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Amazonドラマ『ザ・ループ』は望郷を誘うレトロSF! 新『バットマン』のM・リーヴス監督が語る

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ライター:#BANGER!!! 編集部
Amazonドラマ『ザ・ループ』は望郷を誘うレトロSF! 新『バットマン』のM・リーヴス監督が語る
マット・リーヴス/Shutterstock

Amazon Prime Videoオリジナルドラマ『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』が2020年4月3日(金)より配信中だ。本シリーズはスウェーデンのグラフィック・アーティスト、シモン・ストーレンハーグのビジュアルブックから生まれた、鄙びた情景と近未来的なイメージの融合が不思議なSFドラマ。本国ではテーブルトークRPG化(ルールブックやプレイヤーの会話などで進行するテーブルゲーム)もされているだけあって、日本のSFファンの間でもかなり早い段階から話題を集めていた。

本作は、宇宙の謎を解き明かすための地下研究施設“ループ”が存在する町を舞台に、住民たちの奇怪な体験を描く物語。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

そんなドラマ版『ザ・ループ』の製作総指揮を務めた、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)や『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年)の監督として知られ、また新作『ザ・バットマン(原題)』の公開を2021年に控えているマット・リーヴスにインタビューを敢行。シモン・ストーレンハーグというアーティストの魅力、ドラマ化にあたっての脚本のアイデアソース、そして製作に携わったクリエイターたちについてたっぷり語ってくれた。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

「シモンの絵が“物語の出発点”になって、どんどん想像が膨らんでいった」

―シモン・ストーレンハーグ氏のビジュアルブック「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」(グラフィック社刊)のどこに一番惹かれましたか?

自然や人間、そしてノスタルジックな捨てられた機械が入り混じっているような、そういう絵をこれまで見たことがなかったんです。シモンの絵画からは神秘性と哀愁を感じますし、シモンは子供のような視点を持ち続けているようでとても創造性豊かでとても魅力的ですね。

絵画を見ているうち、物語があるように見えてきたんです。まるで氷山の一角だけを見ていて、その先にはもっと巨大な氷山があることに気づかされたような感覚というか。彼の絵画が“物語の出発点”になって、どんどん想像が膨らんでいくような体験でしたね。絵からインスピレーションを受けて物語を作るのは、他の映画やドラマ製作ではあまりない手法だと思いますが、挑戦してみたいと思ったんです。シモンの絵にはそう思わせるほどの強烈な物語性があって、感情移入できます。

―本作はSFドラマの中でも、人間の感情に焦点を当てた物語がとても魅力でした。

そうですね。そのコンセプトは、初めてシモンの絵画を観た時から思い描いていたことです。それは不思議さ、悲しみ、発見、喪失感、それらすべてを独自の視点で捉えて描いていたからでしょう。だからこそ、私たちも物語をただわかりやすく伝えるのではなく、この町の住民たちが体験する奇妙な出来事や、揺れ動く感情を繊細に描こうと思いました。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

―シモン・ストーレンハーグ氏とは、どのように企画を進めていったのでしょうか?

彼の絵画集「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」を映像化することを決めた後、本作のショーランナー(撮影現場の責任者)であり脚本を担当したナサニエル(・ハルパーン)とシモンの顔合わをせしたんです。二人はお互いの価値観もとても似ていたようで、幼いころの話で盛りあがるなど、すぐに意気投合していました。シモンの絵画は、彼が歩んできた人生や価値観が描かれている作品だと思っていたので、彼とナサニエルが共感し合えることが何よりも大事だったんです。価値観を共有できていなかったら、この作品は生まれていなかったかもしれません。あの二人を繋ぎ合わせられたことが何よりも嬉しかったですね。

―絵画を映像化する上で大変だったことは何でしょうか? ナサニエル氏にはどんなアドバイスを?

私は今回の作品では製作総指揮として、ナサニエルの相談役を務めました。ナサニエルはシモンと初めて会った日から、たしか1週間ぐらいで脚本を完成させたんですよ。そこから物語の細部に目を向けて、さらにナサニエルのイマジネーションを引き出せるように、彼とディスカッションを重ねていきました。このドラマはとても繊細でエモーショナルな物語になるように目指していたので、彼が作り上げた話を一緒に振り返りながら、そのゴールに向かっていけるよう寄り添いました。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

「素晴らしい才能を集めることができたし、映像作家同士の繋がりでここまで来れたことがとても嬉しい」

―才能あるキャストやクルーが揃いましたが、どのように声をかけていったのでしょうか?

