連続殺人鬼も誰かの隣人……今夏いちばん後味の悪い青春スリラー誕生!
「チャリで来たマッドマックス」こと『ターボキット』(2015年)の映像制作チーム<RKSS>が手掛けた『サマー・オブ・84』が、2019年8月3日(土)より公開中。ベッタベタなタイトルとロゴからも分かるように、80~90年代ジャンル映画への最大限のリスペクトとオマージュがたっぷり詰め込まれた青春スリラーだ。古い映画はよく知らないという若い映画ファンも、『ストレンジャー・シングス』や『アンダー・ザ・シルバーレイク』の要素が……なんて例えれば、興味を惹かれるのではないだろうか。
物語の舞台となるのは1984年のアメリカ、オレゴン州イプスウィッチという架空の田舎町。「連続殺人鬼も誰かの隣人だ」とつぶやくのは本作の主人公デイビー(15歳)で、実際に町では子どもを狙った殺人事件が多発していた。デイビーはひょんなことから、向かいに住む警官のマッキーが犯人ではないか? と疑うようになるのだが、当然ながら大人たちは本気にしてくれない。そこで仲良し同級生たちを巻き込んで、証拠を掴むべくスパイ活動を開始。しかし、現実はドラマや映画にように単純ではなかった……。
この結末、トラウマ級! 過剰な80’sオマージュに隠されたドス黒い恐怖
冒頭からベタな構図や雑なクローズアップを多用しているが、あえてチープに見せたい意図をびしびしと感じる。デイビーの仲間たち個々のキャラクターや複雑な家族背景、隣に住むセクシーな年上女子といった環境設定も超ありがちなのだが、見慣れた設定のおかげですんなりと物語に入り込むことができる。
しかし本作は、いわゆる“大人は分かってくれない”的なジュブナイル要素に主人公の空想や好奇心によるサスペンスを盛り込んだ、青春時代の1ページを切り取りました系映画と思って観ると大いに肩透かしを食らう。かといって、レトロ設定ブームに便乗しただけのティーン映画とも一線を画す……というか、あまりにショッキングな展開に思わず絶句するはずだ。トラウマ級のキツ~い結末に、拒絶反応を示す人もいるかもしれない。
<RKSS>は80’s風の設定を拝借しただけではなく、当時の空気をまとったスリラーを本気で現代に蘇らせようとしている。タイアップした既存曲ではなくシンセサウンド中心のオリジナル楽曲を全編に散りばめ、『グーニーズ』(1985年)や『スタンド・バイ・ミー』(1986年)などからインスパイアされ……と言いたいところだが、もはやテンプレ化した設定なので、ネタ元をほじくり返してもあまり意味はない。
制作チーム、どんだけ性格悪いの!? 予想の斜め上をいく衝撃展開
本作がスゴいのは、そのテンプレから逸脱しようとしているところであり、その描写の本気度だ。終盤まで80’sオマージュ映画を本気で再現しておいて、最後の最後で“本性”を見せる。現代のテクノロジーによって生じる細かい矛盾を回避するという目的もあったかとは思うが、主人公たちが見舞われる恐怖は普遍的なものであり、フィクションを超えた絶望を観客に突きつけてくる。
上映ラスト15分で主人公たちに忍び寄る真の恐怖……そこから先は息をすることすらままならず、不快感をみっちりなすりつけられながら、スクリーンに食い入ることになるだろう。正直「え~!? そりゃないよ!」と声に出してリアクションしてしまうレベルだ。まさかのマンハント要素まで盛り込んできたのは恐れ入ったし、少年たちにたっぷり感情移入させてからどん底に突き落とす制作陣の性格の悪さは称賛に値する。
この結末が、子どもの好奇心や冒険心を抑圧することに繋がらなければ幸いだ。ラストシーンで再びつぶやかれる「連続殺人鬼も誰かの隣人だ」というデイビーの言葉が、冒頭とは少し違って心に響いてきた。
『サマー・オブ・84』は2019年8月3日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
『サマー・オブ・84』
1984年夏、郊外の田舎町に暮らす15歳のオタク少年・デイビーは「隣人が連続殺人事件の犯人ではないか?」と疑い、3人の親友と独自の捜査を始める。しかし、そこには恐ろしい現実が待ち受けていた…!
制作年: | 2017 |
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監督: | |
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