女を殺したい男と死にたいSM嬢の残忍で美しい一夜 村上龍原作&ミア・ワシコウスカ出演のサイコ・スリラー『ピアッシング』

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ライター:BANGER!!! 編集部
女を殺したい男と死にたいSM嬢の残忍で美しい一夜 村上龍原作&ミア・ワシコウスカ出演のサイコ・スリラー『ピアッシング』
『ピアッシング』© 2018 BY PIERCING FILM. LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

原作は村上龍! あのミア・ワシコウスカがマゾ風俗嬢を好演!!

村上龍による同名小説(1997年刊)を原作に、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年~)のミア・ワシコウスカ、『ファースト・マン』(2018年)のクリストファー・アボットを主演に迎えて映画化されたサイコスリラー『ピアッシング』が2019年6月28日(金)から公開中だ。

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本作の主人公は、幼い我が子を見ていると殺したくなる! という救いようのない殺人衝動を持つ男リード(アボット)。それを解消するためにデリバリーSM嬢を呼び出しホテルで殺そうとするのだが、なんと出勤してきた嬢(ワシコウスカ)は自殺願望のあるめんどくさい不思議っ子だった!!

……という、笑っていいのか我慢したほうがいいのか判断しかねる設定に、なぜかグッときてしまったジャンル映画ファンは少なくないはず。そして皆さんがまず想起したのは、同じく村上龍原作を三池崇史監督が映画化した最恐サイコホラー『オーディション』(2000年)だろう。

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不純な動機で女性と出会った野郎は体に穴を開けられたり切り刻まれたりするぞ! というのは洋邦を問わずホラー/スプラッター映画のお約束だが、この『ピアッシング』も冒頭からそんな雰囲気が充満していて、さっそく嫌な気分になる(褒めてます)。公式のストーリー解説からはサドマゾ的な展開が予想できるが、果たしてどこまで“見せて”くれるのか?

あのテーマ曲が鳴り響く! 散りばめられたジャーロ映画テイスト

ところが本作では、70~80年代のジャーロ映画(イタリア発のホラー/スラッシャー映画)への愛が炸裂。突然『サスペリアPART2』(1975年)や『シャドー』(1982年)のテーマ曲をぶっ込んできたりするものだから、ニコラス・ペッシェ監督は掴みどころがないというか底の知れない人である。

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劇中では日本未ソフト化のジャーロ作品『The Lady In Red Kills Seven Times(英題)』(1972年)のサントラからも何曲か使用しているようで、なんとも筋金入りのジャーロファンだ。

凶器としてのアイスピックやハサミ、黒い革手袋といった小道具もジャーロのお約束。マリオ・バーヴァやダリオ・アルジェント、ルチオ・フルチといった巨匠監督たちからの影響は明らかだが、とはいえジャーロ的な展開を期待していると肩透かしを食らう。

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まず印象的……というか思わず突っ込みたくなるのは、まるで香港の街並みを切り取ったかのような小窓がびっしりと並ぶビル群だ。この俯瞰映像、あえて安っぽくしてあるのかミニチュア感が丸出しで、なんとなく中銀カプセルタワービルやGUNKAN東新宿ビルなどの昭和っぽさを想起してしまった。

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日本人作家原作ということで東京のマンション群をイメージしただけかもしれないが、この映像のおかげで物語自体がドールハウスの中で起こっているように見えるというか、なかなか体験したことのない違和感が味わえる。

イタリア経由、韓国行き? 様々な要素を込めたマッシュアップ映画

主人公リードは生まれながらの変態というわけではなく、ミソジニスト(女性らしさを嫌悪する人)気味な彼の殺人衝動の要因となった過去のトラウマらしきシーンもドラッギーに描かれる。じっとりと重い映像の中に性的な倒錯を引き起こす要素が散りばめてあり、現実と妄想/幻覚の境界も曖昧だ。このあたりはデヴィッド・クローネンバーグ監督からの影響もあるかもしれない。

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他にも、スプリット・スクリーン(ブライアン・デ・パルマ監督などが多用する映像手法で、画面を複数に分割する表現技法)が印象的だが、デ・パルマ監督の『殺しのドレス』(1980年)はアメリカ産ジャーロと言われていたりする。監督自身も「映画のマッシュアップをやりたかった」みたいなことをどこかで語っていたが、こうやって掘り下げていくうちにネタ元同士がつながっていくのは、映画ファンとしては楽しみどころの一つだろう。

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もちろん村上龍の小説をジャーロ風味で映画化しただけでなく、本作は韓国映画、例えばポン・ジュノやパク・チャヌクらの影響も感じさせる。韓国勢がハリウッドには真似できない作風で世界から評価されているように、新人のペッシェ監督の目標もそのラインにあるではないだろうか。なおジャーロからの影響という点では、クリストファー・ノーランやニコラス・ウィンディング・レフンのような雰囲気も感じさせるので、お好きな人は相当ハマるのでは?

『ピアッシング』© 2018 BY PIERCING FILM. LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ちなみにペッシェ監督の次回作はハリウッドリメイク版『呪怨』とのことで、この先しばらくはその名前を耳にすることになりそうだ。

『ピアッシング』は2019年6月28日(金)より公開中

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『ピアッシング』

主人公は幼い娘をアイスピックで刺したいという衝動を抑えるためにSM嬢の殺害を計画。しかし呼び出した女はいきなり自分自身を傷つけはじめる。刃を外に向ける者と内に向ける者は、やがて共鳴していくのだろうか…。

制作年: 2018
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