意思は貫くが、運命には逆らわない レッドフォード流“アウトローの美学”と“ジャズ”『さらば愛しきアウトロー』

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ライター:森本康治
意思は貫くが、運命には逆らわない レッドフォード流“アウトローの美学”と“ジャズ”『さらば愛しきアウトロー』
『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

 

偉大なキャリアを総括! レッドフォード出演作へのオマージュ満載

無法者、はみ出し者、ならず者――「アウトロー」という言葉が持つ意味は、本来あまりいい印象のものではなかった。しかし名優ロバート・レッドフォードが、そんな既成概念を覆したと言ってもいいかもしれない。彼は『明日に向って撃て!』(1969年)で強盗犯サンダンス・キッドをクールに演じて、粗野なイメージだったアウトローというキャラクターに洗練されたダンディズムをもたらした。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

映画におけるアウトローのイメージアップ(?)に大きく貢献したレッドフォードの主演最新作にして俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』(2018年)は、彼がこれまで演じてきた反逆児的なキャラクターを総括するロマンティックなクライムドラマである。

本作は<The New Yorker>に掲載された、実在の銀行強盗フォレスト・タッカーの記事に基づいている。しかし監督を務めたデヴィッド・ロウリーにとっては、実話に忠実であることよりも「敬愛するレッドフォードのために映画を撮ること」が重要だったのではないかと思ってしまうほど、全編にわたってレッドフォードの出演作へのオマージュが込められている。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

例えば銀行強盗の際の「帽子に口髭(つけ髭)」というフォレストの風貌は、『明日に向って撃て!』のサンダンス・キッドを彷彿とさせるし、映画後半では馬に乗るシーンも用意されている。暴力ではなく頭脳と話術で“仕事”を成功させるという点では、『スティング』(1973年)で演じた詐欺師ジョニー・フッカーとも共通するものがある。仲間とのチームプレイといえば『ホット・ロック』(1971年)や『スニーカーズ』(1992年)を思い出すし、若き日の脱獄シーンでは『逃亡地帯』(1966年)の映像が使われている。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

このように、彼がこれまで演じたアウトローたちの姿が次々とフォレストに投影されていき、長年レッドフォードの活躍を見続けてきたファンの胸を熱くする。

主人公の生き様を音楽的に表現した濃厚なサントラは必聴!

『さらば愛しきアウトロー』オリジナル・サウンドトラック音楽:ダニエル・ハート
発売元:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3318
価格:2,400円(税抜)

『さらば愛しきアウトロー』がロウリー監督からレッドフォードへのラブレター的な作品だとするならば、音楽(サウンドトラック)はレッドフォードへのラブソングと言ったところだろうか。

スコアの作曲を手がけたのは、『St. Nick』(2009年)以降、ロウリー監督の全ての長編作品で音楽を担当しているダニエル・ハート。自身のバンドDark Roomsでの芸術性の高い音楽で知られる彼は、前作『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(2017年)でやや難解な音楽を作曲していたが、今回は耳馴染みのよいメロディアスなジャズ・スコアを聴かせてくれている。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

レッドフォードのアウトロー映画といえば、『明日に向って撃て!』のバート・バカラックの音楽とB・J・トーマスの主題歌、『スティング』のスコット・ジョプリンのラグタイムとマーヴィン・ハムリッシュのスコアなどが印象的なので、80年代初頭が舞台の『さらば愛しきアウトロー』も、シンセ・スコアよりも生楽器によるジャズ・サウンドがよく似合う。複数の流麗なメロディを使い分けて、「スリル」と「ロマンス」と「自由」を愛するフォレストの生き方を音楽的に表現する手法も見事にキマっている。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

アウトローのロマンが凝縮された、「When You Find Something You Love」(サウンドトラックアルバム17曲目)と「Rub-A-Dub-Dub」(同21曲目)のドラマティックなサウンドは必聴である。

レッドフォードが体現してきた「アウトローの美学」を珠玉の懐メロとともに

スーパー16フィルム(16ミリフィルムの映像記録部分を音声トラック部分にまで広げ、画角を広げたもの)で撮影した映像からハートのジャズ・スコアまで、70年代の雰囲気で統一された本作は、劇中で使用される挿入歌も60~70年代のものが強い印象を残す。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

サウンドトラックアルバム収録曲で言えば、スコット・ウォーカーの「30世紀の男」やザ・キンクスの「ローラ」といった懐メロの選曲に嬉しくなるが、物語終盤で使われたジャクソン・C・フランクの「ブルース・ラン・ザ・ゲーム」がとりわけ心にしみる。

「僕がどこへ行ったとしても、憂鬱な気分は変わらない。人生も愛もギャンブルみたいなものだけど、僕もいつか年を取って、何かに挑戦したりしなくなるのだろう」……というような歌詞がフォレストの姿に重なって、束の間切ない余韻に包まれる。しかし彼は「その時が来るまで、やりたいことをやるだけさ」と自分のゲームを続けていく。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

この「自分の意志は貫くが、運命には逆らわない」という生き方こそ、レッドフォードが数々の映画の中で体現してきた「アウトローの美学」なのではないかと思う。そんな彼の美学は、ダニエル・ハートのスタイリッシュな音楽にも影響を与えているはずだ。

文:森本康治

『さらば愛しきアウトロー』は2019年7月12日(金)より全国公開

『さらば愛しきアウトロー』

レッドフォード俳優引退作!
16回の脱獄と銀行強盗を繰り返し、誰ひとり傷つけなかった74歳の紳士フォレスト・タッカーの、ほぼ真実の物語。
愛と犯罪と逃亡の一大エンターテインメント!

制作年: 2018
監督:
音楽:
キャスト:
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