類人猿型AI兵器「メカエイプ」誕生
本作を語る上で欠かせないのが、目玉の類人猿型AI兵器・メカエイプである。登場直後は類人猿型怪獣エイブラハムそっくりに擬態しているが、攻撃を受けると外装の毛皮がはがれ、中からメカニカルな本体が現れる、という一連の演出は、『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)に登場する<にせゴジラ>および<メカゴジラ>を彷彿とさせる。
そんな巨大モンキー2匹の怪獣プロレスは案外おもしろく、迫るエイブラハムに対しミサイルやガトリングガンで応戦したり、「相手の頭をその辺に立っていた風車のブレードに推しつけ、ジリジリ切り刻もうとする」メカエイプの戦闘スタイルは、エンタメ精神を感じ好印象だ。
『ゴジラxコング 』と併せて観れば味わい倍増?
ただし、やはり制作規模の都合か、怪獣たちがしっかり画面に映る時間がかなり短めで、物足りなさを感じる点も否定できない。話が一気に動き、本格的に怪獣プロレスが展開する後半はまあまあの内容に仕上がっている一方、いつものことながら前半はとっつきにくい会話劇が中心の作りとなっている。
ほか、序盤の伏線をそれなりに綺麗に回収したクライマックスでの決着のつけ方など、脚本周りはアサイラム映画なりに最低限、ちゃんとしたまとまりを作ることには成功しているといっていいだろう。少なくとも、同社がたまにやる投げやりなディザスター・パニックものやSFエイリアンものよりかはずいぶんと志が高い部類に入る。
動きらしい動きのない画面の中で、ひたすら設定解説に終始している前半こそ決して褒められたものではないが、冒頭と後半にはところどころ「おっ」と思わせる見所が存在する一本である。もちろんそれは普段の、「そもそも見所自体ろくに存在しないタイプのアサイラム映画」との相対評価を含む上、『ロード・オブ・モンスターズ』シリーズの中では、おそらく一作目の方がおもしろいかと思われるが。
なお本作は続き物だが、単体でも問題なく見られるストーリーにはなっているため、興味がある方は『ゴジラxコング 新たなる帝国』の前に、ぜひ一度本作を鑑賞していただきたい。
文:知的風ハット
『ロード・オブ・モンスターズ 怪獣大決闘』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年3月放送
『ロード・オブ・モンスターズ 怪獣大決闘』
宇宙物質の影響で巨大化した類人猿型怪獣・エイブラハムがワシントンを破壊。その戦闘力に注目した米軍は極秘で類人猿型AI兵器・メカエイプを開発するが、テロリストに奪われてしまう。基地から核弾頭を奪いシカゴ市内へ向かうメカエイプに対し、軍はエイブラハムと戦わせる作戦を決断する。
監督・脚本:マーク・ゴッドリーブ
出演:トム・アーノルド アンナ・テルファー リサ・リー
制作年: | 2023 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年3月放送