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『ボーン・アイデンティティー』作曲家が音楽で人間とドラゴンの絆を彩る『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

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ライター:#森本康治
『ボーン・アイデンティティー』作曲家が音楽で人間とドラゴンの絆を彩る『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』 © 2019 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

英国の作家クレシッダ・コーウェルの児童文学を美麗なCGで映画化し、世界中で高い評価を得たアニメーション作品『ヒックとドラゴン』(2010年)。ファン待望の新作にしてシリーズ最終章となる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』が、2019年12月20日(金)から劇場公開となる。前作『ヒックとドラゴン2』(2014年)は、有志の尽力にもかかわらず劇場公開が見送られる事態となったが(のちに無料上映が何度か企画された)、本作はめでたく全国ロードショーが実現した。

『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』 © 2019 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

シリーズの人気を支えるドラマティックで躍動感あふれる音楽

『ヒックとドラゴン』シリーズが、多くの人々に愛されている理由は何なのか。敵同士だったはずの人間(ヒック)とドラゴン(トゥース)の種族を超えた友情、バイキングのリーダー/ドラゴンの王への成長ドラマ、冒険心を刺激する物語の舞台設定、「空を飛ぶ爽快感」を徹底的に追究したCG演出、犬や猫を思わせるトゥースの愛くるしい仕草……。作品の持つ魅力は枚挙にいとまがないが、ジョン・パウエルによるドラマティックで躍動感あふれる音楽も、シリーズの人気を支える要素のひとつである。

『ボーン・アイデンティティー』の音楽でブレイク! ヒット作の音楽を多数手掛ける人気作曲家、ジョン・パウエル

英国のテレビ・CM音楽業界で活動していたパウエルは、1990年代にロサンゼルスへ移り、ハンス・ジマーの音楽プロダクション「メディア・ベンチャーズ(現リモート・コントロール・プロダクションズ)」に加入。ハリー・グレッグソン=ウィリアムズとともに『アンツ』(1998年)や『シュレック』(2001年)などドリームワークス・アニメーション作品の音楽を担当し、『ボーン・アイデンティティー』(2002年)、『ミニミニ大作戦』(2003年)、『ボーン・スプレマシー』(2004年)での、パーカッションと打ち込みのリズムを駆使した疾走感のある音楽で人気を集めた。

その後パウエルは「リモート・コントロール・プロダクションズ」から独立し、2011年以降は『ブルー 初めての空へ』(2011年)や『ロラックスおじさんの秘密の種』(2012年)など、アニメーション映画中心の作品選びを行うようになっていく。音楽担当作品の傾向が変わったことでリスナー離れも懸念されたが、『ヒックとドラゴン』シリーズの大ヒットによって、旧来のファンが離れるどころか、新たなファン層をも獲得することになったのだった。

『ロラックスおじさんの秘密の種』オリジナル・サウンドトラック・スコア
音楽:ジョン・パウエル
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3254

回を重ねるごとに壮大になっていく、ドラマティックなサウンドと心に残るメロディ

パウエルは第1作の音楽でアカデミー賞作曲賞にノミネートされており、この時点ですでに完成度の高いスコアを作り上げていた。ヒックとトゥースの友情を雄大かつ爽やかにうたったメインテーマ、バーク島のテーマ、アスティのテーマなどの印象的なメロディを、ケルト音楽的なアプローチを取り入れたオーケストラ・サウンドのなかで自在に変奏して、バイキングとドラゴンの冒険活劇を盛り上げた。

『ヒックとドラゴン』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジョン・パウエル
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-2820

なかでもヒックとトゥースが少しずつ心を開いていく様子を音楽で綴った「Forbidden Friendship」は、ファンの間で人気の高い楽曲として知られている。

第1作ではヒックとトゥースの心の交流、第2作ではヒックの父ストイックと母ヴァルカの再会が、パウエルの音楽とともに細やかに描かれていたが、本作ではトゥースと白いドラゴン、ライト・フューリーのデートの様子が描かれている。“ドラゴン同士の(言葉を用いない)コミュニケーション描写”ということで、パウエルの音楽はさらに緻密になり、トゥースのライト・フューリーへの猛アピールの動きと完璧にシンクロしたスコアで、デートの進展をコミカルかつ愛らしく彩っている。

『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』 © 2019 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

また、本作では前2作の主要なテーマ曲に加え、ナイト・フューリーの愛のテーマ、グリメルのテーマ、幻の聖地のテーマ、運命のテーマなどが新たに書き起こされており、10種類前後のテーマ曲がスコアの中で用いられている。従来のテーマ曲はより音楽的に熟成され、スコアが散漫になることなく、新しいテーマ曲とともにドラマティックな流れを作っている。パウエルがシリーズすべての音楽を手掛けてきたからこそ可能となった楽曲構成と言えるだろう。

『ヒックとドラゴン3』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジョン・パウエル
輸入・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-7391

音楽の統一感という点では、アイスランドのポストロックバンド、シガー・ロスのヨンシーが、今回も主題歌を担当しているのも嬉しいところである。シリーズ集大成となるパウエル渾身のファンタジー・アドベンチャー音楽を、ぜひサウンドトラックアルバムでも楽しんでいただきたいと思う。

文:森本康治

『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は2019年12月20日(金)より全国ロードショー

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『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

かつては敵同士だった人間とドラゴンは、弱虫なバイキングの少年から若きリーダーへと成長したヒックと、伝説のドラゴンの王となったトゥースの活躍で共存する道を選び、バーク島で仲良く暮らしていた。時が経ち、亡き父の遺志を継いだヒックとトゥースは、ドラゴン・ハンターからドラゴンを救出して島で保護していたが、ドラゴンの数は増える一方。頭を悩ますヒックは、かつて父から聞いた地図に載らない“幻の聖地”を探す旅に出る。

制作年: 2019
監督:
声の出演: