巨匠ペドロ・アルモドバル監督、20年越しについにパルム・ドール受賞か?【カンヌ映画祭】

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ライター:齋藤敦子
巨匠ペドロ・アルモドバル監督、20年越しについにパルム・ドール受賞か?【カンヌ映画祭】
ペドロ・アルモドバルが未だにパルム・ドール(最高賞)を手にしていないのは、「カンヌ映画祭の七不思議」である。バンデラスが素晴らしい演技をみせた新作は、星取り表でぶっちぎりのトップだ。

アルモドバル作品、星取り表ではぶっちぎりのトップ!

ペドロ・アルモドバルがまだカンヌ映画祭最高賞<パルム・ドール>を獲っていないことは“カンヌ七不思議”のひとつと言っていいかもしれない(もう1つの七不思議はマルコ・ベロッキオが未だに無冠なことだ)。スティーヴン・ソダーバーグやクエンティン・タランティーノのように、さっと現れ、さっと獲ってしまう監督もいれば、テオ・アンゲロプロスのように、『永遠と一日』(1998年)でパルム・ドールに到達するまで20年もかかる巨匠もいる。

アルモドバルの場合はカンヌ・デビューが少し遅かった。もし、彼の名を世界的にした『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1987年)がコンペティションに出ていたら、ソダーバーグやタランティーノのように、すんなり決まっていたかもしれない。映画祭は時の運が左右する。だが、今年の『痛みと栄光(原題)』は、彼に念願のパルム・ドールをもたらすかもしれない。今のところ、批評家の星取り表では最高得点、ぶっちぎりのトップを走っているからだ。

主人公はアルモドバルの分身のような映画監督サルバドール(アントニオ・バンデラス)。頭痛、腰痛を始めとするあらゆる痛みを抱え、映画が撮れなくなった彼は、家にこもって、苦しみを紛らわすために過去の思い出を綴っている。そんなとき、修復された過去の代表作が上映されることになり、喧嘩別れした主演俳優と再会。彼から勧められたドラッグの力で痛みが消え、ようやく訪れた穏やかな眠りの中で、過去の思い出がよみがえってくる…。

ペドロ・アルモドバル監督

58歳バンデラス、遂にキャリアの頂点か

アルモドバルは優れた美意識を持った技巧派の映画監督だ。才能がありすぎて、ともすると才子才に溺れるきらいがあるほどだ。特に最近の作品では、アイデアが先走って、映画の世界がどことなく上滑りしているような印象があった。

今回はそれがない。自分の半生、映画監督という職業に真摯に向き合っている。何よりも、彼の分身を演じるアントニオ・バンデラスが素晴らしい。バンデラスはアメリカ映画より、スペイン映画に出演しているときの方が何倍も素晴らしいが、盟友アルモドバルの演出を得ての、この初老の監督の演技は、彼のキャリアの頂点になるだろう。

今から20年前、『オール・アバウト・マイ・マザー』でコンペに初登場したアルモドバルは、授賞式の夜、受賞を確信し、意気揚々とレッドカーペットを歩いてきた。それが、式の途中で彼の名前が呼ばれ、賞がパルム・ドールでないと知ったときの憮然とした顔。しかし、今年こそ、最後に笑うのはアルモドバルかもしれない。

文:齋藤敦子(Text by Atsuko Saito)

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