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ナチスが恐竜に乗って攻めてくる『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』 NO MORE自粛!! ティモ・ヴオレンソラ監督が語る

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ライター:#市川夕太郎
ナチスが恐竜に乗って攻めてくる『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』 NO MORE自粛!! ティモ・ヴオレンソラ監督が語る
ティモ・ヴオレンソラ監督

 

第二次世界大戦で敗れたナチスドイツの残党がロケットで月の裏に逃げ隠れ、着々と逆襲の機会をうかがっていた……という不謹慎かつブッ飛んだアイデアをもとに、資金面でもクラウドファンディングなど映画ファンのサポートを得て2012年に公開されるや、世界中で大フィーバーを巻き起こしたフィンランド発のSF映画『アイアン・スカイ』。

そんな超問題作の続編『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』が、前作から7年を経てついに登場! 身長190cmオーバーの巨体に繊細かつパンクなハートを持つティモ・ヴオレンソラ監督に、映画ライター・市川力夫がインタビューを敢行した。

「僕らの住む世界は、もう維持なんてできないところまで崩壊しつつあるんだ!」

『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』ティモ・ヴオレンソラ監督―『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』は痛快なアクション映画でありながら、たくさんのシリアスなテーマを含んだ映画ですよね。前作で起きた地球での核戦争後に人々は月面に住むようになっていますが、そこでの生活はありえないほどの貧困差や難民の受け入れ規制など、我々の世界のような問題を抱えています。こういった、世界の現状をそのまま作品に盛り込むことは最初からかなり意識していたんでしょうか?

© 2019 Iron Sky Universe, 27 Fiims Production, Potemkino. All rights reserved.

ティモ・ヴオレンソラ(以下ティモ):もちろん、難民問題は念頭にあったよ。我々の住む世界は本当に崩壊しつつあるよね。環境、人間、もう維持なんてできないところまで来ているんだ。何か別の方法を模索しないといけない。それが月で生活するというところに繋がっているんだ。でも、ぼくがこの映画を作る前にいちばん意識したのは、まずこの世界のすべてのバックボーンとなっている「宗教」だ。観てもらったならおわかりのとおり、宗教を揶揄するようなところのある作品だからね。

ティモ・ヴオレンソラ監督

―徹底的に、すべての宗教を等しく揶揄してましたね。同時に問題提起もしっかりとされてます。

ティモ:ぼくがこの映画を作る前に考えたのは、将来、宗教というのはどういうことになっていくのか、ということ。いままでの宗教は、自分たちの先祖や周りの世界を理解する手立てとして存在していた。でも、これからは今の世界、つまり「デジタル社会」に合わせた宗教が生まれてくるのではないか? というようなことを思っていたんだ。

© 2019 Iron Sky Universe, 27 Fiims Production, Potemkino. All rights reserved.

―それでスティーブ・ジョブズさえも標的に。

ティモ:そう(笑)。それから「宗教」と繋がるんだけど、「指導者」というのも意識したんだ。今の世界を作り上げてきた指導者たちは、一体どんな人々だったのか。この映画のストーリーは「これまで世界を作り上げてきた指導者たちが、実は“ひとつの計画”を画策していたら?」という発想で作り始めた。前作のアイデアをより大きくしてみた、という感じだよね。

「戦いを終えた人々が次世代にバトンを引き継ぐ“人類の進化”の物語でもある」

―侵略SFだった1作目からガラッと変わり、今作はアドベンチャーものになりました。視覚的にも前作と比べるとかなりカラフルになっています。

ティモ:1作目は視覚的にもストーリー的にも侵略戦争で、今回は前作をひっくり返して、生と死、創造、若さ、というものを視覚的にも見せたかった。だから前作ではダークな色味だったけど、今回はカラフルにして生命を感じられるものにしている。前作とは同じコインの表と裏みたいな関係だよね。

ティモ・ヴオレンソラ監督

―物語は、ブリル協会(エドワード・ブルワー=リットンの小説「来るべき種族」に触発されて結成されたオカルト結社。ナチスとの関係も深い)からの引用が多く、1作目のUFOをはじめ、地球空洞説やレプタリアン(ヒト型の爬虫類)などが登場しますね。

ティモ:ナチスを深掘りしていくと、「ナチスはこんなのにも興味を持っていたんだ!」と驚くことがたくさんあった。リサーチの中でこれまで知らなかったものはたくさんあったけど、映画に入れ込んだら面白そうなものはすべて要素としてブチ込んだんだ。

© 2019 Iron Sky Universe, 27 Fiims Production, Potemkino. All rights reserved.

