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実録! 60回銀行強盗をした紳士的犯罪者の映画化『さらば愛しきアウトロー』 適役のレッドフォード…引退宣言は信じないぞ!!

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ライター:#大倉眞一郎
実録! 60回銀行強盗をした紳士的犯罪者の映画化『さらば愛しきアウトロー』 適役のレッドフォード…引退宣言は信じないぞ!!
『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

顔がすべてだ

いい顔が欲しい。毎朝顔を洗ったあと、しみじみと鏡に映った自分の顔を眺めると、スッキリしたいい男なのだが、その後エレベーターの中の鏡、街のウィンドウ、出先のトイレで改めていい男具合を確認しようとすると、なぜかくたびれたハゲが登場する。毎日これが繰り返されるのが不思議でしょうがない。自宅の洗面所の鏡に特殊加工がされているらしい。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

そんな私は「いい男」と言われたこともないし、「いい顔」だとも言われない。いい顔の方が私は嬉しい。人を安心させ、人に信用され、人から恨まれないからだ。

ロバート・レッドフォードは若い時からやんちゃな役でも、みんなから愛された。拳銃を撃ちまくっても、詐欺しか能がなくても人気者。ツヤツヤでハツラツとしていて、可愛くもあり、精悍でもある。人に愛される顔というのは、あの顔。そしてやっぱり笑顔になった時が一番輝く。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

そんな笑顔がいつまでキープできるかが問題だが、いい役者はいい歳の取り方をして、いい顔のおじいさんになる。いい顔のおじいさんの笑顔にはどんな人間でもガードを下げる。私はもうおじいさんと呼ばれても全くおかしくない年齢になったが、人様にわざわざお見せするような顔になれていないのが不本意である。

引退するわけがない

今回、彼はこの作品を最後に引退すると発表したが、私は信じていない。役者に引退なんてあるのかね。しかし、もし本当に引退するとすれば、今回の作品はピッタリはまった。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

ほぼ実話。1980年代初め、銀行強盗を繰り返して、逮捕されては脱獄し、また銀行強盗するという人生を送ったフォレスト・タッカーというイカした爺さんがいた。この爺さんの犯罪は銀行強盗といえばその通りなんだが、拳銃はチラ見せするものの、一度も発砲したことがない。もちろん人を傷つけたこともない。にっこり笑って札束をバッグに詰め込んでいただき、しかも「あの人は悪い人じゃない、紳士だもん」とまで言わせることができて、不幸になる人間がいない。いい商売としか言いようがない。

60回以上の銀行強盗、16回の脱獄。そんなことをやってのけたんだから、フォレスト・タッカー本人も笑顔の素敵な爺さんだったに違いないと写真を探したが、一枚しか出てこないし、私が望んだ顔をしていなかった。これはもちろん本人のせいではないが、ちょっとがっかり。しかし、写真には写らないトーン・アンド・マナーが身についていたんだろう。それをロバート・レッドフォードがちょっと磨いて、「笑顔が素敵すぎる銀行強盗の爺さん」に仕立て上げた。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

いい加減稼いだだろうから、もう銀行強盗はやめて、親しくなったお婆さんとゆっくり余生を楽しみなさいよ、と口に出さずアドバイスしてみたが、聞く耳持たん。どうもお金のためというより、人生を楽しむために銀行強盗という職業を選んだとしか思えない。あるいは逮捕されてから、どうやって脱獄するのかを考えるのが楽しい?

フォレスト・タッカーは2004年に83歳で刑務所にて死亡したが、ロバート・レッドフォードももうすぐ83歳。確かにこの作品を最後に引退ということになれば、タイミングとしてはベスト。しかし、フォレスト・タッカーは刑務所で死んだのだから、現役の犯罪者として逝ったということになる。ロバート・レッドフォードが今回の作品を心の底から楽しんでいたことはスクリーンから伝わってきて、嬉しくなるのだが、そんなに楽しく仕事をした人間がやめられるか? 芝居をしない人生が考えられるか?

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

私は予言するが、ロバート・レッドフォードは引退しない。「俳優を引退するとは言ったが、仕事をやめるとは言ってない」とまず宣言して、製作はやめないと言い始める。そのうちに「本当にこれが最後」と言って、製作・監督・主演で一本作る。そのあとはもう誰もやめるということを信じなくなって、俳優に戻る。

それで責めるような人間はいないから、安心して一休みして欲しい。

周りを固める豪華なキャスト

タッカーに惹かれながらも逮捕しようと駆けまわり、空振り三振ばかりの刑事にケイシー・アフレック。タッカーが銀行強盗だとわかっていながら愛してしまう美しいおばあさんがシシー・スペイセク。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

タッカーの相棒にダニ・グローヴァー。そして、トム・ウェイツ。監督は『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(2017年)のデヴィッド・ロウリー。製作は本人、ロバート・レッドフォード。

『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

『明日に向って撃て! 』(1969年)『スティング』(1973年)の匂いをそこいら中に振りまきながら、出来上がったこの作品。引退はしないはずだが、観ておくべき映画でしょ。

文:大倉眞一郎

『さらば愛しきアウトロー』は2019年7月12日(金)より全国公開

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『さらば愛しきアウトロー』

レッドフォード俳優引退作!
16回の脱獄と銀行強盗を繰り返し、誰一人傷つけなかった74歳の紳士フォレスト・タッカーの、ほぼ真実の物語。
愛と犯罪と逃亡の一大エンターテインメント!

制作年: 2018
監督:
出演: