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本物のT-34戦車で超リアルに再現! 史上もっとも苛烈な戦いを描く 戦争大河ドラマ『タンク・ソルジャーズ』

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ライター:#大久保義信
本物のT-34戦車で超リアルに再現! 史上もっとも苛烈な戦いを描く 戦争大河ドラマ『タンク・ソルジャーズ』
『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd "Bubblegum Production", 2018

独ソ戦、それは歴史上もっとも巨大で苛烈な戦争

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』は、“もっとも巨大でもっとも苛烈な戦争”と言われている独ソ戦(ソ連側呼称「大祖国戦争」)が舞台となっています。これは1941年6月22日、ナチス・ドイツのソビエト連邦侵攻によって勃発した戦争ですが、なぜ“もっとも苛烈”なのでしょうか? それは、この戦争が「絶滅戦争」だったからです。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

国家間戦争というものは、相手国に自国の要求を呑ませるのが目的であって、だからこそ-たとえ一方的であっても-条件交渉や講和が成立します。ところがヒトラーにとって対ソ戦とは、ドイツ人の東方生存圏を建設するための戦争であり、そのためソ連の人々を駆逐、あるいは奴隷化することを決めていました。

例えば、『タンク・ソルジャーズ』第2話に不発弾を処理する場面があります。信管を分解すると内部に布切れが詰め込まれていた。だから爆弾は爆発しなかったんですね。で、その布切れを広げると「報復してくれ」と血文字でメッセージが書かれていて、その裏には番号が書かれている。つまり強制労働収容所で信管を作らされているソ連の人たちが、服の番号札を剥ぎ取って詰め込んでいたのです。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

実際、英米軍が鹵獲(ろかく)したドイツ戦車を調べると、燃料タンクやオイルタンクに砂やオガクズを入れるサボタージュ行為が散見されたそうですが、とにかくナチス・ドイツでは強制労働が前提の戦時体制だったわけで、そこを上手くエピソードに取り入れているのです。まぁ時期的にはちょっと早過ぎという気もしますが……。

ちなみにドイツの航空爆弾の信管は電気信管で、それを弾体中央部に装着するという特徴があります。なので、爆発物処理隊が爆弾の横腹から信管を取り外すのは、信管の形状も含めて、正しい描写なのです。

防勢から攻勢へ

さて、戦略的奇襲の利を生かして大量のソ連軍を撃破、ベラルーシやウクライナを占領したドイツ軍は1941年9月30日、いよいよ首都モスクワ攻略作戦<タイフーン作戦>を開始します。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

ですが実はドイツ軍はすでに、補給システムの崩壊と戦力損耗により、息もたえだえという有様でした。案の定(?)、モスクワ前面に迫ったところで力尽き、同年12月5日にタイフーン作戦は放棄されます。そこでソ連軍の反撃が始まるのですが、ドイツ軍は退却こそ強いられたものの踏み止まることに成功、1942年4月に戦線は一時的な膠着状態に陥ります。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』は1942年初頭の士官学校から開幕、1943年7月の「クルスクの戦い」でクライマックスとなります。このクルスクの戦いで戦争の潮目が完全に変わり、以後はソ連軍が主導権を握るようになります。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

つまり、この物語は、ソ連とソ連軍にとって一番苦しくて体制存亡の危機にあった時期から、ドイツ軍相手に互角に戦えるようになるまでのお話なのです。

ほぼ現存していないT-34-76戦車を堪能すべし!

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

最後はやっぱり戦車について。主人公が乗り込む戦車には、本物のT-34-76が使われています。この「76」は76㎜砲搭載、という意味です。訓練シーンでは、その“六角形砲塔”と呼ばれる型が登場します。これは時期的に合わない(史実では1942年夏以降から配備)のですが、気にせず本物のT-34-76を楽しみましょう。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

なぜかと言うと、大戦中に約3万5000両も生産されたT-34-76(ちなみに日本陸軍の主力戦車だった97式シリーズは総計2500両〈泣〉)ですが、そのほとんどが独ソ戦で“使い潰された”うえに、戦後の1950年代半ばには退役となったために、ほとんど残っていないんですね。なので、戦後映画のほとんどでは、火力向上型のT-34-85(「85」は85㎜砲搭載の意味)が“T-34-76役”として出演してるんです。T-34-85は1970年代半ばまでは予備兵器扱いで保管されていたので、まだまだ数がそろえられたわけです。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

ですが、ソ連軍にとって一番苦しい時期に戦車戦力の中核だったのは、間違いなくT-34-76であり、それが登場するんだったら型式のズレなんて気にしちゃいけません。スタッフは動くT-34-76を掻き集めたらしく、初期型砲塔、六角形砲塔、キューポラ付き六角形砲塔、の3種類がお目にかかれるんだから、眼福とはまさにこれ。まぁ、T-34-85も出てきちゃうんですけどね。ちなみにT-34-85の実戦配備は1944年1月からで、1945年12月までだけでも約2万5000両が生産されています。

『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』© Ltd “Bubblegum Production”, 2018

次回「後編」では、クライマックスのクルスク戦やソ連軍女性将兵、そしてあの有名戦車について語ろうと思います。

文:大久保義信

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『タンク・ソルジャーズ ~史上最大の戦車戦に挑んだ兵士たち~』

第二次大戦下のロシアを舞台に、史上最大の戦車戦“クルスクの戦い”に翻弄される若者たちを描く、全8話の戦争ドラマ。

制作年: 2016
出演: