リーアム・ニーソンの“必殺除雪人” バイオレンスと笑いの交錯をサントラが引き立てる『スノー・ロワイヤル』

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ライター:森本康治
リーアム・ニーソンの“必殺除雪人” バイオレンスと笑いの交錯をサントラが引き立てる『スノー・ロワイヤル』
『スノー・ロワイヤル』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジョージ・フェントン
レーベル:Rambling RECORDS
発売日:2019/06/05
品番:RBCP-7406 
定価:2,400円(+税)
リベンジ・アクション映画に主演しまくり、すっかり“キレると怖いパパ”というポジションが定位置になったリーアム・ニーソン。主演最新作『スノー・ロワイヤル』も一見すると同じくリベンジものだが、実は予想外のストーリー展開とアンビバレンツなBGMがばっちりハマる怪作だった!

こんなリーアム映画、観たことない! 困惑必至の異色作が誕生

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

「娘を助けるためなら、エッフェル塔でも壊してみせる」と宣言し、愛娘をさらった人身売買組織を壊滅させた『96時間』(2008年)の元CIA工作員ブライアン・ミルズ。疎遠だった息子の危機に立ち上がる『ラン・オールナイト』(2015年)の殺し屋ジミー・コンロン。報酬10万ドルの誘惑に負けて怪しい仕事を引き受けるも、家族の命が危ないと知るや「家族と“プリン”は私が守る!」と一気にヒーローモードに移行した『トレイン・ミッション』(2018年)の保険セールスマン、マイケル・マコーリー。

家族のために戦うリーアム・ニーソンは、いつだってカッコいい。彼の主演最新作『スノー・ロワイヤル』も、「犯罪組織に人違いで息子を殺された父親が“必殺除雪人”となり、悪党どもを片っ端から仕置していくリベンジ・アクション」なのだと思ったら、今回はどうも様子がおかしい。

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

登場人物は、ギャングも警察もマンガチックなクセモノ揃い。ニーソン扮する除雪作業員ネルズ・コックスマンが悪党を始末しても、犯罪組織は見当違いの相手に報復を仕掛け、彼の思惑と異なるところで縄張り争いが激化。そして抗争に巻き込まれて誰かがお亡くなりになる度に、味わい深すぎる追悼演出が挿入される……。

「一体なんなんだコレは?」という展開が観る者を困惑させ、いつしか「こんなリーアム映画は初めてだ!」と、独特なユーモアセンスの虜になってしまう異色作である。

容赦ないバイオレンスと素朴なBGMがまさかの好相性!

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

本作はマニア人気の高いハンス・ペテル・モランド監督のノルウェー映画『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(2014年)のセルフリメイク作品であり、この映画全体を覆う独特な雰囲気も、英語圏のキャストでオリジナル作品を極めて忠実に再現したものである。しかし、その情報を知らなかったとしても、ジョージ・フェントンが作曲したユニークな音楽が流れ始めた時、「これは普通のアクション映画ではないな」とピンとくるのではないかと思う。

『遠い夜明け』(1987年)や『フィッシャー・キング』(1991年)などでアカデミー賞作曲賞にノミネートされているフェントンは、ケン・ローチ監督との長年にわたるコラボで知られる英国出身のベテラン作曲家。社会派ドラマからコメディ、サスペンス、文芸ドラマまで幅広いジャンルの音楽を手がける彼のフィルモグラフィーの中で、最も担当する機会が少ないのがアクション映画である。そう考えると本作へのフェントンの参加はかなり意外だが、彼の音楽はバイオレンスと笑いが交錯するストーリー展開と抜群の相性を見せている。

『スノー・ロワイヤル』©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED

まずオープニングの音楽から、いきなり意表を突かれる。アコースティックギターで奏でられる素朴なメロディのスコアは、アクション映画というより、中年除雪作業員のユーモアとペーソスに溢れた人間ドラマの音楽である。どうやらこれが本作のメインテーマらしく、ネルズが仕置した下っ端の悪党を“処分”する時にもこのテーマ曲が流れたりするので、観ているこちらは笑っていいのか、戦慄すべきなのか、よく分からない気分になる。この不思議な感覚が本作の魅力と言っても過言ではないだろう。

また、フェントンは『アース』(2007年)、『フローズン・プラネット』(2011年~)などネイチャードキュメンタリーの音楽にも定評があるので、本作の舞台であるコロラド州キーホーの寒々とした風景描写や、地域に残るネイティブアメリカンの伝統文化のさりげない描写もなかなか趣がある。一方、アクションシーンではシンセサイザーのパンチの効いた電子音を巧みに操り、一触即発の危険なムードをうまく演出している。筆者は御年70歳のフェントンがここまで本格的にシンセ・スコアに取り組むとは思わなかったので、彼の引き出しの多さと若々しい感性に驚嘆した次第である。

リーアム・ニーソン主演のアクション映画の固定概念を覆す、ジョージ・フェントンの意外性に満ちた音楽をぜひ本編とサウンドトラック・アルバムで共に楽しんで頂きたいと思う。

文:森本康治

『スノー・ロワイヤル』は2019年6月7日(金)より公開

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『スノー・ロワイヤル』

模範市民賞を受賞した除雪作業員。ある日一人息子を地元の麻薬組織に殺され、復讐を決意する。彼は除雪作業で身に付けた土地勘と体力、犯罪小説で学んだ知識で、一人また一人と追い詰めてゆく!

制作年: 2019
監督:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • リーアム・ニーソンの“必殺除雪人” バイオレンスと笑いの交錯をサントラが引き立てる『スノー・ロワイヤル』