―1作目が公開された際のインタビューで「女性キャラクターを際立たせることを意識した」というようなことをおっしゃっていたんですが、今作ではそれがより顕著になっていますよね。

ティモ:前作からの流れで、今回は母と娘のストーリーを描きたいと思ったんだ。それは世代交代の話であり、自分の戦いを終えた昔の世代の人間が次の世代にバトンを引き継ぐという、人類の進化についてのストーリーでもある。だから、主人公であるオビ・ワシントン(ララ・ロッシ)は、母であるレナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)と真逆のキャラクターにした。若さというのはいつだって年上の人々や親に対して反抗することだよね。それこそが若者の仕事と言ってもいいぐらいで(笑)。でも、ただ単に反抗するだけじゃなく、オビは母親から受け継いだ思想を持っているんだ。

ティモ・ヴオレンソラ監督

「常にメインストリームへのアンチテーゼとして、パンクの精神で映画を作っているよ!」

―ところで、前作の企画がスタートしたのが2006年ですよね?

ティモ:そうだね。

―今回の続編までの間に、多くの大作SF映画が公開されましたよね。マーベル・シネマティック・ユニバースの1作目『アイアンマン』は2008年なので、まだ公開前でした。その後もJ・J・エイブラムスがリブートの『スタートレック』(2009年)と『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)を撮り、『ジュラシック・パーク』シリーズの続編である『ジュラシック・ワールド』(2015年)、『エイリアン』シリーズのプリクエル『プロメテウス』(2012年)、『ブレードランナー2049』(2017年)……。でも、本作を観るとそういったメインストリームな映画への憧れみたいなものはあまり感じなくて、むしろアンチテーゼを感じたんですが、監督としてはどうでしょう?

© 2019 Iron Sky Universe, 27 Fiims Production, Potemkino. All rights reserved.

ティモ:もちろん、そういう想いで作ったよ! いまのメインストリームのSF映画は、いつも「もったいないなぁ」という想いで観ているんだ。それこそ昔の『スター・トレック』や『スター・ウォーズ』にしても、社会批判がどれもふんだんに盛り込まれていた。僕にとってのSFというのは、勇敢に世界の現状を反映させたストーリーを語るものなんだ。でも、いまのSF作品は慎重になりすぎていると思う。ものすごくお金をかけているし、中国やアメリカを筆頭に世界中の観客に響かないといけないから、たくさんの制約が生まれる。もう、がんじがらめさ! そういうSF映画の現状への対抗というのは常に考えているよ。ヨーロッパ、もっと言うとフィンランドの映画監督として何ができるだろう? って。で、僕がやっているのは、好きなだけタブーを潰していくこと(笑)。とりあえず真っ向からぶつかっていくことが大事だと思っているんだ。

―だからなのか、監督の作品にはパンクな精神を感じます。

ティモ:そう、パンク! パンクという表現で作品を評されるのは嬉しいよ。パンクの姿勢は重要だからね! いま映画に必要なのはパンクなんだ!! 70年代にパンクが登場したとき、前時代のアリーナ的ロックバンドがいて、そこに反抗するかのようにストリートからパンクが生まれた。そんなことが映画の世界にも起きてほしいと、ずっと思っているんだ。映画の規模が大きくなりすぎている今だからこそね。

© 2019 Iron Sky Universe, 27 Fiims Production, Potemkino. All rights reserved.

―では最後の質問なのですが、『アイアン・スカイ』シリーズのさらなる続編は、どんな作品になりそうですか?

ティモ:次の舞台は火星なんだ。「ソ連が火星に基地を作っていた」という(笑)。でも、根底のテーマとしては環境問題なんだよ。ただ、作品のスタイルはまだ教えられないな! 1本目は風刺、2本目はアクション、3本目は……まさかのミュージカルかもしれないよ!?

ティモ・ヴオレンソラ監督

『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』は2019年7月12日(金)より全国公開

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『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』

月面ナチスの侵略から30年後、ナチスが恐竜に乗って攻めて来たっ!!
1.5億円のカンパで超大作が完成!空前絶後のSFアクション・エンターテインメント!

制作年: 2019
監督:
出演: