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リーアム・ニーソンが田舎の雪かきおじさんを演じるだと……!?『スノー・ロワイヤル』は全方位から予想を裏切る、怪作リベンジ・アクションだった!

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ライター:#BANGER!!! 編集部
リーアム・ニーソンが田舎の雪かきおじさんを演じるだと……!?『スノー・ロワイヤル』は全方位から予想を裏切る、怪作リベンジ・アクションだった!
『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

最強の復讐オヤジことリーアム・ニーソンが最新作『スノー・ロワイヤル』で演じるのは、なんと田舎町の除雪作業員!

妻子と慎ましく生きてきた“模範的な市民”が、息子の命を奪った犯罪者たちに天誅を下す……というストーリーに間違いはないのだが、本作はいつものリーアム印のリベンジ・アクションではなかった!!

リーアム・ニーソン、第三のキャリアの狼煙をあげる怪作!?

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

これまでリーアム・ニーソンの出演作品を観て「へへへ……」みたいな乾いた笑いが漏れてしまうことがあっただろうか。いやまあ確かに強すぎて笑っちゃうみたいなことは多々あったが、この『スノー・ロワイヤル』はえげつないブラックジョークの連続に思わず苦笑してしまう、そんな作品なのだ。

言わずとしれた『96時間』シリーズ(2008年~)をはじめ、『レクイエム』(2009年)『アンノウン』(2011年)『フライト・ゲーム』(2014年)『誘拐の掟』(2014年)『ラン・オールナイト』(2015年)などなど、近年はリベンジしたりされたり殺しのスキルを発揮したりする、スリリングなサスペンス・アクション作品で活躍してきたリーアム。多くの映画ファンが「彼の第二のキャリアはこの路線だな」と思い込んでいたところにぶち込まれたのが、本作『スノー・ロワイヤル』である。

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

米コロラド州の田舎町キーホー(架空の街)の除雪作業員が息子を殺した犯罪組織に復讐する……というストーリーが発表された時点では、誰もが「うん、シチュエーションはちょっと変わってるけどいつものリベンジものだな」と確信したことだろう。過去を精算して隠居生活を送っている元諜報機関のエージェントとか、トラウマを抱えた元特殊部隊員とか、リベンジものと考えればいくらでも面白そうな設定が思い浮かぶ。

しかし『スノー・ロワイヤル』は、そんな映画ファンの予想(期待)を鮮やかに裏切る怪作だった。これはもしかして、リーアム第三のキャリアの始まりなのか!?

遠慮のないブラックジョーク連発!「タランティーノ版『96時間』」の惹句に偽りなし

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

本作は『パルプ・フィクション』(1994年)を手がけたマイケル・シャンバーグがプロデューサーということもあってか、本国では「タランティーノ版『96時間』」なんて称賛されているらしい。

実際、不意をつく“うっかり死に(殺し)”シーンや、しょうもない掛け合いを正面から長映しするカメラワークはタランティーノっぽいし、雪に覆われた田舎町を舞台にエグい暴力と乾いた笑いが炸裂するコーエン兄弟の『ファーゴ』(1996年)とも共通点が多い。

言ってしまえば“悪趣味”ということなのだが、リーアムは相変わらず「自分、不器用ですから……」みたいな演技なので、映画としての不思議度はこちらのほうが断然上だ。

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

しかも「不器用ですから」モードの割に、リーアムは後先考えずチンピラたちをバンバン殺害していく。お世辞にも手際が良いとは言えないものの、良心の呵責みたいな描写もなく、とにかく「あいつら許せないから殺したい」という純粋な復讐心に淡々と従うだけなのがちょっと怖い。

物語の冒頭、市から“模範市民賞”を授与されて「恐縮でっす」みたいにはにかむシーンも全てこの違和感を醸成するためだったのか? と考えると、ハンス・ペテル・モランド監督の性格の悪さ……もとい、よく練られた脚本ということが分かるだろう。オリジナル作品『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(2014年)からモランド監督が続投。本作のプロデューサー、シャンバーグさすがである。

良くも悪くも人間くさいネイティブ・アメリカンたちに注目

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

やや意地の悪いアジア人描写や意外性を重視したLGBTQ描写など、最近のハリウッドではあまり見られない北欧のボンクラ監督(褒めてます。他例:『アイアン・スカイ』シリーズのティモ・ヴオレンソラなど)らしいシーンもあるが、死地での高笑いやいびつな状況で発露するアツい兄弟愛など、ジャンル映画ファンが燃えるシーンも随所に盛り込まれている。

物語をややこしい方向に持っていくネイティブ・アメリカンたちは同じく豪雪地帯を舞台にした『ウインド・リバー』(2017年)にも登場したが、西部劇などで作り上げられた「やられ役」「頑固で嘘つかない」みたいなネイティブ・アメリカンのイメージを、いい意味でぶち壊した監督の心意気には脱帽だ。

とにかく、人が死ぬたびに名前とニックネーム(+信仰する宗教のシンボル?)が表示される演出など、とことんブラックジョークに徹した『スノー・ロワイヤル』は、初夏にピッタリの映画と言えるだろう。爽やかなバイオレンス描写とオフビートな笑い、そして壮大な雪景色が血に染まる様子は体感温度マイナス3度くらいの効果はあると思うので、ぜひスクリーンで楽しんでほしい。

『スノー・ロワイヤル』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年1月放送

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『スノー・ロワイヤル』

模範市民賞を受賞した除雪作業員。ある日一人息子を地元の麻薬組織に殺され、復讐を決意する。彼は除雪作業で身に付けた土地勘と体力、犯罪小説で学んだ知識で、一人また一人と追い詰めてゆく!

制作年: 2019
監督:
出演: