身体を売る少女と余命わずかな殺し屋の逃避行 エル・ファニング主演『ガルヴェストン』は現代のフィルム・ノワール

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ライター:BANGER!!! 編集部
身体を売る少女と余命わずかな殺し屋の逃避行 エル・ファニング主演『ガルヴェストン』は現代のフィルム・ノワール
『ガルヴェストン』© 2018 EMERALD SHORES LLC –ALL RIGHTS RESERVED
エル・ファニング&ベン・フォスター共演! 偶然出会った底辺を生きる男女が明日を掴もうと足掻く姿を描く、世にも美しいフィルム・ノワール『ガルヴェストン』は上半期のダークホース作品! なんと監督は『イングロリアス・バスターズ』で強く美しいユダヤ人女性ショシャナを演じたメラニー・ロランだ!!

アクション映画に非ず! 美しい映像で逃避行を描くノワール

『ガルヴェストン』© 2018 EMERALD SHORES LLC –ALL RIGHTS RESERVED

冒頭、なにやら重そうな病の宣告をされそうになり、思わず逃げ出したロイ(ベン・フォスター)。あきらかにアウトローな雰囲気を醸し出している彼はダーティな仕事、いわゆる犯罪組織の歯車として動くチンピラだ。かたや娼婦のロッキー(エル・ファニング)も、実家から幼い妹を連れ出してロイと行動を共にする行き当たりばったりな少女である。

こんな2人が登場する本作だが、恋愛要素をプラスしたクライムアクション映画だと思って観ると、ちょっと期待を裏切られるので要注意。派手なアクション要素はほとんどなく、余命いくばくもないチンピラと生きていくために体を売る少女のつかの間の逃避行を、まるで絵画のような美しい映像で描いたノワール作品なのだ。

メラニー・ロランが引き出した女優エル・ファニングの真価

『ガルヴェストン』© 2018 EMERALD SHORES LLC –ALL RIGHTS RESERVED

子役時代からみずみずしさを失わないエルの魅力を最大限に引き出してみせたのは、『イングロリアス・バスターズ』(2009年)や『人生はビギナーズ』(2010年)など女優としてのキャリアも豊富なメラニー・ロラン監督。ストーリーの構成要素に目新しさはないものの、終始ドライな映像の中で際立つエルの浮世離れした美しさは、鑑賞前とのギャップを補って余りある収穫だろう。

あどけなさの残るエル(今年21歳になったばかり)はロッキーの置かれた状況の悲惨さや異常さを際立たせていて、ヒステリーを起こしたり嗚咽を漏らして号泣する熱演は、明らかに女優としてのステージを引き上げた感がある。そして、どんなに屈強なコワモテ男を演じても微妙に小物感が漂ってしまうベンも、こういう“人生一方通行”な役柄がよく似合う(褒めてます)。

最小限の展開でヒリヒリとした緊張感をキープする見事な脚本

『ガルヴェストン』© 2018 EMERALD SHORES LLC –ALL RIGHTS RESERVED

そんな2人の絶妙なバランス感は、中盤の地味な展開の緊張感をキープし最後まで物語を牽引していく。本作の原作小説『逃亡のガルヴェストン』(早川書房刊)の著者は『マグニフィセント・セブン』(2016年)やドラマシリーズ『TRUE DETECTIVE』の脚本を手がけるニック・ピゾラットで、本作でも(大人の事情により)変名で脚本を担当。奇をてらわない最小限の展開で心をぐいぐい揺さぶってくる脚本は、鑑賞後に深い余韻を残してくれる。

劇中、青く美しい海がたびたび印象的に映し出されるが、海には気持ちを少し軽くしてくれるのと同時に「なんとなかなる(どうとでもなれ)」という危険な効果が伴うもの。底辺から這い出そうと足掻くロイとロッキーの間に漂っていた静かな諦観が、やがて小さな希望に変わったとき、もっとも残酷な現実がふたりに襲いかかるのだった……。

衝撃的な結末、そこに芽吹いた小さな希望

『ガルヴェストン』© 2018 EMERALD SHORES LLC –ALL RIGHTS RESERVED

思わず「えっ、このシーンそれで終わり? いや、なんかもっとこう……あるでしょ!?」とツッコみたくなるほど、ロラン監督の演出に分かりやすいサービス精神は皆無。あくまでリアルな表現に徹して観客を容赦なくどん底に突き落としつつ、意外な展開で少しだけ心をふわっと持ち上げておきながら、最後の最後に意味深なラストカットで超モヤモヤさせるという、控えめに言ってもドSな仕様である。

ともあれ、真っ青な海辺に佇む真っ赤なドレス姿のエル・ファニングはそれだけで体験する価値のある“作品”であり、鑑賞後にじっとりと余韻に浸れる映画を求めている人には間違いなくオススメの映画だ。ちなみにエンドロールでは、多くのアーティストにカバーされてきたBIG STARの“あの名曲”が流れるのだが、若い恋心を歌った切ない歌詞を事前に知っておくと、周囲が引くくらい大号泣できるかもしれない。

『ガルヴェストン』は2019年5月17日(金)より公開。

『ガルヴェストン』

身体を売って生きるしかなかった若い娼婦と、病に冒された殺し屋。明日をも知れぬ2人の、危険な逃避行。

制作年: 2018
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