静かな演技から滲み出る不安、刺激される映画的記憶
雅を演じる瀬戸かほの、直接的な表現を超えた静かな佇まいの説得力に驚かされる。セリフは少なく、しかし沈黙のなかに滲む感情。その空気感に、喪失の痛みを疑似体験させられる観客もいるだろう。また、依頼主となる男の存在は謎めいていて、物語全体を不安定に揺さぶってくる。
『NEW RELIGION』©SHM FILMS
おそらく多くの観客が、デヴィッド・クローネンバーグ的なボディホラー作品を想起するだろう。身体を通じて記憶や別の存在に触れるというアイデアは、『ヴィデオドローム』(1983年)などに通じるものだ。一方で、説明できない現象が日常に静かに入り込んでくるような展開は、黒沢清に代表される日本の心理スリラーの空気も漂わせている。
『NEW RELIGION』©SHM FILMS
儀式としての映画体験、体内に残り続ける余韻
本作は便宜上“Jホラー”の系譜に位置づけられるかもしれないが、もちろんその枠にとどまらない。アートハウスホラーか、抽象的なSF、あるいは実存的スリラーなどの要素がミックスされていて、それは観客をジャンルという縛りから解放する。
『NEW RELIGION』©SHM FILMS
写真のもつ暴力性や死者との接触への渇望――それらが繰り返されていくなかで、映画そのものが静かな儀式のようになっていく。それは観客自身の内面へと反射し、鑑賞後もしばらく体内にジリリとした残留物を感じさせ、奇妙な余韻を引きずることになる。
『NEW RELIGION』は7月18日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開中
『NEW RELIGION』
娘を不慮の事故で失った母親・雅(瀬戸かほ)。
現在はコールガールとして働く彼女は、ある日、「《背骨》の写真を撮らせてほしい」と頼む奇妙な客・岡(岡諭史)と出会う。
岡の言うがままに写真を撮らせる雅だったが、彼女は次第に死んだ娘の霊の存在を感じるようになっていく。
撮影は進み、最後に残されたのは眼球の撮影だった。
監督・脚本・編集・プロデューサー:Keishi Kondo
撮影監督:三品鐘
出演:瀬戸かほ
西園寺流星群 岡諭史 ナカムラルビイ 沼波大樹
| 制作年: | 2021 |
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2025年7月18日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開中