興味深いことに、シモンの絵画は映画製作者の間でカルト的な人気を得ていました。非常に刺激的で、映画的なイメージがあるからだと思います。なので映画製作関係者は、この企画に誰もが興味を持ってくれました。ある時、友人の監督たちにこの企画について話したことがあったのですが、私たちがシモンのビジュアルブックの映像化の権利を持っていたことに驚いていましたし、その中には映像化を目論んでいた人もいたので、かなり落胆していましたね。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

ナサニエルが最初の脚本を書き終えたとき、私は友人のマーク・ロマネク(『わたしを離さないで』[2010年]ほか)に連絡を取りました。彼はとても優秀な映画監督であり、映像で物語を伝えることに長けた人物なので、この企画も気に入ってくれると思ったんです。彼は世界最高峰のミュージックビデオ監督でもあり(マイケル・ジャクソン、マドンナ、レニー・クラヴィッツなど世界的なミュージシャンの映像を手掛ける)、素晴らしい映像作家でもありますが、作品選びに慎重なタイプなので、オファーを受けてくれたらラッキー、くらいの気持ちでいました。

そこで彼にこの企画を説明した際に、シモンの絵画がベースになっていることを伝えると、「シモンの絵画は大好きだし、このアイデアは素晴らしい。脚本を読んでみるよ」と好反応を示してくれて。その後、脚本を読んだマークは物語をかなり気に入ってくれて、企画に参加してくれることになりました。

そこから、マークの人脈で素晴らしいスタッフやキャストが集まってきたんです。マークの監督作品『ストーカー』(2002年)で撮影監督を務めた、ジェフ・クローネンウェス(デヴィッド・フィンチャー監督『ソーシャル・ネットワーク』[2010年]と『ドラゴン・タトゥーの女』[2011年]でアカデミー賞撮影賞にノミネート)や、プロダクションデザイナーのフィリップ・メシーナ(『ハンガー・ゲーム』シリーズ[2012~2015年])や作曲家のフィリップ・グラス(『めぐりあう時間たち』[2002年]、『あるスキャンダルの覚え書き』[2006年]ほか)などを連れてきてくれました。

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それと、私がアンドリュー・スタントン(監督・脚本作品『ファインディング・ニモ』[2003年]、『ウォーリー』[2008年]でアカデミー長編アニメ映画賞を受賞)に声を掛けたように、映像作家同士で話をつけていきました。最終的に、タイ・ウェスト(『サプライズ』[2011年]ほか)や、ジョディ・フォスター(『マネーモンスター』[2016年]ほか)も監督として参加してくれましたし、シモンの絵画やナサニエルの脚本のおかげで素晴らしい才能を集めることができました。映像作家同士の繋がりでここまで来れたことがとても嬉しいですし、素晴らしい経験になりましたね。

「構成のヒントになったのはシャーウッド・アンダーソンの『ワインズバーグ、オハイオ』」

―シーズン1は全8話構成ですが、連続もののドラマであり1話完結にもなるような作りにした理由を教えてください。

このドラマは非常に珍しい“ハイブリッド”だと思います。実際には完全に1話完結というわけではありませんし、エピソード間につながりがあるので、連続性もあります。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

ナサニエルは、米ニューメキシコ州にある科学技術研究機関<ロスアラモス国立研究所>や、シモンがインスピレーションを受けたスイス・ジュネーブ近郊にある<CERN(欧州原子核研究機構)>などをモデルに、科学的な研究所や企業が影響を及ぼす“町の話”を作りたいと話していたんです。本作では、町中に廃棄されたロボットやテクノロジーの欠片が散らばっていて、過去にこの町で極秘任務が行われていたことが示唆されます。いまもなお、宇宙の神秘を明かすための研究は密かに進められている、そんな町で起こるいくつもの物語を描いています。

ナサニエルは、シャーウッド・アンダーソンの著書「ワインズバーグ、オハイオ」(新潮文庫ほか刊)に近い構成で作りたいと言っていました。この本は、オハイオ州のワインズバーグという架空の町を舞台にした短編小説です。ジョージ・ウィラードという主人公がいくつかの物語に登場しますが、すべての物語に登場するわけではありません。そして、それぞれのエピソードに同じキャラクターが中心人物として登場することはありません。唯一の共通点は、“ワインズバーグという町で起きている話”ということ。同じ空想科学を扱ったテレビドラマ『トワイライト・ゾーン』(1959年~)のような1話完結型ではありますが、「ワインズバーグ、オハイオ」のように、全ての物語を観たからこそわかることや体験できることがあります。これはナサニエルの素晴らしい発想によって生まれた形です。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

―『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』の世界に飛び込めるとしたら、どんな技術を試してみたいと思いますか?

第2話「入れ替わり」に登場する“球体”ですね。球体を覗き込んで、(登場人物の)ジェイコブがしたように他人と体を入れ替えることには興味がありますね。ただ、他人の体で生活をしてみても、なかなか良い結果にはなりませんが(笑)。ちょっと結末を考えると怖いですね。

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』

―最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。

『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)以来、何度か訪れているので、日本をとても身近に感じています。とても特別な場所だと思っていますし、私たちが時間をかけて作ったこのドラマが日本でも配信されることを嬉しく思います。ぜひ、楽しんで観てください!

『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』シーズン1はAmazon Prime Videoで独占配信中

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『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』シーズン1

「ループ」とは、サイエンス・フィクションのような事象を現実に叶え、そして宇宙の謎を解き明かすために建造された地下研究施設である。その「ループ」の真上に位置する町に住む人々の、奇怪な体験を描く物語。

制作年: 2020
監督:
脚本:
出演: