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スカーレット・ヨハンソンの魅力をもっとも引き出したツートップ作品『それでも恋するバルセロナ』&『ブーリン家の姉妹』

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ライター:#椎名基樹
スカーレット・ヨハンソンの魅力をもっとも引き出したツートップ作品『それでも恋するバルセロナ』&『ブーリン家の姉妹』
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スカーレット・ヨハンソンは、現在もっとも売れている女優のひとりだろう。なんせ『アベンジャーズ』の一員だ。ブラック・ウィドウ役で、ハリウッド映画の中心たるマーベルコミックスものに多数出演している。

いつも何かに翻弄され困惑していたスカヨハ

私は数年前、どの映画がきっかけだったか忘れてしまったが、スカーレット・ヨハンソンの色気と可愛さにすっかりメロメロになって、彼女が出演する映画を BS、CS で見つけると片っ端から観ていた時期があった。ゴージャスな雰囲気はマリリン・モンローを彷彿とさせ、セクシーアイコンとしての分かりやすさはマンガチックですらあり、マーベル映画の世界に違和感なくハマることも納得できる。

しかし、彼女の初期作品を何作か見ていく中で、私が感じていたスカーレット・ヨハンソンの魅力は、そのゴージャスさとは真逆の“ガール・ネクスト・ドア”な無邪気な一面にあり、そのギャップであった。それはしゃべり出すと、声がこもっていてモゴモゴと話すのでより際立つ。

そういうキャラクターだったからこそ、初期の彼女は「ちょっとおバカ」だったり「とても純粋な性格」の役柄が目立った。そのため、この時期のスカーレット・ヨハンソンには、眉間に皺を寄せ口を半開きにした表情ばかりが印象に残っている。いつも何かに翻弄され困惑していた。

それは『アベンジャーズ』の戦闘するスーパーヒロインとは真逆な、ドン臭いスカーレット・ヨハンソンだ。しかし、この表情こそに、ゴージャスなルックスにもかかわらず無邪気で人間らしい、彼女の魅力が発揮されているように思えるのだ。

スカヨハの魅力をもっとも引き出している私的ツートップ作品

彼女が翻弄され困惑しまくる、言うなれば私的にスカーレット・ヨハンソンの魅力がもっとも引き出されていると思う映画のツートップが、『それでも恋するバルセロナ』(2008年)と『ブーリン家の姉妹』(2008年)である。

『それでも恋するバルセロナ』

まず『それでも恋するバルセロナ』は、スカーレット・ヨハンソンがベラボーに可愛いので鑑賞注意だ。彼女は友人と二人でバルセロナに旅行に来たアメリカ人役。「芸術かぶれ気味」の女性で、「モラルに厳格なアメリカ社会」を倦み、情熱的なヨーロッパ社会に憧れている。

スカーレットはパーティーで画家にナンパされる。画家は、数ヶ月前に痴話喧嘩の末、同じく芸術家の妻にナイフで刺されたことが、バルセロナ美術界で話題の種になっているいわくつきの人物だ。紆余曲折の後、スカーレットは画家と同棲を始める。そこに、画家の奥さんが帰ってくる。その画家と奥さんを演じるのが、それぞれハビエル・バルデム(!)とペネロペ・クルス(!)という俄然アク強めの二人なのだ。もうこれは、翻弄されずにはいられないではないか!

3人は一緒に暮らし始め、セックスも共有した生活を送る。ペネロペ姉さんとスカーレットのラブシーンもあり必見だ。ハビエル・バルデムはハンサムではないが色気があり、ペネロペ・クルスとスカーレット・ヨハンソンを同時にものにするプレイボーイ役も納得できる。それは『ノーカントリー』(2007年)同様、見る者に“内側にとぐろを巻く狂気”を感じさせるからだ。実際、この画家は頭のタガが外れていて、スカーレットは翻弄されるが、それ故に“芸術家らしい”と感じ惹かれていく。

さらに、ペネロペ姉さんは圧巻の演技で、ハビエルの上をいく狂気の芸術家になりきっている。彼女は夫であるハビエルをナイフで刺すほどの激情家だ。黙っていれば、ペネロペの顔は少女のようなあどけなさがある。顔の大きさはスカーレットの半分くらいしかなく、猫のようにかわいい。しかし、一旦ぶち切れてハスキーなスペイン語でまくし立てると、途端に新大久保の韓国料理店のおばちゃんたちのような迫力が立ちのぼる。ペネロペ・クルスらしい土着的で荒々しい魅力が、嫉妬に狂えば相手を殺そうとする芸術家役にぴったりとはまっている。

芸術かぶれ気味のアメリカ人に、本当にイカれた芸術家たちが手に負えるはずもなく、スカーレットは眉間に皺を寄せ、口を半開きにして困惑しまくる。ここで「ちょっとおバカ」な設定が効いていて、勘違いが勘違いを呼び、この映画はとにかく全編に渡って笑える。

『ブーリン家の姉妹』

一方の『ブーリン家の姉妹』は非常に重いテーマの映画だ。この作品は16世紀のイギリスで、国王のヘンリー8世の妃になる野心のために、国教をカトリックからプロテスタントに改宗させてしまうアン・ブーリンと、その妹のメアリー・ブーリンを描く史実に基づいた物語。頭が良く野心に満ちた姉アン・ブーリンをナタリー・ポートマンが、フェミニンな魅力に溢れ優しい心を持つメアリー・ブーリンをスカーレット・ヨハンソンが演じる。

スカーレット演じるメアリーはおバカではないのだが、姉のアン役を務めるのがナタリー・ポートマンである。そのキャラクターのコントラストは露骨なほどで、“賢いが色気にかける姉”と、“色気ばかりが目立つ妹”ということが際立つキャスティングだ。

姉のアンは、何せ国王に宗派を変えさせるほどの猛烈な上昇志向の持ち主だ。周囲が振り回されないはずがない。また、国王のヘンリー8世はただただ女好きの恋愛中毒者で、自己チュー2人に翻弄され困惑したスカーレットは眉間に皺を寄せて口を閉じ忘れる。そんな『ブーリン家の姉妹』はスカーレットが魅力的だというだけでなく、映画としても非常に面白く、映像は美しい。クライマックスシーンは衝撃的で、それはナタリー・ポートマン史上もっとも苛烈なシーンである。

スカヨハにはアメコミのスーパーヒロイン役は無機質すぎる?

SF映画は、合う俳優とそうでない俳優がいる。ナタリー・ポートマンは『ブラック・スワン』のインタビューで、「『スター・ウォーズ』の演技が酷評されて“ナタリー・ポートマンは終わった”と噂されたが、この映画に救われた」と語っていて、そんなに厳しいものかと驚きだった。

SF映画やアクション映画など、マンガ的な世界の一員になることは俳優にとって、ある種の賭けなのかもしれない。失敗すれば違和感は際立ち、イメージを大きく損なうだろう。そして、成功したとて元のイメージに戻れなくなるリスクも高いのではないか。

しかし、ハリウッド映画の超大作の筆頭がSF作品であり、そこでの成功が俳優のキャリアのピークである。スカーレット・ヨハンソンは『アベンジャーズ』シリーズ(2012年~)でそのハードルを見事にクリアし、スーパースターとなった。しかし、そこでの彼女は個性に欠けるように思える。SFのスーパーヒロインは、スカーレットが演じるにはあまりにも無機質だ。

文:椎名基樹

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