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この2人は僕らと同じだ! 30代オタク&ビッチの不器用で愛おしいラブコメ Netflix『LOVE ラブ』

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この2人は僕らと同じだ! 30代オタク&ビッチの不器用で愛おしいラブコメ Netflix『LOVE ラブ』
Netflixオリジナルシリーズ『ラブ』独占配信中

ジャド・アパトーと聞いて頭に浮かぶのは『40歳の童貞男』(2005年)、という人が多いだろうか。僕にとっては、リチャード・リンクレイターやケヴィン・スミスに次ぐマンブルコア以前、90年代後半~2000年代前半のUSインディー三大監督の一人だ。

もう少し上のアラフォー世代だと『フリークス学園(原題:Freaks and Geek)』(1999~2000年)という連続ドラマのイメージが強いかもしれない。僕が知ったのは完全なる後ノリだが、このドラマにはブレイク前のジェームズ・フランコや、後に多くのコメディ映画で活躍することになるセス・ローゲンやジェイソン・シーゲル、マーティン・スターが出演している(ジェイソン・シュワルツマンやラシダ・ジョーンズも)。

ジャド・アパトーが手がけるギーク&ビッチの不器用ラブコメ!

Netflixオリジナルシリーズ『LOVE ラブ』(2016~2018年)は、そんなジャド・アパトーが企画・脚本・製作総指揮を務めているラブコメ・ドラマ。1話30~40分程度で、全3シーズンが既に配信中っていう、最近のおこもり生活には最適な内容。

本作の舞台はロサンゼルス。脚本家を夢見ながら映画撮影の現場で子役の教師として働く冴えないオタクのガス(ポール・ラスト)と、ドラッグ&アルコール依存症で恋多きミッキー(ジリアン・ジェイコブス)が朝のコンビニで出会い、スマホを使って連絡を取り、SNSを経由して再び出会う。そんな僕らと同じような時代に生き、変化していく30代の男女関係をスロウに描いたラブコメディだ。

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本作はラブコメといえど、日本の商業恋愛映画にありがちな感動ポルノ的表現はない。監督自身がギークであることを誇りに思い、業界ウケは良いが世間では満足な評価を受けられなかった不遇な時代を過ごしてきたからこそ、丁寧にすくい上げられたキャラクターや、演出・ストーリーを感じることができる。

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“オタクと恋愛経験豊富な女性”といった簡素な対比ではあるものの、もう若者ではなくなった/いられなくなった世代を描く質感はその対比をより明確化させていて、そのあたりも欧米で多くの人に支持されている所以だろう。“若者”の定義というのは非常に曖昧なので各々の尺度で想像・補足するべきとは思うが、少なくとも劇中、奔走する彼らは30代という年齢的なバイアスを感じて、自由さを失いかける。

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身につまされる!? 素直になれない男女の“ほころび”だらけな恋愛

そんな本作、特筆すべきはガスの愛されボンクラ具合だろう。ミッキーに会うことを目的に足を運んだホームパーティでは、ミッキーそっちのけでベースを手にセッションに夢中になったり、休日には友達を集めてアルコールを放り込みながら、映画のテーマ曲を勝手に作る遊びをするなんて、最高じゃないですか。しかし陽気そうに見える彼も、自信があるけれど不器用で、いきすぎた妄想を繰り広げて勝手にへこんだり、思いやりが過剰で相手へのやさしさも自己満足で終わってしまっている。

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そんなガスに対して、ミッキーも自分自身にも相手に対しても素直になれず、仕事も恋愛も遠回りをしてみるけれど、なかなか答えに辿り着けない。挙げ句の果てには向き合うことを放棄してしまい、依存症だということで自分を肯定してアルコールに逃げたり、他の男と寝ちゃったりの始末。それでもどこかキュートで孤独なキャラクターを保っているのは、ジリアン・ジェイコブスの演技の妙だろう。そんなビッチだけどキュートな彼女のセンス際立つルックも要注目。

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ガスにしてもミッキーにしても、自身が未熟であることには無自覚だ。未熟さに気づいていても、そんなの理解してますよっていうポーズをとる。ちょっと諦念に至っていることがクール、という見栄を張る。その見栄がほころびかけ、また糸を絡ませてしまうという不完全な男女関係につながっていく。

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彼らは3シーズンぶんの時間をかけて自分の不完全さを受け入れ、また相手の不完全さを補おうと努力する。その姿は見ている者の心のすみっこを刺激し、どうしたって愛おしく思えてしまうのだった。

文:巽啓伍(never young beach)

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