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中川大志と清原果耶がアニメ『ジョゼと虎と魚たち』で再認識した「演じること」――声だけで“生身の人間らしさ”を込める難しさ

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ライター:#SYO
中川大志と清原果耶がアニメ『ジョゼと虎と魚たち』で再認識した「演じること」――声だけで“生身の人間らしさ”を込める難しさ
『ジョゼと虎と魚たち』中川大志、清原果耶

実写映画版も人気を博す田辺聖子氏の小説をアニメーション映画化した『ジョゼと虎と魚たち』が2020年12月25日(金)より公開される。「僕のヒーローアカデミア」(2016年ほか)の人気スタジオ、ボンズがアニメーション制作を手掛け、中川大志と清原果耶が声優を務める本作。この異色のコラボレーションに、驚いた方も多いのではないか。

監督は、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)の助監督や「ノラガミ」シリーズ(2013年ほか)の監督、「文豪ストレイドッグス」(2016年)のOP映像を手掛けたタムラコータロー。脚本は『ストロボ・エッジ』(2015年)の桑村さや香、キャラクター原案は「荒ぶる季節の乙女どもよ。」(2019年)の絵本奈央が担当。フレッシュなメンバーをそろえ、“令和の青春ラブストーリー”へとリ・イマジネーションした。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

車いすの女性・ジョゼ(清原果耶)の相手をするバイトを始めた大学生・恒夫(中川大志)。最初は言い争ってばかりのふたりだったが、次第に互いを理解し、心を通わせていく――。

人と人が“つながる”尊さを描いた本作に、中川と清原はどんな思いで挑んだのか。「声の演技」の難しさに全力で取り組んだふたりに、舞台裏を聞いた。演じ手としての自身を形作る要素についてもインタビュー。各方面で活躍中の若手人気俳優の“いま”を、堪能いただきたい。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

“生っぽさ”をキープしてアニメに挑む難しさ

―本作でのおふたりの演技を拝見して、ジョゼと恒夫の感情が動くさまだけでなく、身体的な“動作”までも声に込められていると感じました。タムラ監督も、リアリティを重視してオファーしたと語っていましたが、“生身の人間らしさ”をアニメーションで表現する際における「演技のバランス」は、どのようにして見つけていったのでしょう?

中川:まさにそこが、すごく難しいところでした。

最初にタムラ監督や清原さんとリハーサルをしたときに、「どういう具合の芝居にするか」を話し合ったんです。僕たちは声優さんではないから、逆に僕たちにしかできない表現って何だろう? と考えて。それはやはり“生っぽさ”であって、そのために僕たちに声をかけてくださったと捉えました。

清原:そうですね。普段、私たちが生身で芝居する“感覚”を欲しいと思ってくださったから、今回一緒にお仕事させていただけたんだと思います。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

中川:ただ、その“生っぽさ”って、なかなか狙っても出せない部分でもある(苦笑)。アニメーションは、実写に比べると物理的な情報量が少ないですよね。そうすると、声の演技も綺麗な方向にしたほうがいいのかな? という思考に陥りがちになると思います。タムラ監督は「記号的」とよくおっしゃっていましたが、かといってそうしすぎると生っぽさがなくなってしまう。とはいえ実写のようなナチュラルさのある演技をしたら、アニメーションとはやっぱりハマらないんです。作りすぎたら生っぽさがなくなり、抜きすぎるとかみ合わない……。その絶妙な塩梅を探っていくのが、本当に大変でした。

清原:もちろん台本をしっかり読み込んだうえで「ここはこうしよう」というプランを考えていったのですが、やっぱり“声だけ”というのがとても大変でした。「声色を下げるから悲しく聞こえる」とか「いっぱい笑えば楽しそうに聞こえる」という問題でもなかったですし、ちゃんと画に寄り添いながら声を当てていくっていうことが、ものすごく難しかったです。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

中川:あと、タムラ監督がおっしゃっていたのは、たとえばキャラクターの等身によっても演技が変わってくるということ。今回は実写に近い等身で描かれていますが、アニメーションならではの考え方で、僕も勉強になりました。

清原:そうですね、学べることがすごく多くて、それは本当に良かったと思っている部分です。それに、中川さんはすごく柔軟な考えと技術をお持ちで、「すごい、見習わなくちゃ!」と思いながら、斜め後ろからアフレコを見つめていました。

『ジョゼと虎と魚たち』清原果耶

―実際のアフレコはいかがでしたか? 事前に打ち合わせたからスムーズにいったのか、現場でも苦労はあったのか……。

中川:いや、特に序盤のほう、出会いのシーンからの一連の流れはかなりやりましたね。

清原:そうですね。何回も録り直しました。

中川:恒夫を演じるうえで、僕自身は最初、ジョゼという女の子に振り回される感じを想像していたんです。でも、タムラ監督から「もうちょっと天然なところを大事にしてほしい。ジョゼからの“口撃”に気付かないマイペースさも重視してほしい」とディレクションいただいて、「なるほど、その要素がジョゼとの居心地の良さというか、ふたりの関係が出来上がっていくことにつながるんだな」と感じました。ただ、そういったキャラクターの話だけではなく、発声の仕方や、先ほどお話した“生っぽさ”にもつながる、“揺れる”部分をどれだけ残すか……余白をどう作っていくかは、時間をかけて調整していきました。

『ジョゼと虎と魚たち』中川大志

役を引きずる? 引きずらない?

―役者さんがアニメーションのアフレコに臨む際、「演技に合わせて動けないのが大変」「マイクとの距離の測り方が難しい」というお話を聞きますが、清原さんはいかがでしたか?

清原:特別、動いちゃうことはなかったですね。息遣いが荒くなるときに、肩が動いちゃうことはありました。逆に、普段全身で表現していることを声ひとつで表さないといけなかったぶん、「とにかく声で、すべてを表現するんだ!」と集中できた気がします。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

―なるほど! 制限があるからこそ、一極集中という発想ですね。今回演じたジョゼは涙を流したり、苦しい思いを吐露したりと、感情表現が大変だったかと思いますが、清原さんご自身のこれまでの作品を見返しても、難役を次々にこなしている印象です。役を引きずってしまうことはありますか?

清原:そうですね……(考え込む)。やっぱり、役によりますね。引きずる役もあれば、そうじゃない場合もあります。今回に関して言うと、画面に映っているのが自分ではなかったので、いかにジョゼの表情に合わせるか、口の動きにセリフをあてられるかを考えながらやっていました。でも、これまでに役を引きずってしまった経験はあります。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

―役を引きずってしまう場合、どうやって切り替えられるのでしょう?

清原:時間、ですね。時が経てば切り替えられる時が多いです。あとは、誰かに話すことで、リフレッシュできることもあります。

―中川さんが、役者としていま大切にしていることはありますか?

中川:僕は、「演技はその人からしか出てこない」と考えています。毎回別人を“演じて”はいるのですが、演技は演じ手その人自身の経験や、感情から生まれてくるもの。だからこそ、自分自身の経験を大切にしなければならないと思っています。普段からものすごく意識して生活しているわけではないですが、仕事から離れたときの経験が、演技に生きてくる部分は大きいんですよね。役作りをするときに、「自分だったらどうするだろう?」と、まず1回“自分事化”して、考えています。

『ジョゼと虎と魚たち』©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

―となると、それこそ「役を引きずってしまう」こともありますか……?

中川:どうだろう? 僕はあまりないかもしれません。多少引きずっちゃう瞬間もないわけじゃないけど……役によるのかな。「やった、解放されたー!」ってときもあります(笑)。

清原:やっぱり「役による」ですよね(笑)。

中川大志の好きなドラマ、清原果耶を支える楽曲

―『ジョゼと虎と魚たち』では、「夢」や「好きなこと」が恒夫とジョゼの支えになりますが、中川さんと清原さんご自身が、救われたり支えられたりした“好きなもの”はありますか? 映画でもドラマでも、小説や漫画、音楽でも……。

清原:私は、amazarashiさんの「僕が死のうと思ったのは」です(※amazarashiのフロントマン・秋田ひろむが中島美嘉に楽曲提供し、のちにセルフカバーした楽曲)。この曲との出合いは役作りのときで、「落ち込んでいるときに聴く曲」といった感じで調べたらヒットしました。すごくいい曲で、迷いそうになったときとか、無になったときに聴くと、私の地面になってくれるんです。

『ジョゼと虎と魚たち』清原果耶

―中川さんは、いかがですか?

中川:そうですね、何だろう……(考え込む)。僕は小さいときからテレビっ子で、ドラマが大好きだったんです。幼稚園児や小学生のころは夜の9時、10時に起きていられないので、録画して繰り返し観ていました。特に、木村拓哉さんの「プライド」(2004年)や「エンジン」(2005年)などは、憧れて観ていましたね。自分も連ドラをやらせていただくようになって、改めて尊敬が増しました。僕は、ドラマってムーブメントを作り出すものであってほしいと思っていて、出演されるたびにそれを実現されてきた木村拓哉さんは、やっぱりすごいなと感じています。

『ジョゼと虎と魚たち』中川大志

―『ジョゼと虎と魚たち』では、恒夫とジョゼがお互いに交わす“言葉”も、とても大事な装置として描かれます。おふたりがこれまでに誰かからもらった言葉で、大切にしているものはありますか?

中川:座右の銘ではないですが、大切にしている言葉はトーマス・エジソンの「うまくいかないことがわかったんだから、それは失敗ではなく成功だ」という言葉です。演技の先生に教えてもらって、それ以来ずっと大事にしています。

清原:私は、家族からもらった「楽しいんだったら頑張って」という言葉です。家族とよく連絡をとっているのですが、実家の大阪自体にはあまり帰れていなくて……。だから「大丈夫?」と心配されることもありつつ、でも最終的には「楽しいのが一番だから頑張れるところまでやりな」と励ましてくれるんです。そう言ってもらえることで「そうだ。楽しいから、お仕事を頑張ろう」と思えていますね。

『ジョゼと虎と魚たち』中川大志、清原果耶

取材・文:SYO
撮影:町田千秋

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』は2020年12月25日(金)より公開

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『ジョゼと虎と魚たち』

趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを、大学生の恒夫に助けられる。

海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。

それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。

そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。

制作年: 2020
監督:
声の出演: