• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • 安藤サクラ×山田涼介インタビュー! 特殊詐欺犯を熱演『BAD LANDS バッド・ランズ』の「善・悪」を超えた“生”に宿るアクション

安藤サクラ×山田涼介インタビュー! 特殊詐欺犯を熱演『BAD LANDS バッド・ランズ』の「善・悪」を超えた“生”に宿るアクション

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#関口裕子
安藤サクラ×山田涼介インタビュー! 特殊詐欺犯を熱演『BAD LANDS バッド・ランズ』の「善・悪」を超えた“生”に宿るアクション
安藤サクラ
1 2

「いろいろな山田涼介を味わえる作品」

――2人が証券会社の営業を装い、お年寄りの家を訪ねて詐欺を働くシーンがある。要するに劇中劇。証券マンを演じているわけだが……。

山田:すごく緊張しました。役の中で役を演じるのって、あまりやったことなかったので。

安藤:あのシーンだけ変に緊張したよね。

山田:すごく噛む日だった。あのときは理由がわからなかったけど、いま思うと緊張してたんだと思います。

安藤:さっき本予告を見たら、ジョーのダテメガネがちょっとズレてた(笑)。

山田:それ全然、意図したことじゃない(笑)。

安藤:いろいろな山田涼介を味わえる作品だと思います。

山田:いろいろな安藤さんも。

安藤サクラ

――タイトルの「バッド・ランズ」とは、植物が生えず、農地としても利用できない、通行も困難な複雑な地形の場所のこと。劇中ではネリとジョーの生きる場所を示すものであり、2人が身を寄せるカフェのようなアジトの名前でもある。

山田:我々のアジト「バッド・ランズ」でのお芝居はすごく楽しかったですね。小道具がたくさんあって、とても広かったので、いろいろな芝居ができる可能性のあるセット。真ん中に棚のついた大きな柱があって、そこをぐるぐるしながら芝居したり。すごくワクワクしましたし、居心地もよかったです。

安藤:セットは本当に千差万別で、曼荼羅(宇崎竜童)たちが住む「ふれあい荘」は、本当に鳩が棲んでいるボロボロのアパート。鳩の羽根、ゴミやホコリがリアルにすごいところで……。忘れられない場所です(笑)

『BAD LANDS バッド・ランズ』©2023『BAD LANDS』製作委員会

――でも、それが曼荼羅たちだけの閉じた世界、桃源郷のような空気を醸し、なんとも言えない空間を作り出している。

安藤:滋賀に組んだ西成のオープンセットも忘れられないですね。ネリが教授(大場泰正)と2人で歩いていると、ぶしつけに西成の人を撮影する輩がいて、私が彼らに「なに撮ってんじゃー!」と叫ぶシーン。あそこ、セットなんですよ。

山田:知らなかった!

安藤:そこにバスをチャーターして、西成の人に来ていただいて。原田監督の世界観には、「ここはアメリカ!?」みたいなものから、「おしゃれ!」なもの、「キッちぃ~!」なものまであって、脚本を読んでいるときには想像もしていなかったセットが現れる面白さがありました。

『BAD LANDS バッド・ランズ』©2023『BAD LANDS』製作委員会

「その人の“生き方”から出てくる動きを“アクション”だと思っている」
「とても刺激的で、毎日楽しく、新鮮な気持ちで臨んでいました」

――本作には、幼い頃からネリを知る廃人同様の曼荼羅役として宇崎竜童、特殊詐欺の道具屋・新井ママ役として天童よしみ、特殊詐欺グループの名簿屋・高城政司役として生瀬勝久など、錚々たる演じ手がお2人と絡んでいく。

安藤:私は宇崎竜童さんの大ファンなので、曼荼羅役が宇崎さんと聞いたときは、めっちゃテンション上がりました。曼荼羅はネリと密接な存在で、ネリは他では出さない感情や温かさを彼の前では表現することが多かったように思います。血が通う時間というか。めちゃくちゃ大事にしたシーンです。

山田:宇崎さんや生瀬さんとのお芝居は、とても刺激的で、毎日楽しく、新鮮な気持ちで臨んでいました。「こいつ、おもろいな」と思ったのは前田航基くん。撮影日は雪が降る真冬で、突っ立っているだけの場面なのに、「緊張する」と言ってずっと汗だくなんです(笑)。それを原田監督にツッコまれたら、怒られている気分になったのか、また汗をぶわっとかいて(笑)。原田監督はうれしそうに笑っていましたね。ムードメーカーじゃないですが、一緒に演じていて楽しかったです。

安藤:この映画、山田くんもそうですけど、宇崎さんも、天童よしみさんも、音楽とともに生きる人がたくさん出演されているんですよね。山田くんはポップス、宇崎さんはロック、天童さんは演歌とジャンルはそれぞれ違うけど。うまく言えませんが、そんな3人はすっげえカッコいいし、共演はとても刺激的でした。

安藤サクラ

――そこには当初から、音楽を映画演出の重要な要素としてきた原田監督の裏設定があるのだと思う。音楽を手掛けた土屋玲子が奏でる繊細だが極太なメロディもまさに意味があるのだ。

最後に、昨今の女性がアクションの主体となる作品が増えた現象について安藤に聞いた。本作では、女性が主体的かつ論理的に暴れる。クライムサスペンスだがアクション映画でもある。ネリの行動は観ていて爽快だが、ほかのアクション映画とは少し異なる印象だ。

安藤:うん、確かに。ほかの映画は暴れ方がきれいですものね! 決してきれいな暴れ方を否定しているわけじゃないですよ。でもアクション映画と言ってもらえてうれしいです。なぜ印象が違うと感じるかというと、たぶん『BAD LANDS バッド・ランズ』は、生きざまのなかのアクションを描いているから。戦闘的アクションの美しさを描く作品とは押し出す部分が違うというか。私はボトルの蓋を開けることもアクションだと思って演じていましたし、その人の生き方から出てくる動きをアクションだと思っているので。

――大義名分のために戦うのではなく、いまを生きるために必要な“動き”=アクションということ?

安藤:そうですね。でも私が「アクション女優だと思っている」というと、九割がた一回笑われるんですよ(笑)。静かな日常のシーンこそ、身体を駆使して、神経を研ぎ澄ませて演じているので、正直、悔しくはあります。すべての芝居は、“日常の動作”から生まれると思っているので。でも、わからないようにやり続けているので仕方ないかな(笑)。笑っちゃうくらいアクション女優という言葉と結びつかないんでしょうね。こういうタイプの日本映画、あまり見たことがないから本作をやりたいと思ったし、憧れたわけです。これからも観る方がフィジカルと日常が別ものだと感じないアクションを、追究していきたいと思っています。

安藤サクラ

取材・文:関口裕子

撮影:落合由夏

ヘアメイク:星野加奈子(新緑団)
スタイリスト:吉田恵

『BAD LANDS バッド・ランズ』は2023年9月29日(金)より全国公開

1 2
Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『BAD LANDS バッド・ランズ』

<持たざる者>が<持つ者>から生きる糧を掠め取り生き延びてきたこの地で、特殊詐欺に加担するネリと弟・ジ
ョー。二人はある夜、思いがけず“億を超える大金”を手にしてしまう。金を引き出す...ただそれだけだったはず
の 2 人に迫る様々な巨悪。果たして、ネリとジョーはこの<危険な地>から逃れられるのか。

出演:
安藤サクラ 山田涼介 生瀬勝久 吉原光夫 大場泰正 淵上泰史 縄田カノン 前田航基
鴨鈴女 山村憲之介 田原靖子 山田蟲男 伊藤公一 福重友 齋賀正和 杉林健生 永島知洋 サリngROCK 天童よしみ / 江口のりこ / 宇崎竜童

監督・脚本・プロデュース:原田眞人
原作:黒川博行『勁草』(徳間文庫刊)

制作年: 2023