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追悼ビョルン・アンドレセン「世界で一番美しい少年」と呼ばれた男の壮絶人生と出演作を振り返る

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ライター:#BANGER!!! 編集部
追悼ビョルン・アンドレセン「世界で一番美しい少年」と呼ばれた男の壮絶人生と出演作を振り返る
『世界で一番美しい少年』©Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

追悼ビョルン・アンドレセン

スウェーデン出身の俳優・音楽家ビョルン・アンドレセン(Björn Andrésen)が10月25日、70歳で死去した。

訃報は、彼を題材としたドキュメンタリー『世界で一番美しい少年(The Most Beautiful Boy in the World)』(2021年)の共同監督であるクリスティアン・ペトリがスウェーデン紙<ダーゲンス・ニュヘテル>に明かしたもの。死因については一部メデイアで「癌との闘病の末」と娘が明かしたと報じている。

『世界で一番美しい少年』©Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

「世界で一番美しい少年」としての宿命

アンドレセンは1955年1月26日、ストックホルムに生まれた。16歳のとき、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』(1971年)で主人公アッシェンバッハが憧れる美少年タッジオ役に抜擢され、一躍世界的な注目を浴びることになる。

『世界で一番美しい少年』
DVD発売中
価格:¥4,180(税込)
発売・販売元:ギャガ
©Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

ヴィスコンティ監督はカンヌ国際映画祭で彼を「世界で一番美しい少年」と紹介し、その言葉は彼の人生を決定づけるレッテルとなった。

だがその名声は祝福というよりも、生涯にわたって彼を縛りつける呪縛となってしまう。アンドレセンは後年、「ヴィスコンティは私を性的に対象化した」と語っており、撮影現場での経験がトラウマとなったことを明かしている。

長い沈黙と劇的なカムバック

『ベニスに死す』以降、アンドレセンは日本やフランスでも活動し、1970年代には日本のCMや映画にも出演。音楽家としても活動し、ピアノ演奏や作曲活動に取り組んだ。しかし俳優としてのキャリアは断続的であり、長らく表舞台から遠ざかっていた。とはいえそのキャリアは50年以上に及び、スウェーデン国内外で多くの映画・ドラマに出演している。

『マザーズ』© 2016 Profile Pictures ApS

近年では、アリ・アッバシ監督の『マザーズ』(2016年制作/2022年日本公開)で怪演を見せたほか、アリ・アスター監督のホラー映画『ミッドサマー』(2019年)にも出演し大きな注目を集めた。同作はスウェーデンのカルト村を舞台にした物語で、アンドレセンは儀式の一部として命を落とす長老役を演じ観客に強烈な印象を残した。

ドキュメンタリーで語られた真実

ドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』は、アンドレセン自身が語る形で構成されている。名声の代償、家族との関係、そして老いと向き合う姿が描かれ、日本を含む世界中の映画ファンに衝撃と共感を与えた。

『世界で一番美しい少年』©Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

この作品は”美の象徴”として消費された少年が、いかにして自己を取り戻そうとしたかを記録した貴重な証言でもある。アンドレセンの長年の沈黙の裏にあった苦悩が語られ、彼の人生における光と影を浮き彫りにする。

アンドレセンの死は、映画史における一つの時代の終焉を意味すると言っても過言ではない。彼の存在はスクリーンに永遠に刻まれており、その背後にあった苦悩についてもエンタメ界の大きな課題として語り継がれるべきだろう。謹んで冥福を祈りたい。

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