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飛行機事故からの凶悪ゲリラ遭遇!? 試されるのは機長の人間力! 盛り過ぎ脱出サバイバル『ロスト・フライト』ジェラルド・バトラーの変遷

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ライター:#多田遠志
飛行機事故からの凶悪ゲリラ遭遇!? 試されるのは機長の人間力! 盛り過ぎ脱出サバイバル『ロスト・フライト』ジェラルド・バトラーの変遷
『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.
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誇り高きパイロット、子煩悩な父親、苦難に立ち向かうヒーロー

悪天候、計器異常、不時着……航空パニックとして十分なサスペンス要素に、ゲリラや殺人犯の存在など、様々な要素を掛け合わせることによって、脱出サバイバルとしても盛り沢山な展開になっている。飛行機トラブル→ゲリラとの戦闘→民間人の身を守る→救出脱出への方法を探る……等々、次から次へとバトラーや乗客に降りかかり直面する苦難は実にバラエティに富んでおり、全編にわたって緊迫感が持続する内容になっている。

しかも本作では、ただ敵を倒せばよいのではなく、乗客の安全を第一に考えなくてはならないというハンディキャップマッチ状態で、バトラーが次々とトラブルに対処していかなければならないのが、彼の映画でもまだあまり見たことのない、新鮮な要素だ。

『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.

ゲリラの情け容赦のない人質の扱いや、バトラーたちの遭難と同時進行で描かれる航空会社内での緊迫したやりとり、乗客救出に派遣された傭兵組織的な“対策班”の描き方など、非常時の細かいディテールや戦闘シーンなどが、本作ではかなりリアルに描かれているのも特徴だ。これはジャン・フランソワ=リシェ監督の、アクションシーンをなるべく本物にしたいという意図が反映されている。また、脚本に「甦ったスパイ」などで知られるベストセラー作家、チャールズ・カミングが参加していたり、アクション監修やスタントに元ネイビーシールズが起用され出演者のトレーニングもしているなど、アクションが本格的でリアルなのもうなずける。

『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.

物語を引っ張る本作のもう1つのファクターである、護送中の殺人犯ルイスを演じるのはNetflixのマーベルドラマで、黒人肉体派ヒーローを描いた『ルーク・ケイジ』(2016年~)の主演などで記憶に残るマイク・コルター。その謎めいた過去と、バトラーとの緊張感ある関係性で最後まで物語を引っ張る、もう1人の主役的存在だ。

『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.

そして本作ではバトラーの役柄も、ひと味異なっている。これまで『300』のレオニダス王や、『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年)の潜水艦艦長などに代表されるような、戦闘主体のエージェント的な役柄が多かった。しかし、今作では一般人に近いヒーロー的役柄である。しかも、無事に送り届けなければならない多数の乗客を預かるパイロット。また、亡き妻に代わって1人で娘を育て上げてきた……そんな子煩悩な父親の側面も描かれている。また、彼自身のルーツでもあるスコットランド人の気概というものも出そうとしているように感じられる。ピンチでも軽口を叩いて苦難を乗り切るヒーロー、父親……バトラーの色々な顔を見ることができる。

『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.

バトラー自身からにじみ出る人間力が物語を牽引する

ただし今作のバトラーの役割は、前述の通り大変である。泣き叫ぶ乗客をなだめ、殺人犯と対峙し、テロリストに立ち向かい……。これを説得力のあるものにしているのが、アクションももちろんだが「俺は機長だ! 乗客を安全に送り届ける責任がある!」と自ら死地に飛び込んでいくという、責任感ある機長の人間描写だろう。

いつしか乗客たちも、救出にきた傭兵たちも、そして殺人犯マイクでさえも、バトラーの指示に従って物事が動いている(そして我々観客もそれを違和感なく受け止めている)。このように、何かバトラーの演技からは、有無を言わせぬ説得力というか信頼感、もっと言えば「人間力」がにじみ出てくる。これは機長という役柄を抜きにしても、演じる彼自身の人間的魅力が大きく影響しているのではないだろうか。

『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.

MCU作品などのキャプテン・アメリカが持つようなヒーローのリーダーとしての「格」、そんな能力がもともとバトラーには備わっているように思える。この様々な状況、職業を演じながら常にヒーローの顔を描けるというのは、そうそう並の役者にできることではないだろう。

本国ではコロナ禍で製作~公開が延期されていたという『ロスト・フライト』だが、実はすでに続編プロジェクトが進行中だそうで、とても気になるところである。

『ロスト・フライト』© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.

バトラーはバットマンやジェームズ・ボンドなど、代表的なヒーロー役の候補になっているという話題も絶えずあがっている。個人的には同じくスコットランド出身ながらイングランドのヒーロー、『007』シリーズでジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーを継いで、ボンド役を演じてほしいものである。バトラーなら新たなボンド像を造りだしてくれそうだ。

今後も彼の動向から目が離せないが、本作『ロスト・フライト』は、おそらくバトラー演じるヒーロー像の新たなステージの第1歩的な作品になるだろう。

文:多田遠志

『ロスト・フライト』は2023年11月23日(木・祝)より全国ロードショー

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『ロスト・フライト』

東京を経由しシンガポールからホノルルへ、新年早々悪天候が予想される中、会社の指示で難しいフライトに臨むトランス機長(ジェラルド・バトラー)は、ホノルルの地で離れて暮らす愛娘との久々の再開を待ち焦がれていた。しかし、離陸直前に移送中の身の犯罪者・ガスパール(マイク・コルター)の搭乗が告げられ、悪天候だけでなく予定外のフライトに暗雲が立ち込めていた。

かつては大手航空会社に在籍していた実力派パイロットのトランス。順調なフライトを迎えたかに思えたが、フィリピン沖上空で、突如激しい嵐と落雷に巻き込まれ機体の電気系統が機能を停止。通信も途絶えコントロールを失ったトレイルブレイザー119便に、トランスは意を決し着水の準備に入るも、寸前で目の前に広がった孤島へ奇跡的に不時着した。一命をとりとめたトランス機長を含む乗客17名だったが、そこは凶暴な反政府ゲリラが支配する世界最悪の無法地帯・ホロ島だった。

トランスは、通信機が途絶えた飛行機と乗客を残し、島からの脱出の手がかりを求め、犯罪者のガスパールと共に探索に向かう。危険な雰囲気が立ち込める廃倉庫で見つけた電話を配線し、なんとか娘を介して現在地を知らせることに成功するが、その隙に迫ったゲリラたちによって、乗客と乗務員が人質に取られてしまう最悪の展開に。

一方、消息不明となった119便の事態を重く見たトレイルブレイザー社は、外部から元軍人の危機管理担当者として腕利きのスカースデイル(トニー・ゴールドウィン)を招集。トランスの決死の報せを受けたスカースデイルは、対策室の反対を押し切り乗客の救出へ傭兵チームを派遣する。

刻々と危険が迫る囚われた乗客たちの身を危ぶみ、トランスは救助を待たず、元傭兵の過去を持つ犯罪者であるガスパールと手を組むことを決意。難攻不落のゲリラ拠点へたった二人で乗客の救出に向かう。生死を懸けた究極の脱出サバイバル、トランスとガスパール、そして乗客たちの行方は・・・。

監督:ジャン=フランソワ・リシェ
脚本:チャールズ・カミング J・P・デイヴィス

出演:ジェラルド・バトラー マイク・コルター
    ヨソン・アン ダニエラ・ピネダ トニー・ゴールドウィン

制作年: 2023