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誇り高き勇者21人が、1万もの敵兵を前に壮絶バトルを繰り広げる! 伝説の戦いを映画化『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』

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ライター:#松岡環
誇り高き勇者21人が、1万もの敵兵を前に壮絶バトルを繰り広げる! 伝説の戦いを映画化『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』
『KESARI/ケサリ』

ターバンでお馴染みシク教徒が活躍! 絶好調のインド映画界から異色作が登場

2019年夏次々と公開されるインド映画。いろんなタイプの作品があってまさに消夏に最適だが、その中でも異色の作品が、2019年8月16日(金)から公開の『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』だ。イギリス植民地時代の1897年の事件を描く歴史映画で、後半は戦争アクション映画の見せ場を備え、また、インド特有の宗教、シク教に根ざした愛国映画という側面も持っている。インドでは2019年3月21日に公開されてヒットし、現在は年間興収ベスト7位に位置している人気作である。

※CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送

『KESARI/ケサリ』

「ケサリ」、正確に音引きを付けると「ケーサリー」となるこのヒンディー語の単語は、サフラン、あるいはサフラン色を意味する「ケーサル」に由来する。サフラン色はインド人が最も好む色で、インド国旗に緑色、白色と共に使われているほか、ヒンドゥー教などの宗教に関連して使われる布もサフラン色が多い。サフランで染めた黄色がかった橙色が「ケーサル」で、インドでは「愛国」を表す色とも考えられている。

また、「ケーサリー」という単語は「獅子、ライオン」という意味にもなるのだが、ライオンのたてがみがサフラン色だったことから、「ケーサリー」と呼ばれるようになったという。「獅子、ライオン」を表すヒンディー語の単語はほかにもあって、「シン(シング)、シンハ」あるいは「シェール」も使われる。

『KESARI/ケサリ』

この、「獅子、ライオン」という意味の「シン」を名前につける習慣があるのが、シク教徒の男性だ。シク教は16世紀にグル・ナーナクによって興された、いわばヒンドゥー教とイスラム教のいいとこ取りをした宗教で、男性は戒律により髪と髭を伸ばしているため、長い髪を隠すターバンを被った姿で知られている。昭和の日本では、ターバン姿がインド人を表すアイコンとして認識されていて、カレーのCMなどにもよく登場した。

勇気を示すため命をかけて戦った21人のシク教徒たち

『KESARI/ケサリ』

『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』は、イギリス統治下にアフガニスタンから攻めてきた1万人にのぼる軍と戦い、サラガリ砦で殉職した21人のシク教徒兵士が主人公だ。中心となる人物は軍曹のイシャル・シン(アクシャイ・クマール)。イシャル・シンは農民出身で、村には新婚間もない妻(パリニーティ・チョープラー)を残してきている。自分の信念を曲げない頑固者で、イギリス軍将校に逆らってにらまれ、サラガリ砦の指揮官に左遷される。

サラガリ砦は、アフガニスタンのパシュトゥーン族に対峙するために作られた砦の一つで、イギリス軍将校が駐屯するグリスタン砦とロックハート砦の間にあり、当時の鏡を利用した光通信の中継基地として作られた砦だった。

そんなわけで、駐屯しているシク教徒兵士20名はのんびりした日々を送っており、赴任したイシャル・シンが規律を厳しくするとたちまち反発が起きる。しかし、やがてイシャル・シンの人柄がわかってからは、彼をリーダーとして兵士たちは団結し、心を通わせ合う。

こうして、「サラガリ砦軍団21名」のボードが掲げられる頃にはすっかり精鋭となった兵士たちだったが、その時アフガニスタンの各部族が連合した軍1万人が、サラガリ砦を襲撃してくるのである。

『KESARI/ケサリ』

イギリス軍指揮官からの命令は、「援軍を出すのは不可能。砦を放棄せよ」だった。しかし、それまでイギリス軍将校にさんざん虐げられ、「おまえたちは奴隷と同じだ。このインドという土地は臆病者しか生み出さない」と言われ続けてきた兵士たちは、自らの勇気を示すために最後まで戦うことを選ぶ。こうしてイシャル・シンの指揮下、21名の兵士たちは壮絶な戦いに挑んでいく。

史実に基づく戦いをエモーショナルに描く! 歴史劇から現代のインドを知ろう

『KESARI/ケサリ』

以上がストーリーなのだが、後半、戦いに直面した兵士たちの決心を強固なものとするためにイシャル・シンは、それまでカーキ色だったターバンをケサリ色、つまりサフラン色のターバンに換えて皆の前に姿を現す。「カーキ」というのはもともとペルシア語の「ハ(カ)ーク」が語源で、「大地、土埃」といった意味である。軍服に使われるあのカーキ色は、土に溶け込めるよう選ばれた色で、その色の軍服を着、ターバンを被っていたシク教徒兵士たちの前に、鮮やかなサフラン色のターバンを巻いたイシャル・シンが現れるシーンはとても印象的だ。

その後はこの21名がいかに戦ったか、という描写になり、戦争アクション映画と化すのだが、それぞれの細かいエピソードの描き方は非常にエモーショナルだ。インド人、そしてシク教徒としての誇り高い精神を随所で描き、感情に訴えたところが、インド人観客を惹きつけた要因だと思われる。

『KESARI/ケサリ』

このサラガリ砦の戦いは、1897年9月12日に実際に起こった戦闘で、その後、殉職した兵士たちを記念するため、シク教の聖堂であるグルドワーラーがイギリス軍によって建てられたり、シク教徒連隊では9月12日を追悼の日としたりすることが行われていたのだが、広く知られるようになったのは20年ほど前かららしい。ちょうど、インド人民党が再び政権を取った頃で、「愛国」ムードを歓迎する空気が漂っていた時だ。

そして今、同じくインド人民党の政権下で、イギリスに反抗し、イスラム教徒のアフガニスタン軍と戦った彼らを描く『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』が本国でもヒットした。ジャンムー・カシミール州の自治権剥奪などで、ちょっときな臭いインドの今の空気を知るためにも、観ておくべき作品である。

『KESARI/ケサリ』

文:松岡環

『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送

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『KESARI/ケサリ 21人の勇者たち』

21人 VS 10,000人。映画史上最も過酷な死闘が始まる!
全インド熱狂&感動のスペクタクル!!

1897年、英国領のインド北部には辺境部族を警戒する砦が築かれ、英国軍とシク教徒が警備していた。僻地サラガリ砦の司令官を命じられた下士官イシャルは、実戦経験の乏しいシク教徒20人の部隊を鍛え直すことにする。その頃、1万人に及ぶ部族連合が、一斉攻撃を企てていた!

制作年: 2019
監督:
出演: