「日本の漫画“エンジェル伝説”にインスパイアされた」 韓国発ホラーコメディ『ハンサム・ガイズ』監督インタビュー
「どのシーンを撮るときも笑いを忘れないよう努めました」
――本作はいわゆるスプラッターコメディですが、お互いの立場や先入観、差別意識などによって相手の印象がガラリと変わる、ということを示唆しているとも感じました。それにも関わらず、10秒に一度は笑わせてくれます。企画から脚本・撮影・編集の段階で、特に大変だったポイントを教えて下さい。
『ハンサム・ガイズ』は、コメディ、オカルト、ホラー、スラッシャー、スリラーなど、さまざまなジャンルが混ざった映画であり、先入観や偏見に対するメッセージも含まれています。しかし、私が最も重要だと考えたのは、この映画は「コメディ映画である」ということでした。
『ハンサム・ガイズ』© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & HIVE MEDIA CORP All Rights Reserved.
どのシーンを撮るときも笑いを忘れないよう努めましたが、それでもオカルトホラーのシーンでコメディを実現するのは非常に難しい作業でした。笑いを重視しすぎてホラーのトーンを軽くしすぎると映画が幼稚に見えてしまいますし、逆に怖い雰囲気を出すためにホラーのトーンを重くしすぎると、コメディがぎこちなくなってしまうからです。
そのため、私たちの映画ならではのトーンを見つけるために、撮影、照明、美術、衣装、メイクといった各部門の責任者とさまざまなテストを行い、俳優たちとも演技の方法について多くの議論を重ねました。こうした皆の努力の末に、『ハンサム・ガイズ』ならではのスタイルが完成しました。
『ハンサム・ガイズ』© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & HIVE MEDIA CORP All Rights Reserved.
「北野武など、子どもの頃から好きだった監督たちに触発されたシーンが多くあります」
――『タッカーとデイル』は「田舎は怖い」というフォークホラーを逆手に取ったコメディですが、他にも”田舎の殺人鬼映画”からインスパイアされたシーンや設定はありますか?
本作のジェピルとサングを表現する上で、大きなインスピレーションを受けた作品の一つが、日本の漫画「エンジェル伝説」(八木教広/集英社)です。特に、ジェピルがチェーンソーを手にボラ(演:パク・ジョンファ)に向かって叫びながら走るシーンは、「エンジェル伝説」で悪魔のような姿をしているものの善良な主人公・北野(誠一郎)が叫びながら走る様子を参考にして作ったシーンです。
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――とくにアクションシーンなどに、マンガやアニメ的な演出を感じました。
先に挙げた「エンジェル伝説」のような漫画や、さまざまなアニメからも多くの影響を受けましたが、それ以上に、私が子どもの頃に好きだったハリウッド映画や日本、香港の映画からの影響が大きいと考えています。特に、パク・ジファンが演じたチェ所長がジェピルとサングを逮捕する過程で見せるスラップスティック・コメディのシーンは、子どもの頃に好きだった『裸の銃(ガン)を持つ男』(1988年)のオープニングシーンへのオマージュでもあります。
それ以外にも、ティム・バートン、クエンティン・タランティーノ、チャウ・シンチー、北野武など、子どもの頃から好きだった監督たちの作品に触発されて作ったシーンが多くあります。
――日本の観客には分かりづらいポイントなのですが、ジェピルとサングの喋り方には地方特有の訛りがあるのでしょうか?
はい。ジェピルとサングは、韓国・慶尚北道の小さな都市にある半地下の部屋で暮らしたのち、ソウル近郊の田舎の一軒家に引っ越してきたという設定で、劇中では二人だけが慶尚道の方言を使っています。
ただし、最初から方言を使うキャラクターとして設定されていたわけではありません。まず、キャスティングされたイ・ソンミンとイ・ヒジュンの出身地が慶尚北道で、自然に方言を使えることが大きな理由でした。また、ジェピルとサングが方言を使うことで“他の地域から来た異邦人”という印象が強まり、周囲から誤解される状況がより際立つと考えたんです。
『ハンサム・ガイズ』© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & HIVE MEDIA CORP All Rights Reserved.
『ハンサム・ガイズ』は10月3日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開中
『ハンサム・ガイズ』
自称“タフガイ”のジェピル(イ・ソンミン)と“セクシーガイ”のサング(イ・ヒジュン)は、森の奥深くにある新居に引っ越してきた。二人はよく自分たちの”ハンサムさ”について褒め合っているが、実際のところ、その強面ぶりから彼らを見た人々は、不審な人物だと疑ってしまう。そんなこと知るよしもない二人は、やっと手に入れた夢のマイホームで新たな暮らしを始められることに、ただただ幸せを感じていた。
ところがその幸せも束の間、近くの湖で溺れかけた大学生のミナ(コン・スンヨン)を助けようとしたところ、殺人鬼に間違えられてしまう?! 殺人鬼だと勘違いしているミナの友人たちが次々と襲いかかってくる中、地下室に封じられていた古代の悪霊が目を覚まし……家は次第に不気味なエネルギーに包まれていく。
――「なんでうちに来て、みんな死ぬんだよ!」
脚本・監督:ナム・ドンヒョプ
出演:イ・ソンミン、イ・ヒジュン
コン・スンヨン、パク・ジファン、イ・ギュヒョン
| 制作年: | 2025 |
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2025年10月3日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開中