思い切りやれた。要は兄弟ゲンカなんですけどね。

僕は「1円たりともお前らには渡さないぞ!」っていう嫌らしい気持ちを最初は隠しているんだけれども、内心はメラメラしている(笑)。バレたら逆ギレしちゃうし。そんなドタバタの中でやるのが面白かったし、こういうシチュエーションものは好きですね。

―ところで、草彅さんは愛犬クルミちゃんがご自宅にいるので、東京からロケ地の栃木へ毎日通っていたと伺いました。

草彅:炎天下の撮影だったので、クルミは連れて行けなかったんです(笑)。あと、僕は枕が変わるとなかなか寝られないので。だから、帰れる場所ならば、だいたい家に帰るんです。みんなは栃木に泊まっていて、釣り堀に行ったり、日に日に仲良くなっていて。

―連日往復するのは大変じゃなかったですか?

草彅:大丈夫でしたよ。あと、小鉄はあの家族の中で、ちょっと浮いている存在。だから、みんながチームワークを高めていく中、僕が一人だけ毎日東京から通っているというのは、良い距離感だったなと。だから、棚からボタ餅的な感じなんですけど、そういうすべての偶然が良い方に重なって、作品に作用するんだなと思いましたね。溢れ出るみんなのリアルな感情が撮れているんじゃないかな、と思います。

草彅剛、市井昌秀監督

映画『台風家族』は、銀行強盗、偽装葬儀、台風と、非日常的な事件が次々起こる中、家族というもののしんどさ、面白さ、悲しさ、大切さを描き出している。草彅剛はじめキャストの振れ幅の大きな演技に爆笑しながら、気づけば、自分の家族を思い出さずにはいられない。ぜひとも劇場で体感してほしい。

取材・文:石津文子

<草彅剛&市井監督が語る『台風家族』紆余曲折を経て劇場公開!「草彅さんが些細なことにこだわる狡さ、醜さを演じたら面白い」>

『台風家族』は2019年9月6日(金)より3週間限定公開

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『台風家族』

強盗事件を起こし失踪した両親の“形だけの葬儀”のため、鈴木家の長男の小鉄、その妻・美代子と娘・ユズキ、長女・麗奈、次男・京介、そして末っ子の千尋が実家に集結。財産分与について話し合う最中、見知らぬ茶髪の男が実家に現れ、話し合いは思いがけない展開に転がっていく。刻々と台風が近づくなか、鈴木家にも嵐が渦巻いていた……。

制作年: 2019
監督:
出演:
  • BANGER!!!
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