本当に60年前の作品!?「狂ってるのに哲学的」「キュートでドラッギー」なチェコ映画『ひなぎく』4K復活上映
『ひなぎく』4Kレストア版で復活上映
チェコ映画の伝説的カルト作『ひなぎく』が1966年の公開から60周年、日本劇場公開35周年という節目に4Kレストア版で劇場公開される。これは本作に込められた色褪せない反逆精神を、かつてない鮮明さで目撃する絶好のチャンスだ。
『ひなぎく 4Kレストア版』©Czech audiovisual fund, source: NFA
“壊れた人形たち”が放つ自由の哲学
二人の“マリエ”はブリキ人形のように関節をギシギシ鳴らし、社会から“モノ”として扱われる女性たちのイメージを印象づける。良心や道徳を捨て去り、あえて“質の悪いパペット”のように振る舞うことで、自分たちを縛り付ける家父長制の枠組みを内側から軽やかに、かつ残酷に破壊していく。
『ひなぎく 4Kレストア版』©Czech audiovisual fund, source: NFA
なんとなく眺めているとシュールなギャグのようだが、過去多くの批評でも“茶番劇の形を借りた哲学的な実験”と捉えられてきた。男性たちを翻弄して欲望のままに消費を繰り返す二人の姿は、当時の抑圧的な体制に対する強烈な挑発だ。
『ひなぎく 4Kレストア版』©Czech audiovisual fund, source: NFA
そして、いま改めてマリエたちを見ると、ダニエル・クロウズの「ゴーストワールド」におけるイーニドとレベッカのようでもあり、ヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』でエマ・ストーンが演じたベラを想起させたりもする。
『ひなぎく 4Kレストア版』©Czech audiovisual fund, source: NFA
“映画のルール”を解体する色彩の嵐
本作の魅力は、そのアヴァンギャルドな映像技法にある。モノクロームの画面が突如として鮮烈な色彩に切り替わり、時には赤や緑の強烈なフィルターが画面を覆う。こうした色彩の変遷は、彼女たちの内なる狂気や解放感を視覚的に増幅させる装置として機能している。
『ひなぎく 4Kレストア版』©Czech audiovisual fund, source: NFA
ハサミを使ってお互いの身体やフィルムそのものを切り刻むコラージュ的手法は、映画という表現形式そのものへの反逆だ。ダダイズム的とも評されるポップアート風の色彩感覚は、60年近く前の作品とは思えない瑞々しさを保っている。4K版では、その微細なテクスチャや色彩のコントラストが一層際立つだろう。
『ひなぎく 4Kレストア版』©Czech audiovisual fund, source: NFA
『ひなぎく 4Kレストア版』は3月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
『ひなぎく 4Kレストア版』
マリエ1とマリエ2は、人形の真似をし、姉妹と偽り、男たちを騙しては食事をおごらせ、嘘泣きの後、笑いながら逃げ出す。部屋の中で、牛乳風呂を沸かし、紙を燃やし、ソーセージをあぶって食べる。グラビアを切り抜き、ベッドのシーツを切り、ついにはお互いの身体をちょん切り始め、画面全体がコマ切れになる。色ズレや、カラーリング、実験的な効果音や光学処理、唐突な場面展開など、あらゆる映画的な手法が使われ、衣装や小道具などの美術や音楽のセンスも抜群。60年代チェコ・ヌーヴェルヴァーグの傑作。
監督:ヴェラ・ヒティロヴァー
原案:ヴェラ・ヒティロヴァー+パヴェル・ユラーチェク
脚本:ヴェラ・ヒティロヴァー+エステル・クルンバホヴァー
出演:イトカ・ツェルホヴァー(マリエ1役)/イヴァナ・カルバノヴァー(マリエ2役)/他
| 制作年: | 1966 |
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2026年3月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開