あきらかに『スピード』なサスペンス・パニック設定
さて『ブレット・トレイン』というよりも、明らかに『スピード』シリーズ(1994年ほか)を意識した設定の本作。しかしながら舞台が超特急という、事前にしっかり敷かれたレールの上をそのまま一本道で走り続けるスタイルのため、「高速を維持しなければならない」という緊張感は薄い。一応中盤には、「先に待ち構えているトンネルを抜ける際、車体に受ける抵抗に対し出力を上げなければ今の速度を維持できないが、無理に出力を上げると内部機構がオーバーヒートするかもしれない」などの修羅場イベントがいくつか提示される。
が、台詞で語られる状況の深刻さに反して、実際にはどの脅威もあっさり淡々とクリアされる上、そもそも低予算早撮りのアサイラム映画なので、<視覚的にド派手なパニック演出>自体が最終盤まで出し惜しみされ、どちらかというと会話劇中心の単調な画作りが続く。超特急列車を作品の舞台に据えた試みは新鮮だが、どこかで見たような車内のセットも併せ、基本的には普段のアサイラム製パニック映画と代わり映えしない内容だ。
キャラ造形やパニック演出など高評価(当社比)ポイント解説
一応、爆弾を仕掛けた凶悪犯のうちの一人が、まるでギャグ漫画のようにふざけた末路を迎える点は、(どこまで意図したものかは知れないが)なかなか面白かったところ。その他、乗客の安全を優先し、あえて凶悪犯に屈する道を選んだ鉄道王の、好感が持てるキャラクター造形などは評価ポイントだろうか。クライマックスには当社比で及第点のパニック演出も用意されてはいる。
さすがに両手を上げてオススメはできないが、クライマックスで見られるパニック展開のような見所が、序盤~中盤にももう少しだけ多ければ、また評価は違ったかもしれない……そんな惜しさを感じなくもない、アサイラム版『ブレット・トレイン』だ。
『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年4月放送
『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』
アメリカ西海岸を結ぶ最新鋭のリニア新幹線。LA発の超特急ティブロンに、「爆弾を仕掛けた」という謎の犯人からの脅迫が届く。時速200マイル以下に減速すると爆発するというのだ。満員の乗客がパニックに陥る中、乗り合わせていた退役軍人のケスラーが危険な爆弾解除に挑む。
監督:ブライアン・ノヴァク
出演:トム・サイズモア ラショッド・フリーラヴ ライアン・ヨンウン・キム
制作年: | 2022 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年4月放送