実話! 北朝鮮に潜入し金正日に接見した韓国の一流スパイが、衝撃の裏取引を知る!! 骨太サスペンス『工作 黒金星と呼ばれた男』

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ライター:齋藤敦子
実話! 北朝鮮に潜入し金正日に接見した韓国の一流スパイが、衝撃の裏取引を知る!! 骨太サスペンス『工作 黒金星と呼ばれた男』
©2018 CJ ENM CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED

 

絶好調の韓国映画、今度のテーマは南北の近代裏面史だ!

韓国映画、絶好調である。2018年は光州事件を題材にした『タクシー運転手~約束は海を越えて~』とチャン・ジュナン監督の『1987、ある闘いの真実』という2本の骨太なエンターテインメント映画が公開され、圧倒的な存在感を見せた。2019年に入ると、5月に既報の通り、格差社会を皮肉ったポン・ジュノの『PARASITE(英題)』がカンヌ映画祭で韓国映画初のパルム・ドールに輝き、7月はいよいよユン・ジョンビンの『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』の登場である。

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『工作』は2018年のカンヌ映画祭で上映され、私はそのときに観たのだけれど、序盤は普通のスパイ・サスペンスのように始まり、韓国近代史の裏面をエンターテインメントとして面白く見せながら、終盤になって、あっと驚く大どんでん返しがあって、これには本当に仰天した。それまでのスパイ・サスペンスだけでも十分に面白かったのに、この映画はただのスパイ映画ではないのだ。そこに感心した。感動したと言ってもいい。

90年代の南北朝鮮を舞台に繰り広げられる、実話ベースの骨太スパイ劇!

主人公は、国軍情報司令部少佐パク・ソギュン(ファン・ジョンミン)。1992年、中佐への昇進目前に、国家安全企画部(元KCIA)からスカウトされた彼は、軍を退役し、実業家に転身する。実は安全企画部室長チェ・ハクソン(チョ・ジヌン)の指揮下、黒金星(ブラック・ヴィーナス)というコードネームを持つスパイとなり、北朝鮮が核兵器保有の証拠を探る任務に就いたのだ。

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まずは、実業家として韓国に潜入している北のスパイに会い、彼を信用させ、ついで北京駐在で外貨稼ぎの責任者を務めているリ・ミョンウン(イ・ソンミン)に接触し、信頼を得ること。つまりは北朝鮮の権力中枢へ潜入することだ。95年、北京に飛んだパクは、急遽、現金が必要となったリ所長に呼び出され、共同事業を立ち上げることに成功する。

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そんな彼に疑いの目を向けるのは国家保衛部から出向しているチョン・ムテク課長(チェ・ジフン)だ。リ所長と関係を深めたパクは、様々な難関を突破して、ついに平壌で最高指導者キム・ジョンイルとの面会が実現することになるのだが……。

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“顔 vs 顔”対決! 温かいファン・ジョンミン × 厳しいイ・ソンミン

スパイ映画の見どころは、なんといっても敵と味方、探る側と探られる側の虚々実々の駆け引きにある。『工作』で言えば、主人公を演じるファン・ジョンミンと、対するイ・ソンミンとのがっぷり四つの演技だ。

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温かみのあるファン・ジョンミンの人間味と、決して本心を表に出さない厳しいイ・ソンミンの、顔と顔の対決。二人の視線と視線の絡み合い、顔の皺ひとつの動きも写し撮る撮影が素晴らしい。俳優の演技だけではなく、自在なカメラの動きを可能にした重厚なセット、実写を合成して作り上げたリアルな平壌市内の風景、見事というほかない。

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監督のユン・ジョンビンは1979年プサン生まれ。軍隊内部のいじめをテーマに、大学の卒業制作として撮った『許されざるもの』で2005年に長編デビュー。カンヌ映画祭ある視点部門で上映された後、プサン映画祭で観客賞などを受賞し、注目を集めた。他に、チェ・ミンシク、ハ・ジョンウの『悪いやつら』(2012年)、ハ・ジョンウ、カン・ドンウォンの『群盗』(2014年)などがある。

さて、ここから先はネタバレを含むので、まっさらな状態で映画を楽しみたい方は読まないでください。

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心が熱くなるスパイ映画! 韓国映画人の意識の高さと強靱な精神に脱帽!!

実は、あることがきっかけで、リ所長はパクの正体に気づいてしまう。けれども、すでに抜き差しならない関係になっていた二人は、“同じ船に乗った同志”として運命を共にすることになる。『工作』の真のテーマが現れるのは、ここからである。

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敵が味方に、味方が敵になるコペルニクス的大転換の後、パクとリ所長は、自分の属する陣営を超え、北か南か、敵か味方かという対立を超え、祖国を憂う真の愛国者、“浩然の気”を共有する士大夫として、心と心で結びついていく。『工作』が、スパイものというジャンル映画を踏襲しながら、『タクシー運転手~』や『1987~』に連なる、権力に対峙する映画だというのはこの点にある。

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見終わって心が熱くなる。こんなに感動するスパイ映画は珍しい。韓国映画人の意識の高さ、強靱な精神に脱帽である。

文:齋藤敦子

『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』は2019年7月19日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー

『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』

北朝鮮に潜入した韓国の工作員が見た、北の真実と祖国の闇とは? いま暴かれる歴史の裏側…。
実話に基づく、衝撃の問題作!

制作年: 2018
監督:
キャスト:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • 意思は貫くが、運命には逆らわない レッドフォード流“アウトローの美学”と“ジャズ”『さらば愛しきアウトロー』