米芸人がセクハラ騒動を自らイジり倒して謝罪! スパイク・ジョーンズ監督Netflixスタンダップ・コメディ『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』

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ライター:久保憲司
米芸人がセクハラ騒動を自らイジり倒して謝罪! スパイク・ジョーンズ監督Netflixスタンダップ・コメディ『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』
Netflixオリジナル作品「アジズ・アンサリの"今"をブッタ斬り!」独占配信中

アメリカに根強く残る人種的偏見 ― インド系移民二世が大舞台に立つ

毎日、ネットフリックスのスタンダップ・コメディを見ているライター&カメラマンの久保憲司と申します。

やっぱり人生、勉強ですよね。喋り一つでマディソン・スクエア・ガーデンのステージに立つなんて、すごくないですか? 2万人収容のスポーツアリーナの会場ですよ。アメリカには、アリーナ・クラスの会場を埋めるスタンダップ・コメディアンがゴロゴロいます。

その中の1人が、インド系アメリカ人のアジズ・アンサリ。中西部に住む普通のアメリカ人のおバカさを描いた『パークス・アンド・レクリエーション』(2009年~)でクリス・プラットと並んでブレイクし、2010年のMTVムービーアワードの司会に抜擢されました。

彼のネタに「アメリカがどれだけ人種差別的かと言うと、インド人で初めてMTVに出たのは俺だよ。本当はノー・ダウトのベーシスト(トニー・カナル)が一番最初だけど、彼はメインじゃないしね」というのがあります。マイノリティの人は、そうやって自分と同じ人種の人が活躍しているのを気にしているんですね。白人以外の役に白人が配役される“ホワイト・ウォッシュ”は絶対にやってはいけないことなんだなと改めて感じました。

インド人俳優として業界に生きる自分を面白おかしく描いた、Netflixオリジナルシリーズ『マスター・オブ・ゼロ』(2015年~)で原作者としても大成功したアジズは、次なる『マスター・オブ・ゼロ』を書くために東京に何ヶ月も滞在していました。次作は東京に住む外国人の物語になるのではと期待していますが、『マスター・オブ・ゼロ』の脚本を書いている時はイタリアに何ヶ月も滞在していたようで、見知らぬ土地でネタを考えるのが彼のスタイルなのかもしれません。

やっちまった……自身のセクハラが記事になって世界中に拡散

今回東京にいたのは、彼が性的スキャンダルを起こしてアメリカに居づらかったというのもあるかもしれません。でもアジズのセックス・ハラスメント、ちょっとかわいそうな気もします。<アジス・アンサリとデートしたけど、最悪の夜だった>という記事が出てしまったのです。

どういう顛末かというと、アジズは2017年の秋、エミー賞のアフターパーティーで23歳のカメラマンの女性と知り合い、連絡先を交換して、1週間後にデートすることになった。アジズの家でワインを軽く飲んだ後、2人はオイスター・バーに食事をしに行ったが、彼はボトルにまだワインが残っているのに、すぐに「家に帰ろう」と言い出した。そして部屋に入った途端、女性にキスをしはじめ、服を脱がしながら自分も脱いで「コンドームを取ってくる」と言う。女性は“セックスに乗り気ではない”というアピールを何度もしたが、アジズは理解していないかのように「セックスをしよう」と言うので、「それは次回」とトイレヘ逃げた。女性はトイレから出て「強要されてしたくないの。嫌いになってしまうから」と告げると、アジズは「もちろんだ。2人ともが楽しくないと」と服を着て、テレビを一緒に見ることにして、その日は終わった。……この顛末が記事になってしまったのです。

自身の過ちを認め、謝罪し、クオリティをキープしつつ笑いも取る

コメディアンという職業は本当の自分をさらけ出して、どれだけ笑ってもらうかが命だと思います。

Netflixオリジナル作品「アジズ・アンサリの”今”をブッタ斬り!」独占配信中

アジスは、ゴチャゴチャと言い訳をしませんでした。この事実をしっかりと受け止め、謝罪したのです。その謝罪が、Netflix『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』になりました。英題は「Aziz Ansari: Right Now(アジズ・アンサリの今)」ですが、この邦題はブッタ斬るつもりの自分がブッタ斬られた、ということでしょう。

Netflixオリジナル作品「アジズ・アンサリの”今”をブッタ斬り!」独占配信中

監督は、あのスパイク・ジョーンズ。これまでのNetflix作品『アジズ・アンサリ:人生は生き埋め地獄』『アジズ・アンサリ:マディソン・スクエア・ガーデン』は、楽屋で永ちゃんみたいに高価なスーツをビシッと着るところから始まっていましたが、今回はボロボロのメタリカのTシャツを着て、街を彷徨い歩いているところから始まります。どこに行くんだろう? と思っていたら、そのままステージ袖の搬入ドアから入っていくというスタイル。カメラは完全に横についています。まるで映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)のよう。

本作は、完全に彼の“謝罪のコメディ”で、よくできています。しんみり始まりながらも、いつものセックスネタの質は落ちていません。お客さんは今回の復活ライブでそんなにキツいネタをやると思っていなかったのか、前列には10歳の息子さんを連れたお父さんもいましたが、アジズは容赦なし。これコンプライアンス大丈夫かな? と思いましたが、NetflixがOKを出しているので問題ないんでしょう。お父さんも一緒になって笑っていました。

深みが出て今後が楽しみなアジズ

Netflix制作によるスタンダップ・コメディのショーは、だいたいが1時間ほど。今までのアジズは、恋人はいても結婚や子育てはしない気楽なシングルライフのおかしさ・悲しさををネタにしてきました。いつも最後の締めが弱い印象でしたが、今回は「家族、恋人、友達が一番大事。支えられた」というネタを持ってきて、その弱かった部分を克服。ベタといえばベタですが、深みが出ていました。これからアジズ・アンサリがどんなコメディアンになるのか、楽しみです。

今の日本でアジズのようなスタンダップ・コメディをやれるのは、ピエール瀧しかいないでしょう。やらないかな? やってくれないよな。

『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』はNetflixにて独占配信中

『アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!』

スパイク・ジョーンズが監督を務めたアジズ・アンサリのコメディスペシャル。人々の意識、家族、社会の風潮などをネタに、独自の視点で深く突っ込んで笑いを取る。

制作年: 2019
監督:
キャスト:
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  • ドラマ
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