とにかく怖い! 麻薬カルテル
肺がんを宣告された高校の化学の先生が愛する家族に財産を残すため、どういうわけか上質なドラッグを大量生産。そこから起こる予想だにしないビッグトラブルを丹念に描いた、メキシコ麻薬カルテルものの金字塔TVシリーズ『ブレイキング・バッド』の放送開始から今年で10年! 90年代あたりから徐々に映画や小説などで取り上げられてきた麻薬カルテルも、今じゃずいぶん一般化してまいりました。
https://www.youtube.com/watch?v=8Rp2ulhINPo
一応説明しておくと、麻薬カルテルとは麻薬の製造から売買までを取り仕切るおっかない組織のこと。主な生息地はコロンビアやメキシコ。とくに2000年代からはメキシコに存在する無数の麻薬カルテル同士が無軌道に抗争をおっぱじめ、「メキシコ麻薬戦争」と呼ばれるほどの一大事に発展。爆弾テロや見せしめの首チョンパなど手口は残虐極まりなく、警察だろうが政治家だろうが関係なく抱え込んで無限に増殖し、町や村をまるごと乗っ取ることも……。もちろん隣接するアメリカにも多大な影響を及ぼし、ついには映画や音楽、小説などのカルチャー全般にまで浸透。
映画の有名どころでは、実際の事件や実在の人物をモデルにしながらアメリカとメキシコの麻薬密輸事情を描き、アカデミー賞でも多数の賞を受賞したスティーヴン・ソダーバーグの『トラフィック』、うだつの上がらない男がカルテルの麻薬取引の金を持ち逃げしたことから始まる恐怖を描いたコーエン兄弟の『ノーカントリー』なんかがありましたよね。
イーストウッド、スタローンも「麻薬カルテルもの」に参戦!
ちなみに現在公開中の『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』では、麻薬ビジネスから密入国ビジネスに手を広げたカルテルの現状もふんだんに描かれていました。
また、ドキュメンタリー作品も多く、麻薬カルテルの大物たちの功績を歌い上げる“ナルコ・コリード”という音楽ジャンルを追った『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』や、市民を巻き添えにしてきた大カルテル“テンプル騎士団”と敵対する自警団に密着した『カルテル・ランド』では、ショッキングにもほどがある現実を生々しく捉えていました。
というわけで、もはや一大ジャンルとして定着してきた「麻薬カルテルもの」ですが、まだまだ今後も続く予定。
まず注目したいのは、クリント・イーストウッド監督の最新作『運び屋』。こちらは90歳で逮捕されたという実在した麻薬カルテルの運び屋ジジイ、レオ・シャープの人生を映画化したもので、イーストウッド自らレオ・シャープを演じるという奇跡のような作品。すでに公開されている予告編を見ると、そこには老体をプルプル震わせながら警察に職質さられちゃってるイーストウッド御大の姿が!
そして極めつけは、現在撮影中のシルヴェスター・スタローン最新作『ランボー5(仮)』。こちらはまだ正式な情報はほぼないものの、なんと50人の武装した人身売買カルテル集団VSランボーという噂……! 待ち遠しくて気が触れそう!
文・市川力夫