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「前向きに生きるきっかけに」ブレンダン・フレイザー主演『レンタル・ファミリー』HIKARI監督インタビュー

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ライター:#遠藤京子
「前向きに生きるきっかけに」ブレンダン・フレイザー主演『レンタル・ファミリー』HIKARI監督インタビュー
HIKARI監督 『レンタル・ファミリー』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
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「LGBTQの方々が発信できないことを、映画監督として発信する」

――安藤玉恵さんがセックスワーカーの役で、フィリップがストリップを見たりするシーンもあります。前作の『37セカンズ』でもセックスワーカーやポルノ俳優、エロ漫画雑誌の編集者を役柄に加えられていて、いまでこそショーン・ベイカーが『ANORA アノーラ』(2024年)で賞を獲ったりしていますが、当時は周縁化されていた人たちを、あえて取り上げられたと思います。彼らを登場させることに、どんなメッセージを込められたのでしょうか。

そういう仕事をされている方々は色眼鏡で見られがちで、それは日本に限ったことじゃなく、でも彼らも仕事をして一生懸命に生きている普通の人々ですよね。だから、そういう姿が映画に普通に映っていたら、観客は平等に人を見るようになるんじゃないかと思っています。そこが希望というか、もうとにかく人類皆が平等に生きている世界になるようにしたいって、いつもすごく思います。そこも映画を作る中での監督としての目標なんです。

だってね、彼らには彼らのそれぞれの目標や役目があって、どういう経緯でそこに行ったかはわからないけれども、でもそれはそれでいいし、そこをジャッジする必要はないんじゃないの? っていう意味で、普通に私たちの生活の中にみんな存在するっていう描写ですね。玉恵ちゃんのローラ役にしても、彼女はフィリップにとってセラピストであって、フィリップがやっていることをじつは彼女もやっていましたよ、ということです。私はやっぱり人と人との繋がりを描きたいので、どういうバックグラウンドかは関係ないんです。

『レンタル・ファミリー』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

ストリップのシーンは「これが日本ですよ」というような感覚です。日本のストリッパーってすごく大変だなと思います。海外のストリッパーとはまたちょっと違って、アイドル的。ストリップの舞台なのにお芝居もある。歌舞伎みたいに。出演してくださったストリップダンサーの方もすごく素晴らしいダンサーで、私と同い年なんですけど、「こんなんよーできんな!」(脚を上げるポーズの真似)みたいな、そういうプロフェッショナルなところを、私はただアーティストとして映画に彼女たちの凄さを見せたかっただけです。

――「人間が平等に生きる世界になったら」とおっしゃられましたけれども、実際『レンタル・ファミリー』の中で、佳恵(演:森田望智)が白人男性をレンタルする理由とか、多田(演:平岳大)の会社の謝罪サービスのシーンでは主婦の自由がすごく限定的だったりすることも浮き彫りにされていますよね。そういう、ジェンダーの平等があまりない日本でお仕事をなさって、小さなイラつきや息苦しさを感じることはありますか?

私はもう、こういう人間なので。海外に行けてアメリカベースで。でも私は皆さんが持っているそうしたイラつきや、LGBTQの方々が平等であってほしいのに発信できないことを、私が監督として代わりに発信するっていう、それだけの話だと思っています。同性愛結婚が認めてもらえないところとか、じゃあ結婚できなくても、パートナーとして配偶者と同じことが許される様に改正するべきだと思います。でも、もっと掘り下げていくと、私は日本にも世界中にもLGBTQの友だちがいるんですが、日本は昔から歌舞伎とか女形のカルチャーがあるから、たとえばマツコ・デラックスさんとか男性が女性的になるのは全然受け入れるのに、レズビアンの人たちにはすごく厳しいですよね。社会的にも。それ、おかしいと思いませんか。

――おかしいと思います。

どう考えてもおかしいでしょう。ゲイに対して理解を示しているのであれば、「レズビアンの人だっているんですよ」というのも、私は見せたかった。それが当たり前だし「君たちが間違っているんですよ」っていうことを、私はあえておじさんたちに言いたいです。「時代遅れですよ」って。最近は本当に「おっさんて言われたくないんやったら、もうそういうのは言わんほうがええですよ」って(笑)。「時代遅れになっていますよ」ということをわかっていただけたらなと思います。

『レンタル・ファミリー』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

「後ろを向いていたって仕方がないから、進むしかない」

――監督はすべてを明るくハッピーな方向にアウトプットさせる方だという印象を私は抱いています。世代的には就職氷河期世代で、日本にいらした同じ年代の方々も大変なご苦労をされていると思いますが、監督は海外に出られて、でも暗く受け止める人だったら苦労と思うようなことを楽しくなさったんだと思うんです。

