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『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』アサイラム・シネマティック・ユニバース最新作

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ライター:#知的風ハット
『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』アサイラム・シネマティック・ユニバース最新作
『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』©2018 TAUT PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.
パロディ映画の宝庫、アサイラム社が贈る“シェアード・ユニバース”作品の最新作。心配しなくてもいい。過去作をそんなに観る必要がない、時間のない現代人にとてつもなく優しいユニバース作品だ。

“映画業界のヒドラ”ことアサイラム、シェアード・ユニバースも押さえる

2019年4月、『アベンジャーズ /エンドゲーム』が日本で公開された。約十年に及ぶ偉大なマーベル・シネマティック・ユニバースの作品群を、三時間で総括した本作によって、劇場は余韻に静まり、だが銀幕は興奮に震え、そして感動する皆様をよそに、一定数の観客が『キャプテン・マーベル』だけ公開時期の都合で見逃したことを後悔しただろう。

ところで、“映画業界のヒドラ”に位置する製作会社・アサイラムもまた、アベンジャーズを標榜するモックバスターを過去に公開している。その名も『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』だ。

同社の『グリム・アベンジャーズ』や『アリスvsモンスター・スクワッド』に続く、言うなら“アサイラム・シネマティック・ユニバース”の最新作に位置する本作は、「童話の主人公達が、チームを組んで巨悪と戦う」という、当時『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に便乗した低予算アクション映画である。当然本家のアベンジャーズとは、製作規模の段階から完全に別物だが、「インフィニティ・ウォーやエンドゲームと違って、過去作をそんなに観る必要がない」「というか過去作とあれこれ設定が変わっているので、真剣に観た方が逆に混乱する」という部分に若干の優位性を感じ取れるだろう。

それはさておき今回は、『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』について語っていこう。

“アサイラム作品らしい”意味で、非常に複雑なシリーズ

『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』©2018 TAUT PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

『グリム・アベンジャーズ』で発生した事件の影響で、童話世界と現実世界が繋がってしまった。

世界征服を企むアトランティスの女王“マグダ”と、小悪党の魔術師“ルンペルシュティルスキン”は、世界を支配する魔法の指輪を狙って、現実世界に潜む指輪の所有者“チャールズ・チャーミング三世”の捜索を開始する。

同時に、現実世界を監視していた“不思議の国のアリス”と“ハッター(帽子屋)”が異変をキャッチ。事態の解決を望む二人は、氷結魔法と剣術に通じる“白雪姫”を蘇生すると、弓矢と二丁拳銃を持つ“赤ずきん”や、催眠魔法が得意な“いばら姫(眠れる森の美女)”と合流。前作より“グリム・アベンジャーズ”を復活して、全員で世界の危機に挑む。

だが、激しい攻防の最中、狡猾なルンペルシュティルスキンの策略で、現実世界から“パラレルワールドの童話世界”に送り戻された白雪姫たち。果たしてグリム・アベンジャーズは現実世界に戻って、マグダとルンペルシュティルスキンの野望を止められるのだろうか……というのが、本作の概要だ。

ルンペルでもランペルでも…真剣に考えてはいけない

一応、本作は『グリム・アベンジャーズ』の“続編”ではあるが、実際の作品群の関係性は非常に複雑だ。

というのも本作には、前作から続いて先述の“ルンペルシュティルツキン”という悪役が登場する。しかし、前作『グリム・アベンジャーズ』に登場するルンペルシュティルツヒェンと、本作『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』に登場するルンペルシュティルツキンは、本人の台詞を信じるなら“別人”である。事実、俳優は勿論キャラクターの性格まで、前作と本作では完全に異なっている。

『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』©2018 TAUT PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

一方で、『アリスvsモンスター・スクワッド』という作品にも同様に、“ランペルシュティルツキン”という名前の悪役が登場する。だが、『アリスvsモンスター・スクワッド』のランペルシュティルツキンと、『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』のルンペルシュティルツキンは、“同一人物”である。

ところが『アリスvsモンスター・スクワッド』の本編において、“『グリム・アベンジャーズ』とは別人であるはずの”ランペルシュティルツキン(ルンペルシュティルツキン/ルンペルシュティルツヒェン)が『グリム・アベンジャーズ』で事件を起こした……と紹介しているので、説明不足や表記揺れの効果も重ねて、初見では混乱を招く可能性がある。

訳注:上記の早口言葉のような解説に目が滑った場合、無理に読む必要はない。

意味不明に聞こえるかもしれないが、作風としてはシンプルな勧善懲悪のアクション・ファンタジーだ。例えば“不思議の国のアリスが、アントマンのように巨大化して敵軍を踏み潰す場面”や、“白雪姫が、自身の能力を使って巨大な氷の壁を生成する場面”という、少し面白い展開も存在する。

『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』©2018 TAUT PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

セットが狭くて役者同士の距離が近い場面が多いので、窮屈な印象を受けないわけではないが、カメラワークでの工夫を意識した……と思わしきカットがちらほら見受けられるのも、出来不出来は別問題として本作の特徴ではあるかと思われる。

オススメかと聞かれたなら返答に詰まる品質の反面、万一あなたが前作や『アリスvsモンスター・スクワッド』を観ているなら、本作の鑑賞を検討するべきではないだろうか。

その場合、ぜひとも本家『アベンジャーズ』を見習って、シャワルマを片手に本作を眺めるスタイルを推奨しておきたい。

文:知的風ハット

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『グリム・アベンジャーズ タイム・ウォーズ』

グリム童話のヒロインたちが邪悪な敵に戦いを挑むファンタジー・アクションの続編。魔法の国と現代のLAを行き来しながら、時空を超えた戦いが繰り広げられる。

制作年: 2018
監督:
出演: