一つの家族の視点から捉える、LA暴動が起きたあの日。実話をベースにした衝撃作『マイ・サンシャイン』

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ライター:BANGER!!! 編集部
一つの家族の視点から捉える、LA暴動が起きたあの日。実話をベースにした衝撃作『マイ・サンシャイン』
『マイ・サンシャイン』©2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES
アメリカでは現在もアフリカ系市民が白人警官に射殺される事件が後を絶たない。トランプ政権の誕生により人種差別が深刻化する中、現状に一石を投じるような作品『マイ・サンシャイン』が話題を呼んでいる。

新たな角度から見つめた、あの事件。そして暴動。

『マイ・サンシャイン』©2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES

本作が題材とするのは、1991年にLAで起きた黒人差別による2つの残虐な事件(※)と、事件に対する不当な評決に怒り狂った黒人たちが1992年に巻き起こしたLA暴動だ。実際の映像を効果的に織り交ぜながら、LAのサウスセントラル地区に暮らすある家族が、どのようにしてあの暴動の日を過ごしたのか、その姿を通して事件・暴動の真実に迫る内容になっている。

(※)ロドニー・キング事件:スピード違反で逮捕された黒人男性が白人警察官から集団暴行を受けるが、後に警察官らは無罪判決を受ける
(※)ラターシャ・ハーリンズ射殺事件:15歳の黒人の少女が万引犯と間違えられ韓国系女性店主に射殺されるも、店主に下されたのは保護観察処分と500ドルの罰金の判決

本作はその重厚な物語だけでなく、豪華キャストによる夢の共演も話題だ。『チョコレート』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたハル・ベリーが血の繋がらない子どもたちをホストマザーとして育てる主人公のミリーを、荒々しい性格ながらミリーと子どもたちを見守る隣人オビーを『007』の6代目ジェームズ・ボンドでお馴染みのダニエル・クレイグが熱演。子どもたちへの愛情に満ちたベリーの円熟した演技も、クールなイメージが強いクレイグの下町風やさぐれ演技も秀逸だ。

本作でしか見られない振り切った演技や、過去にボンドガールを演じたベリーと現役ボンドとの絡みなど、二人のファンでなくとも見所が満載と言える。

若者を描かせたら右に出るものなし?『裸足の季節』エルギュヴェン監督の才気が爆発

『マイ・サンシャイン』©2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES

長編1作目にしてアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『裸足の季節』では、トルコのある村で強制結婚や親族からの性的虐待にあう5人姉妹が自由を渇望する姿をセンセーショナルに描いたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督。若者独特の空気感を表現することに長けた監督の手腕は健在で、本作ではミリーの子どものジェシーとウィリアム、そして彼らが恋をするニコールとの複雑な三角関係を繊細に描写している。若さゆえの瑞々しさや危うさ、パワフルさ、思慮の浅さなど、10代の肖像を的確に切り取る監督のセンスは見事。暴動によって、いとも簡単に若者たちの恋が翻弄されてしまう様子には思わず胸が苦しくなるはず。

同じくエルギュヴェン監督らしさが光るのが、多彩な映像表現だ。例えば暴動が起こる前のミリー一家の幸せな日常シーンでは、LAの街にマッチした乾いた質感の光を取り入れて温かみのある映像を作り出す。反対に、ジェシー、ウィリアム、ニコールが巻き込まれるLA暴動のシーンでは、炎と煙、暗闇を乱雑に用いて混沌とした暴動の様子をうまく表現した。このように随所に散りばめられた演出に、彼女のフィルムメーカーとしての才能を感じとることができるだろう。

家族の絆や青春群像劇など様々な要素を盛り込みながら、LA暴動までの日々に迫った挑戦作『マイ・サンシャイン』。当時の荒々しさを再現するカオスに満ちた物語を通して、あらためて人種差別問題と対峙してみてはいかがだろうか。

 

『マイ・サンシャイン』は12月15日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国ロードショー

『マイ・サンシャイン』公式サイト

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