英国史上最も残忍な民衆虐殺事件! 史実の徹底リサーチで超リアルに再現『ピータールー マンチェスターの悲劇』

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ライター:BANGER!!! 編集部
英国史上最も残忍な民衆虐殺事件! 史実の徹底リサーチで超リアルに再現『ピータールー マンチェスターの悲劇』
『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

ピーター・ルーさんは出てきません! 英マンチェで起こった200年前の悲劇が現代に蘇る

イングランドのマンチェスターといえば、80~90年代にサイケロックが流行って、仲の悪いマユ毛兄弟バンドの地元で、サッカーチームが超強い……みたいなイメージしかないのが正直なところなので、映画『ピータールー マンチェスターの悲劇』というタイトルを見ても、いまいちピンとこなかった。しかし聞けば、なんと200年前のマンチェで起こった悲劇的な事件を扱った史実映画だという。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

本作で描かれるのは、1819年、産業革命真っ只中のマンチェで十数人の死者と100人近い負傷者を出した、通称“ピータールーの悲劇”の顛末だ。「ピーター・ルーおじさんのお話かな?」「いや、フーリガンたちの暴動の話じゃね?」と思ってしまった人もいるかと思うが、恥じる必要はない。なにせマンチェ育ちのマイク・リー監督ですら、この悲劇についてはよく知らなかったというくらいである。だからこそ、200周年を迎える2019年のタイミングで観る/知ることに意義があるのだ。

香港加油! 選挙権を求めて闘った200年前の英国人と戦前に退行する日本

1700年代末に始まったナポレオン戦争によって、世界中の植民地を含むヨーロッパ全体がしっちゃかめっちゃかになり、そのまま大不況時代に突入。後に制定された“穀物法”がさらなる貧困をもたらし、飢えた民衆は変革を求めて動きはじめる。しかし、悪法に反対しようにも彼らには選挙権がなかった。そこで選挙権を求める運動が始まり、求心力のある活動家を招いて抗議集会が開かれるようになっていく。その中の一人が、悲劇の舞台となったセント・ピーターズ広場で演説をぶったヘンリー・ハントである。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

先日行われた参院選でも投票率が過半数を下回ったが、そんな呆けた国に住んでいると、かつて選挙権のために命をかけた人々に対して申し訳ないような気持ちになってくる。本作に登場する庶民たちの愚痴が、現代のプアワーカーのそれと大差ないという事実にも大いに落ち込むし、優遇される富裕層(&勘違いした無関心層)が多くの低所得層の足を引っ張る構図も全く同じだ。この事件/映画は“現代民主主義の原点”と銘打たれてはいるものの、当時からほとんど進歩していないではないかと暗澹たる気持ちになる。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

そんな本作を観て真っ先に思い浮かべるのは、今まさに香港で起こっている民衆デモだ。日本のテレビ番組こそあまり報道しないが、あのデモは民主主義を脅かされた香港の人々の危機感、そして覚悟の現れである。本作でも、ちょっと人のものを盗んだだけの庶民に治安判事が流刑や死刑を言い渡すのだが、そんな200年前のヒドい状況への危機感を、現代の香港人は中国に対しリアルに肌で感じているからこそ、命をかけて本気で抵抗しているのだ。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

再現度がスゴい! 歴史的な悲劇を再現した壮絶な虐殺シーンに息を呑む

本作では、弁の立つ活動家や庶民の代表が代わる代わる演説をぶち、中盤過ぎまではスピーチ大会のようなテンションなのだが、当時の演説には娯楽という側面もあったのだろう。しかし、その背後には富を支配するごく一部の連中と、暴力で庶民を取り締まろうとする公僕たちが醜く蠢いている。そしてクライマックス、溜めて溜めて発せられたハントの演説は抑え込まれていた民衆を奮い立たせる……よりも前に、悪意のダムを決壊させてしまった。いつの時代も汚れた為政者たちは民意を恐れているのだ。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

義勇軍と騎兵隊による虐殺を再現したシーンは、我々観客も何が何やらのパニック状態に巻き込まれるほどの迫力。こうやってカオスが作り出されて命が虐げられるんだな……という状況がリアルに可視化され、思わず香港デモで市民が暴行される映像が脳裏に蘇り、体中の色んなところが縮み上がった。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

しかし、数百年前から変わらない状況を嘆きつつも、それを変えることができることも我々は知っている。本作が、立場を勘違いした冷笑系の人々にどれだけ響くのかさっぱり分からないが、無気力を奮い立たせる名演説に感化されて、少しだけ投票率が上がったりしないかな……なんて期待してしまう。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』© Amazon Content Services LLC, Film4 a division of Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2018.

さて、本作はめちゃくちゃ胸クソな終わり方をするのだが、そこは史実なのであしからず。大事なのは、どのように/どこまで描くのか? という部分だし、もちろん見どころは他にもたくさんある。例えば、当たり前のように再現された当時の街並みや立場の異なる人々の衣装、これをしっかりリサーチして用意するのは相当大変だったはず。映像制作に関わっている人でなくとも、「こりゃ大変やで……」と色んな意味でため息が漏れるはずだ。

『ピータールー マンチェスターの悲劇』は2019年8月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

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『ピータールー マンチェスターの悲劇』

1819年、ナポレオン戦争後の英マンチェスター。非武装市民6万人に起きた悪夢。
〈ガーディアン紙〉創刊のきっかけとなった事件の全貌がついに明かされる!

制作年: 2018
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