私も人生では結構いろいろなことがあって、中学生のときに性的に嫌な思いをしたこともありました。いろんなハードルを越えてきた中で、ポジティブに変えるっていうのは、もう本当に自分の性格というか。もちろん落ちこんでいたときもあるけど、過去を見たって仕方がないなって気づいた瞬間が20代にあって。だから前向きに生きてどんどん道が拓けたら、やっぱり生きている以上……映画監督になったいまは自分が目指している監督レベルの映画を作りたい。そこに行くには後ろを向いていたってしゃあないから、進むしかない。そういうことを(作品を)見てくださる方々にもわかっていただきたいし。でも今でも瞬間落ちる時は落ちる。ただ、自分の意識を変える時間が短くなったので、「あーあ」って思った瞬間に「まーええか、よし次!」ってなりました。

私の周りは結構みんな好きなことやってきている子たちが多いので、苦労があっても「好きなことをやっているから、まあしゃあないよな」っていう感覚。とくに大阪の友だちとかも「嫌やったらやめたらええねん」っていう、ほんま関西の感覚です。やめて何にもしないんじゃなく、「じゃあ次、何しようか」「経験を生かして、次何しようか」って、やっぱりどんどん前に進んでいく。

日本にいると「年いってるからもう無理」っていう意識があるじゃないですか。「もう50歳越えたからできない」とか「40代後半や」「30代だから何もできない」とか。そんなん、一回取っ払ってほしいですね。やっぱりもったいない。50歳でも子どもなんですよ。人生一生勉強、経験。だから、もしなにか文化祭みたいな仕事をしたいって思ったら、映画業界に入ってくださいって言いたい。もう人手が足らない、スタッフが足らないですから。本当に大変かもわかんないけど、面白いことができるかもわかんないから。広げたいですね、映画の楽しさを。

『レンタル・ファミリー』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

「落ちてしまうときは落ちるだけ落ちて、這い上がるときに学べることもたくさんあるから」

――監督はずっとインディペンデントで短編を撮られて、Netflixでお仕事なさって、本作はサーチライト・ピクチャーズです。こんな質問はたったいま伺ったことの逆になってしまうかもしれないですが、大変なことはありましたか? 逆にNetflix以降、すごくお仕事しやすくなったことなどはありますか。

そうですね。人生、誰でもそうですけど、映画製作とかテレビ制作については本当に経験を積めば積むほど、自分も学んでいるし理解も深まるし、楽にはなっていく。『37セカンズ』を撮った後、初めてのテレビシリーズ「TOKYO VICE」を日本で撮ったんですが、それはコロナ禍での撮影で。そのときはテレビの流れの早さっていうギャップが――もちろん映画も早く撮っていかないとだめだけど――やっぱりテレビの世界はそこにクリエイターの人がいて、その人たちに合わせて監督をしていく。自由度はいっぱい与えていただいたんですが、そこはやっぱり初めてのチャレンジでした。

白人男性が牛耳る中で頑張っていかないとダメっていうプレッシャーはありますけど、私は結構ラッキーなほうだと思います。『BEEF/ビーフ』にしても、パイロットで第1話を監督させていただけたのも本当にご縁で、大好きな役者さん2人(※スティーヴン・ユァン、アリ・ウォン)で撮れたっていうのは本当に良かったです。みんないまでも大の仲良しなので。

 

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――やっぱり配信でも、映画業界とは違う感じでしたか?「TOKYO VICE」の場合はネットワーク放送局だったんですね。

あれは日本ではWOWOWが出資したかな。いまは日本では確かNetflixでも見られるんですけどね。もともとアメリカでは<HBO Max>が制作に入って。『BEEF/ビーフ』はNetflix作品として撮ったんですが、何があっても12時間以内に“撮りきれないとダメ”っていうプレッシャーがあります。でも「もう、やるしかないんだ」ってどんどんやる中で、「この3ショットは1回しかないから、じゃあワンショットで撮ろう!」とか、そういうアイディアとかもやっぱり出てくるし、それはクリエイティブのジュースがどんどん湧き出てきていいんじゃないかなっていうふうに受け止めるようにしています。

――研ぎ澄まされる感覚ですね。HBO Maxだと観客の期待も高まっているわけですが、そうしたことはやっぱりプレッシャーというより、むしろワクワク感につながりましたか。

私としては「どんな人が見てくれるんやろ?」っていうワクワク感ですね、常に。プレッシャーで考えると、そこで壁にぶち当っちゃうので、とりあえず自分の選択を信じて、とにかく前に突き進むしかない。もちろん「あのときは失敗しちゃったな」と思うときもあるけれど、でも過去を考えても仕方がないので。落ちちゃうときはもう落ちるだけ落ちて、あとはまた這い上がれるように。這い上がっていく間に学べることもたくさんあるから。

『レンタル・ファミリー』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『レンタル・ファミリー』は2月27日(金)より全国公開

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『レンタル・ファミリー』

CM撮影のために来日した俳優のフィリップはそのまま東京で暮らすが、仕事は少なく生活は厳しい。説得されてレンタル家族の仕事を引き受け、さまざまな家庭で日本の問題を垣間見ることになる。出会った人々とのつながりから仕事に魅力も感じ始めるが……。

監督:HIKARI
出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマン・シャノン・眞陽 ほか