ジャームッシュのゾンビ映画は、ただのゾンビ映画ではなかった【カンヌ映画祭】

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ライター:齋藤敦子
ジャームッシュのゾンビ映画は、ただのゾンビ映画ではなかった【カンヌ映画祭】
『The Dead Don’t Die(原題)』Credit : Abbot Genser / Focus Features © 2019 Image Eleven Productions, Inc.
2020年日本公開の本作は、ジャームッシュから地球への警告か…? ジャームッシュ作品常連俳優も大集結!

ジャームッシュ「ゾンビは自分たちの社会の内側から生まれた恐怖」

2019年の新しい試みとして、開会式の後、およそ600館の映画館で同時上映されたオープニング作品の『The Dead Don’t Die(死者は死なない)』。ジム・ジャームッシュがどんなゾンビ映画を撮るのか興味津々だったが、終わったときのプレスの反応は意外におとなしかった。その理由は、予告編を見て、どストレートなパロディ映画を期待していた向きが多かったためで、さすがはジャームッシュ、普通のゾンビ映画にはしていなかった。

確かに、ある日突然墓場から出現し、人を襲い始めたゾンビたちと、ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・セヴィニーの保安官トリオが戦うという映画の骨組みはゾンビ映画そのものだが、ジャームッシュ独特のオフビートを基調に(テーマ曲はカントリー歌手スタージル・シンプソンが歌う<The Dead Don’t Die>、映画音楽はジャームッシュが担当)、様々なジャンル映画の引用をちりばめた、映画ファン用のお楽しみもある。

特に、ビル・マーレイとアダム・ドライバーのわざと間を外した会話の面白さ。脇をスティーヴ・ブシェミ、ティルダ・スウィントン、トム・ウェイツ、ウータン・クランのRZAら、ジャームッシュの常連や友人たちで固めていて(なんと、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のエスター・バリントも)、彼らから自然にかもしだされる親密さが、ゾンビの出現によって破壊され、“殺るか殺られるかの究極の選択を迫られる”というのが、まさに映画のテーマでもある。

記者会見でジャームッシュは、「怪物が外部から来る恐怖なのに対し、ゾンビは自分たちの社会の内側から生まれた恐怖」だと言った。親しい人たちがどんどんゾンビに染まり、すべてがゾンビ一色になろうとしている社会。単にアメリカだけでなく、地球的な規模で。そのことを、特に若い人々に警告したいと語っていた。

文:齋藤敦子(text by Atsuko Saito)

『The Dead Don’t Die(原題)』は2020年日本公開予定

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『The Dead Don’t Die(原題)』

アメリカの田舎町センターヴィル。3人だけの警察署で働くロバートソン保安官とピーターソン保安官代理は、いつもの他愛のない住人のトラブルの対応に追われていたが、突如、街にゾンビが出現し、思わぬ事態に巻き込まれていく…。

制作年: 2019
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