“漫画「ベルセルク」の元ネタ”はもう常識?グロすぎ快楽ホラー『ヘル・レイザー』の魅力と実際の共通点
世代を超えていまだ大きな支持を得ている映画『ヘル・レイザー』(1987年)と、世界中で高く評価されている漫画「ベルセルク」(1989年~連載開始)。この2つの傑作には共鳴する要素が多く、後者の創造において前者が重要なインスピレーション源のひとつとなったことはファンの間では有名だ。
正直さんざん語られてきて事実ではあるが、ちょうど7月に『ヘル・レイザー』と続編『ヘルレイザー2』(1988年)がCSにてTV放送中されるということで、その影響と分析について改めて振り返っておこう。
「ヘル・レイザー」© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
映画『ヘル・レイザー』の美学
クライヴ・バーカー原作・監督による『ヘルレイザー』は、禁断のパズルボックス<ルマルシャンの箱>を開いた者が異次元の存在<セノバイト>によって快楽と苦痛の極限へと導かれるという物語。
「ヘル・レイザー」© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
セノバイトたちは、ボンデージやカトリック的儀式、肉体改造を思わせるルックスで、特にリーダー格の<ピンヘッド>(※文字通り頭部全体にピンが突き刺さっている)は、冷静かつ知的な恐怖の象徴としてホラー史に残る存在となった。
「ヘル・レイザー」© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
漫画「ベルセルク」における影響の痕跡
「ベルセルク」作者の三浦建太郎氏は生前、『ヘル・レイザー』からの影響について過去のインタビューで言及しており、ファンフォーラムや分析記事でも様々な共通点が指摘されている。
『ベルセルク』に登場する超越的存在<ゴッドハンド>は、異形の肉体、浮遊する姿、異次元からの顕現といった点でセノバイトと酷似しており、それぞれのビジュアル的な共鳴も顕著だ。
また『ヘル・レイザー』ではパズルボックスを開くことで異界が開かれ、セノバイトが現れる。一方『ベルセルク』では<ベヘリット>が発動することで<蝕>が起こり、ゴッドハンドが降臨する。この構造的類似は、両者が“禁忌の扉を開く”という共通の神話的構造を持つことを示している。
右:ベヘリット/左:ゴッドハンド(「ベルセルク」コミック1巻~3巻より ※編集部私物)
肉体と精神の分離~変容、宗教的・哲学的モチーフ
『ヘル・レイザー』におけるセノバイトは元人間でありながら、快楽と苦痛の果てに異形へと変貌した存在だ。これは「ベルセルク」におけるゴッドハンドや、<使徒>の変容とも重なる。特に、グリフィスがフェムトへと転生する過程は、ピンヘッドの誕生と精神的構造と共鳴している。
なお『ヘル・レイザー』はカトリック的罪と救済、肉体と魂の分離、快楽と苦痛の二元論をテーマにしており、これは「ベルセルク」の深層にある“因果律”や“神の手”の存在論的問いと通底する。
「ヘル・レイザー」© 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
――「ベルセルク」は多くの神話・宗教・文学・映画から影響を受けた重層的作品だが、『ヘル・レイザー』はその中でも特に視覚的・構造的に強い影響を与えたと考えられる。異界の存在、肉体の変容、禁忌の儀式といったモチーフは、両作品に共通する“恐怖の神学”とも呼ぶべき世界観を形成しており、三浦氏の創作における重要な参照点のひとつであったことは間違いないだろう。
『ヘル・レイザー』『ヘルレイザー2』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2025年7月放送